恐怖の親子丼
卵は嫌いだが、親子丼は好きな子供でした。でも、どうしてもどうしても食べられない「親子丼」がありました。
伯母は築150年というが、実のところ築年数はよくわからない古民家をもうすぐ引き受ける。私の母の実家で明治時代に建てられたらしい。私がこの家で体験した事を、もう一度再現できたらいいなを覚書している。今回もそのエピソードの一つ。
この母屋の脇に農作業用の小屋があり、そこにニワトリのゲージも備えられていて、白い毛に赤いトサカのThe!ニワトリが5−6羽いた。
近所に肉屋も魚屋もなかったと記憶しているので、このゲージに飼われているニワトリが日々生む卵がフレッシュなタンパク源であったと思う。まあ、私は生卵が特に嫌いでしたから、卵かけゴハンなど論外の食べ物でした。今にしてみればもったいない話。
夏休み、冬休み、春休みに遊びに行くと、お小遣いをこっそりくれるおばあちゃんが孫に最大限の「食のおもてなし」をしてくれます。
おばあちゃんは、この子ならうまそう!という一羽のニワトリにターゲットをさだめ、ゲージから連れてきて、母屋の裏で「生物」から「食肉」へと変える作業をするのです。
光栄にも選ばれしニワトリは、最初におばあちゃんの手から振り下ろされたナタで首を落とされるのでした。首を落とされたニワトリはしばらく歩くんですよね。「ここはどこ?わたしは誰?」をリアルに再現しています。
ホラーです。リカちゃん人形の首を引っこ抜いて遊んでいる子だったのに、アリの巣に水を流して遊んでいる子だったのに、おままごとでザリガニをさばいていた子なのに、引きました。ドン引きです。
さっきまで生きていた光栄にも選ばれしニワトリは、自分の産んだ卵にまみれて「親子丼」になって夕食にのぼります。
そんな光景を見たあとの食卓だったので、気持ちは非常に微妙な感じではあったのですが、そこはいい子を装って「いただきます」をちゃんとしました。一口食べた肉の食感は、日々卵を生み続けて疲労が溜まっていたのか、はたまた鍛えられていたのか、はたまたさばいて時間が経っていなかったからは不明だが、硬かった。。。味は悪くなかったと、思う。
そして、見てしまいました。きれいに処理されていない羽が肉についているのを。
さっきまで生きていた。。。ニワトリ。。。さっきまで生きていた。。。ニワトリ。。。さっきまで生きていた。。。ニワトリ。。。頭の中で反芻します。
「やだー!食べない!」
一気にいい子をやめました。
命をいただくということをちゃんとカラダで知ったのはこの時です。それまでは頭でなんとなく理解していたにすぎなかったにすぎません。
この家でもう一度、The!ニワトリを飼うかどうかはまだわかりませんし、飼ったとしても、私はおばあちゃんのようにさばく事は到底できないと思います。でも、食べる事とはどういう事なのかを、便利な場所に住んでいる時とは違う形で、丁寧に、ある意味めんどくさくやってみたいなぁと思っている次第。
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