田舎道

私の住む所はとってもとっても田舎で家から1番近いコンビニへ行くには車で10分ほど走らせないといけないそれぐらい山と田畑と川に囲まれた場所である。

お店といえば個人経営の商店が各集落に1軒ずつあるぐらいで賞味期限切れの商品も当たり前のように置かれてある(勿論それらが売られることはないしおそらく長年売れていない忘れられた存在の商品)

小さい頃は友達と近所を鬼ごっこだのかくれんぼだのケイドロだの探検だの、近くの神社兼公園では缶蹴りや遊具で遊ぶなど日が暮れるまでよく遊んでいたものだ。

学校は幼稚園と小学校しかなく、全学年顔見知りで年齢関係なくみんな仲良しだった。

帰り道では脇道に生えてあるイタンポを採って食べながら帰ったり、余談ではあるがこの「イタンポ」とは方言で、本来はイタドリと呼ばれるそうだ。20歳にして最近知り驚いた…
話を戻そう
川で少し遊んで帰ったり、大人にはナイショの秘密基地に寄ってみたり、トカゲを捕まえてみんなに見せびらかそうとすると尻尾を落とされ手元にはその尻尾しか残らなかったり、

おそらく都会(まち)に住む田舎暮らしに憧れる大人が子供の頃に体験したかったのであろう事は一通りしてきたと思う。

それでも田舎はやっぱり不便で中学生や高校生の頃は都会に憧れたものだ。

TVで流れる流行りのスイーツ、大勢の人で賑わうレジャースポット、最先端のファッション、原宿には可愛いファッションを身にまとった女の子たち、当時「下妻物語」に影響されまくっていた私はロリータファッションやゴシックファッション、パンクファッションに憧れていた。
羨ましく思わないわけがなかった。

当然だが田舎にそんなハイカラなものは置いていない。
今でこそお店が増えてきてそれなりのファッションを身にまとう事ができるが当時はしまむらかユニクロか少し大きめのスーパーのジュニアファッションコーナーしか服を買う場所が無かった。無論、私がお店を知らなかっただけなのかもしれないが…

通販もまだそこまで浸透しておらず雑誌で眺めては自分が着ている所を妄想するそんな日々を送っていた。

現実の私は毎日の部活に打ち込むスポーツ少女だった。これまた帰り道に友達と寄り道をして食べたアイスの味は今でも忘れられない。勿論そのアイスは私の住む集落に1軒しかない個人経営の商店で買ったアイスである。
ガリガリ君ソーダ味かアイスクリンのどちらにするかで悩むようなそんなしょうもない奴だった。でも、案外悪くないなと今なら思う。
そんな中学時代だった。

高校は家から少し離れた所にある県立の高校に通っていた。一応家から1番近い高校ではあったが自転車や歩きでは厳しい距離だったため原付バイクで登校していた。ちなみにこの話をすると少し驚かれる。通っていた高校付近では割と普通の登校スタイルではあった。

競技は変えたが高校でも当たり前のように運動部に入部した。高校時代の部活での経験は一生の宝物だと思う。この話はまたいつかどこかで…

幼なじみとは幼稚園から一緒で同級生に女の子は私とその子しかいなかった。まさか高校まで、しかも部活も同じになるとは思っていなかった。

そんな幼なじみとは土曜日の午前中のみの部活が終われば寄り道をしてラーメン、セルフうどん、すき家、ガスト、マック、のどこかに昼食を食べに行き、お菓子やジュースを持ち寄り各々の原付バイクで川へ遊びに行くといった流れが夏のルーティンだった。

地元民しか知らない隠れスポットは自然のカーテンかのように葉が生い茂り木漏れ日がなんだか心地よかった。浮き輪でプカプカ浮きながらお菓子を食べ、好きな音楽を掛け、くだらない話をひとしきり終えたらウトウトしだしてお昼寝をする。なんとも贅沢なんだ。今となっては戻りたくても戻れない時間が確かにそこには流れていた。

昔よく遊んでいた神社兼公園に咲く桜も

休日になると毎週のように泳ぎに行っていた川も

日常の景色に溶け込む紅葉も

辺りが銀世界になり雪の絨毯が敷かれた田畑や雪化粧をした山々も

どれも私の成長をひっそりとまた暖かく見守ってくれていた。

部活の試合に負け、涙を流しながら歩いたアスファルトの田舎道も私はきっと忘れない。


私は今、就活の真っ最中である。
就職とともに生まれ育ってきたこの田舎を離れるつもりだ。自分の好きな事をするにはやはり何かと田舎は不便なのである。

田舎に生まれて最悪だなぁなんて思ったこともある、東京に憧れたこともある、でも今はそんな風に思わない。胸を張って田舎って結構いいもんだよ。と言えるだろう。

都会は便利で遊ぶ所も沢山あってなーんでも揃っている、反対に田舎にはなんにもない
けれど来てみないと分からない良さがきっと沢山ある。色んな魅力を沢山の人に知ってもらえると嬉しいなと思うばかりだ。

理不尽な上司に耐えられなくなって涙を流しながら歩く日もきっとやってくるだろう
その度にいつかの田舎道をきっと思い出す。


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