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過ぎる少女の面影は彼方に

前回のあらすじ
服を買う理由を作る為にデートの約束をしたものの、肝心のデートで行きたいところが思いつかない。
致死量のトキメキをちょうだい|星伊香 (note.com)

そんな訳でデートの約束を取り付けたものの、行きたい場所もしたい事も思いつかず、気付けば2カ月弱が過ぎていました。

それでもね、一応予定は立てたんで服を買いに行こうと思った訳です。この時点ではどこに行くかも決まってないけど。
最初のnote(乙女のクローゼット|星伊香 (note.com))で
「書を捨てよルミネに出よう」と標語を掲げましたしね。

行ってきましたよ。
新宿。

仕事帰りにちょちょっとね。
「新宿まで行けば服屋も多いしなんとかなるだろう」という事で、週末の人でごった返す新宿南口に降り立ちましたよ。

南口は東口とは違い、小綺麗な人が多い印象。
あと新宿南口はルミネだけじゃなく、ミロードもありますからね。
10年近く前は良くお世話になりました。

友達と仕事帰りに集まって服買ったり、ご飯食べたり。
当時上下で2、3千円の下着しか買っていなかった私が店員さんに「お胸の事も考えると~」と乗せられ、初めて1万の下着を買ったのもミロードでした。
あの頃は下着に1万円出す事がドキドキでしたが、今はむしろ服より下着の方が圧倒的に高いし、バリエーションある気がします。使い道もないのに。

というか、下着の方が選んでても着てても楽しいんですよ。
アラフォーに片足突っ込んでいる年齢ですが、未だにフリルとかリボンが大好きなんです。
一方で面積極狭の「ヤる気満々じゃねぇか」みたいな下着も大好きだし
自分受けしか考えていないようなフリルと梯子レースの下着も大好きだし
お花の刺繍が沢山された可愛らしいデザインも大好きなんです。
サルートもHIMICOもリサマリも大好き。
下着だったら何着てても、誰にも文句言われないですからね。
もちろん毎回全部手洗いしてます。
キャバ嬢時代に「クリーニング代もったいない」とドレスを洗濯機で回していた女が。

閑話休題。



という訳で、ルミネに行く前に昔馴染みのミロードへ行きました。

すぐに出ました。

いや、あの、ちゃんと選ぶつもりだったんですよ?
なんたってデートの服を探しに行ってる訳ですから。
でもね、どうも、ミロードに入っているお洋服、若い子向け過ぎて…………

さっき「10年前によく来ていた」と言いましたが、いや本当に、ちょっと若いんですよ。
もちろんショップもあの頃から入れ替わったりしてるんでしょうけど、少なくとも今の私が「これ可愛い!」と立ち止まる服は売ってないんです。

もう少し若かったら多分、違ったと思います。
例えば私、地雷系の子のファッションとか結構好きなんですよね。
ただじゃあ「自分が着るか?」というと、それはかなりの勇気が必要というか……
撮影で衣装として着るのとは訳が違う訳です。

若い頃は「私は年取っても足出すし!」と思っていましたが、今はもう、プライベートは膝下のスカートしか履きません。
体のラインが出る事を恐れ、ズボンではなくふわふわとしたスカートばかり履くようになりました。
私が可愛いと思う服と、私の年齢に、どんどん差が出来ています。

可愛いと思える服がないんじゃない。
その服を可愛く着ている自分が想像出来ないんだ。

なんという事でしょう。まぁ、薄々気付いていたんですけど。
しかし悲しいかな、これは現実です。
自分が可愛いと思うものとは違っても、私は服を探さなければなりません。
休日にテンションあげて出かける為に。
そしてデートへ行って女子力()を取り戻す為に。
それに服を買うつもりで来ていたので、何がなんでも服を買って帰りたい。

ミロードを逃げるように出た私は、本丸ルミネへ向かいました。
ルミネはかなり幅広い年齢層に向けた服を販売している、とても良心的な施設(?)です。
OL御用達の服屋もたくさんあります。
知っているブランドもいくつかあるので、ミロードよりは気が楽だろうと。

思いました。

いや、本当にミロードより気は楽だったんですよ。
店内に入って試着したり、店員さんにアドバイスをもらったりもしました。
でもやっぱりピンとこない。
昔は買い物に来ると頭の中で
「あれも欲しい!これも欲しい!」
ブルーハーツが騒ぎ出したというのに
「可愛いけど買う程じゃないかなぁ…」とどうしても買う気になりません。
なんだなんだ、私は何を求めているんだ。何を着たいんだ。

気付けば20時半。ルミネもそろそろ閉店の時間です。
失意に飲まれつつ、東口方面へ向かいました。

あの頃より、大人になりました。
お金だってたくさん持ってます。
だけど一人では服を買う事も満足に出来ない。
何が着たいのか、何が自分に似合うのか、何を手にすれば満足するのかも分からない。
自由を手にしたのに、使い方が分からない…

少し話しはズレますが、父は「もう働きたくない」と言って定年より少し早く退職しました。
退職からしばらくは一人旅をしたり楽しそうに過ごしていたものの、すぐに時間を持て余し、やる事もないからと昼間から酒を飲みまくり、今は暇に飽きて再雇用して働いています。

アレと同じ現象が、まさか私にも……………?

薄ら寒いものを感じながら、JR東口に向かって歩きます。
そういえばすっかり忘れていたんですが、JR東口改札近くにもルミネがあるんですよね。
いつも何も考えずに通り過ぎているんで、通って初めて思い出しました。

時間は20時45分。
「欲しいものは見つからないだろうけど、まぁ一応通り過ぎるだけ…」
と思いながら、お店とお店の間を歩きます。
その中で、昔よく買っていたお店を見つけました。
「いらっしゃいませぇ~」
ギャルっぽい店員さんが服を畳みながら声をかけています。
私はなんとなく、店内に足を踏み入れました。

とは言え、ここだってどう見ても20代向け。
どうせ私に似合う服なんかありません。
ですが丁度セール中だったようで、シンプルなワンピースがかなり安価で売られていました。
「まぁこの値段なら、近所に飲み行く用の服にいいかな」
と思う位の丁度良い金額です。

「あの、すみません」
「はぁい、試着ですかぁ?」
「はい、これ試着してみたくて…」
「他に気になるものありましたぁ?」
「いや、他は見てなくて…」

ギャル店員のお姉さんが、試着したいといった服と私を見ます。

「こういうリブ感(?)のある服が好きですか?」
「あっ、えっとまぁ、そうですね、ぴたっとしてる感じの服は好きです」
「だったらぁ……」

お姉さんは私から少し離れ、入口付近でディスプレイされている新作のワンピースを手に戻ってきました。

「こっちの方がリブ(????)が効いてて好きだと思いますよ~何色がいいです? 白と黒とグレーの三色でぇ~」
「このデザインなら黒ですかねぇ…」
「ですよねぇ~~分かりますぅ、黒がやっぱ一番人気あってぇ、これも再入荷がうんたらかんたら」

あれよあれよと元々買う予定だったワンピースと新作のワンピースをもたされ、試着室に入ります。
「フェイスカバー足元にあるんで使ってくださいね♡」と言ってカーテンを閉められました。ふむ。

まずは最初に試着するつもりで声をかけた、セールのワンピース。
着た感じも想像通りで、「まぁいいかな」という感じ。
この金額でこれなら全然ありだよねっていう感じ。
それ以上でもそれ以下でもないけど、私的には及第点です。

セールのワンピースを脱いで、新作に手を伸ばします。
見る限り、全体的なラインの出方はセールのものと似ている感じがします。
似ていないのはお値段。セール中のものの4倍位。全然似てない
別に新作とか買うつもりないんだけどな…でもまぁすすめられたし、一応着てみるか…

・・・・・・

「どうでしたぁ?」
「こっち、この新作の方買います
「あ、やっぱりこっちの方が好きでしたぁ?」
「いやもう、全っ然違いますね。似てるのに、全く別物です。あ、あとこのトップスも下さい、これ似てる感じですよね? 買います」
「え~~~~ありがとうございます~~~」

閉店間際に会計を済ませ、気持ちも明るく帰路に向かいました。
ショップ店員ってすごいですね。本当にすごい。
私が欲しいものとか好きそうなものを、すぐに出してきてくれるのすごい。
全然買う気なかったのに、ドンピシャすぎて買っちゃいました。
これで無事、デートに行けそうです。


デート相手とデート前日に朝まで飲み歩き、肝心のデートが中止になったのはまた別のお話。

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