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乙女のクローゼット

文学フリマ東京38お疲れ様でした。
東京と名古屋合わせると、かなりの数手に取って頂きました。
若干数ですが通販に流しますので、よろしければぜひ。

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さて、宣伝はここまでにして、その文学フリマに行く日の朝の事です。
「何を着ていこうかなぁ」
「どういう服がいいかなぁ」
と思いながら顔を洗っていた時に、私は気付いてしまいました。
着たい服がない事に。

考えてみれば、元々服にもアクセサリーにもあまり興味がない私は、いつもその時交際している人に「着て」と言われた服を着てきました。
撮影を始めてからは「撮影に必要そうな服」。
会社員になってからは「無難な服」。

気付けばクローゼットには着たい服ではなく「それっぽい服」だけが並んでいます。

だけど、昔は休みの日に着たい服があったんです。
可愛いと思われたくて、キレイだと言われたくて着る服が。
何より自分のテンションを上げる為に、休みの日にだけ着る特別な服が。

でも気付いたらそんなもの無くなってました。

お気に入りだった服たちはすっかり着倒され、「会社のあとちょっとご飯食べにいく用」に格下げされています。
新しく買う服は「とりあえず持っておけば撮影でも使えそうだな」と買ったものばかりで、ときめいて買った服ではありません。

この数カ月、出かける予定はいくらもあった筈。
なのにときめく服がない事にすら気付きませんでした
つまりそれはときめくような出来事がないという事。

ショックです。
あんなに恋に生きてきたというのに。
いつの間に、私の中の乙女は死んでしまったんでしょう。

ですがときめくような出来事を今から作るというのは少し難しいです。
何せ、私ももう三十代半ば。悲しい事に夢見る力も衰えてしまいました。
気になるのは老後と貯金の事ばかり。

だけどせめて「次の休みはこれを着て出かけよう」とウキウキする気持ち位は取り戻したい…
とは言え何から始めればいいのか分からない…
買い物に出ても「可愛い」と思える服がない…

話は逸れますが、恋に生きるのを辞めて自主性を持ち始めた頃、自分の好きなものが分からなくなった事があります。
好きな人が居なければ、恋人が居なければ、何をすればいいのか分からない。
意味が分からないでしょう。だけど私はそういう人間でした。

昔の私は服だけじゃなく趣味すらも、その時の恋人が好きなものを一緒にするだけでした。
しかもそれに気付いたのが二十代後半。
どれだけ恋に溺れていたんだろうと思います。
いっそ溺れたままでいたらよかったのに。
だけど自分が溺れていた沼地が案外浅瀬で、きちんと足も着く場所だと知ってしまえば、もう一度溺れる事も難しい。

それから少しづつ好きな事を見つけ、手を出してみました。
交友関係も広げてみました。
気付けば毎日忙しいと感じる程、今の私は多趣味です。

そこでやっと気付きました。
気付いてみればなんてことない。
あの時やった事をもう一度やればいい。

とりあえず服に興味を持ってみる事から始めればいいだけです。
スマホで適当に服を選んで買うんじゃなく、お店に行って試着してみればいいんです。
「書を捨てよ、町に出よう」ならぬ「スマホを捨てよ、ルミネに出よう」です。
興味がなくてもとりあえず服を見て試着を繰り返していれば、そのうち好きな服が見つかったりするものです。きっと。多分。

とは言えやみくもにルミネに行くのもなぁ…

そう思いながら、今日も私は楽天市場のアプリを立ち上げ、人気ランキングを見るのでした。


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