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【前編】神戸遥真さんの「恋ポテシリーズ」は初バイトしたときの気持ちを思い出す

おはようございます、上田です!
久しぶりに本の紹介感想文をお届けしたいと思います。

神戸遥真先生の「恋とポテトと夏休み」「恋とポテトと文化祭」「恋とポテトとクリスマス」(講談社)の3冊について、ご紹介していきます。

ちなみにこちらの記事が前編で、後編では同シリーズ(主人公は交替)の「恋とシェイクとバレンタイン」「恋とシェイクと春休み」を取り上げます。

まず、前半三冊の「恋ポテ」(この略しかたも可愛すぎません?)ですが、こちらがどのような内容かといいますと「高校受験に失敗し、第一志望ではない高校に進学、ぱっとしない毎日を送っていた高校一年生の守崎夢芽が、ひょんなことから夏休みにEバーガー京成千葉中央駅前店でバイトすることに!」というものです。

1巻目の「恋とポテトと夏休み」から、ネタバレに配慮しつつご紹介しますね。

ところで、初バイトしたときの気持ちって覚えていますか?

作中で夢芽ちゃんは、憧れの先輩を尾行したのがきっかけで(この設定も楽しい・笑)Eバーガーの面接者と勘違いされ、なりゆきでバイトの面接に合格してしまいます。

夢芽ちゃんの母親は「高校生がバイトなんてぜったいにダメ!」というような厳しい人で、夢芽ちゃんは父親だけにバイトを始めたことを明かして許可をもらい、Eバーガーで働き始めます。

読み進めながら、その原動力はたぶん「いままでの自分を変えたいから」なのではないかなあと思いました。

私自身がバイトを始めてやったのは、大学生のとき。(高校ではバイト自体禁止されていたので)チェーン喫茶店のホールでした。

夢芽ちゃんと同じく「バイトなんて。勉学に集中しなさい!」という母の反対を押し切って応募、採用されたのですが、結果は苦いもので、仕事ができなすぎて二週間でクビ。とっても恥ずかしい気持ちになりました。

夢芽ちゃんがはじめての接客バイトがうまくできなくて、悩む姿に、当時の自分を重ね合わせてしまいました。

Eバーガー京成千葉中央駅前店にはたくさんのスタッフがいて、夢芽ちゃんはそこで多くの「自分とは違う環境で生きてきた人たち」と出会います。

そう、社会に働きに出ると本当にバックグラウンドがさまざまな人と出会えて、刺激を受けますよね。夢芽ちゃんがスタッフ仲間として出会うのは、同学年男子の源くん、フリーターの萌夏ちゃん、フィリピンからの留学生のガルシアさん、主婦でバイトリーダーをしている青江さん、勘違いして夢芽を雇った諏訪店長、夢芽の憧れだった隼人さんなどなど…

この物語には「はじめて社会でバイトしたときの、あの気持ち」がたっぷりつまっていて、もし夢芽ちゃんと同年代の子たちが読んだら、どんなにドキドキわくわくするだろう、背中を押してもらえるだろうと思います。

淡い初恋も見所で、きゅんきゅんしますよ!
読んでいると高校生に戻って、たくさんの「はじめて」にまた出会いたくなりました。

では、続いて2巻目の「恋とポテトと文化祭」

源くんのことが気になってきた夢芽ちゃん。

自然と、彼のまわりの人間関係にも注目するようになり、その結果「もしからしたら、源くんを気にしてる人はいっぱいいるのかも?」ということに気づいてきてしまって…

私、フリーターの萌夏ちゃんのキャラクターがとっても好きです!家庭環境もよくなく、高校を中退してバイトをがんばっている萌夏ちゃんは、お嬢さん育ちの夢芽ちゃんから見たら、憧れるあまり引け目を感じる、っていうことがすごくよくわかる。

そんな彼女に、自分の好きな人だって惹かれないわけがない、と思うとつらいですよね。でも、この物語のなかで、夢芽ちゃんは少しずつ強くなって、自分の言葉で思っていることを伝えられるようになったり、Eバーガー店員として成長するなかで、学校行事にも貢献できちゃうくらい成長したり。

夢芽ちゃんが、悩みながらも自信を少しずつ確立していく、その姿が本当にまぶしい2巻です!

源くんの妹の歌音ちゃんや、クラスメイトの深田さんも魅力的なキャラクター。

しかし隼人さんについては、ちょっとあんた何してるんですかー!? と小一時間くらい詰めたい気分になってしまう私でした(ダメなイケメン美味しい…でも、周りを傷つけちゃダメー!)

そしてシリーズ前編のラストを飾る3巻「恋とポテトとクリスマス」

夢芽を雇ってくれた諏訪店長と交替して、新しい新巻店長が京成千葉店に来るところから、はじまる3巻。

高校では文理選択の調査票が配られて、夢芽ちゃんは自分のこれからの進路に迷い始めますが「もしかしたらこれが好きなんじゃないかな?」というカケラを見つけます。

3巻で面白いなあ、と思ったのは、一見厳しい新巻店長の人となりや方針の意味に、夢芽ちゃんが気づいていくところ。ラストのカスタマーセンターから届いたメッセージには、本当に感動しました。がんばったね…!夢芽ちゃん…!

それに、1巻から3巻にかけて、もつれにもつれていた恋の糸も、ようやく収まるべきところに収まるようで…?

2巻を読んだときに憤っていた隼人さんのキャラクターですが「まあ許す(何様だよ…)」となりました(笑)

隼人さんは隼人さんで、夢芽ちゃんが好きなものを見出していくきっかけにもなっているので、いいお仕事を実はしてるんですよね!大人な対応もできますしね。

そして、キッチンのこともできるようになった夢芽ちゃんの、Eバーガーの厨房で働く描写が、飲食店の裏側を知れるようですごく面白かったです。お仕事裏側もののテレビ番組とか大好きな私なので、読み入ってしまいました。

普段は手厳しい源くんの、少しだけ甘い表情が見れて大満足のラストでした。夢芽ちゃん、良かったね!

前半3巻を通して今回読ませていただいて、本当に「高校生のお仕事モノ」という物語の魅力に打ちのめされた私です。

もう、全国の高校生や中学生は、全員読んだらいいよー!!!って心の底から思います。

神戸先生、素敵な物語をありがとうございました。

このシリーズは「第45回日本児童文芸家協会賞」を受賞されているそうです!

夢芽ちゃんみたいに、頼りない自分を変えたい、って思っている思春期の子は、きっと日本じゅうにいっぱいいて、そんな子たちがこの物語を手に取ることで「変わっていくきっかけ」になれば本当にいいなあと感じます。

児童文学好きな友人が多いので、まずその友人たちも含めて、いろいろな人におすすめしたいシリーズでした!

後半2冊の「恋とシェイクとバレンタイン」「恋とシェイクと春休み」のご紹介はこちらです!併せてぜひお読みください~!!!








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