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上田聡子
2021年1月1日 13:45
みよの住むちいさな長屋にも、ちゃんと正月が来た。きしむ引き戸をがたつかせながら開けると、元旦の清新な外気がさっと奥行二間半の室内にも通って、みよは大きく息を吸って吐く。八年前の春に祝言を挙げた、大工である亭主の五兵衛は、まだ寝正月を決め込んでいる。せっかくお屠蘇と雑煮の準備ができているのに、うすい布団にうすい夜着をかぶって、ごうごうといびきをかいている。「まったく、お気楽なこと」にらむ