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【日記】異なる星の生き物を見るような目でおやつを食べる

4月某日。

ムスメは遠足へ。2年生はキャンプ場でカレーを作って食べるらしい。

オットが「僕らの時代、高校に遠足なんてあったっけ?」と首を傾げている、その姿がビクターの犬っぽい。

私達は晩婚&高齢出産夫婦なので、ムスメとは干支が3周ほど違う。

そのため、子育てを始めた瞬間から、
「私達の時代と全然違う」と
「私達の時代から何も変わっていない」
に、繰り返し直面している。

最近はそこに、
「自分達の時にどうだったか思い出せない」
が加わった。さすがアラフィフ……。昨日の夕飯に何を食べたっけ?

でも、高校の遠足に関しては、私は自信を持って断言できる。

「あったよ!」と。

しかし、オットは当地(道後温泉のある俳句の都)の人間ではない。

北海道生まれ、神奈川、大阪、愛知育ち。高校時代は愛知県で過ごした。

私は愛知県の高校のことは知らぬ……。

私の母校の遠足は少々変わっており、目的地のおおよその決定権が生徒にあった。しかもクラス単位で。

私は理数科という、各学年に1クラスしかないコースだったのだけれど(つまり3年間同じ顔ぶれ)、普通科のクラス、特に文系クラスからは奇人変人の集まりみたいな目で見られていた。

確かに、各クラスがレンタルビデオを借りてきて映画を観るロングホームルームの時間、他のクラスが文科省推薦系の真面目な作品を観ている時、私達は『死霊のはらわた』シリーズを観ていた。

また、別の日のロングホームルームでは、よそのクラスが真面目な議題で話し合いをしている時に、私達はフルーツバスケットで盛り上がっていた。

でも、それくらいしか、(変な目で見られる)心当たりがない……。

強いて言えば、体育祭など、団体でやる学校行事に対して著しくやる気のない生徒が多いクラスではあった。

それが普通科からはめちゃくちゃ評判が悪かったんだよねぇ。協調性がないって。

そんなクラスだったので、遠足に対するモチベーションもかなり低かった私達。

遠くには行きたくないというだけの理由で、学校の最寄りの観光スポットである『松山城』を目的地に決めた。(正確に言うと、松山城が建っている小さな山、通称『城山』にのぼるだけで、天守閣の中には入らないプラン。)

しかし、この計画には職員室からクレームと改変が入った。

「近過ぎる」と。(学校から松山城まで距離にして1キロメートルほど。)

「城山の後、道後へ行って動物園に入れ」と。

当時、道後には動物園があったのだ。(この翌年におとなりの砥部町に移転になり、「とべ動物園」になる。しろくまピースで有名になった、あの動物園。)

松山城から道後へは約2キロメートル、もちろん徒歩での移動だ。(遠足だから)

なるべく歩きたくないから選んだ目的地なのに、まあまあ歩かされることになって、もともと少なかった理数科メンバーのやる気がさらに減ったことは言うまでもない。

遠足当日。

モチベーションの低い私達は、城山のてっぺんに到着した時点で、1日のやる気をほぼ使い果たしていた。もう帰りたい。

ところが。

目的地が同じだったよそのクラス(普通科)は、なんとクラス全員でハンカチ落としを始めたのだ。まじか……。青春か?

その様子を、異なる星の生き物を見るような目で見ながら、静かにおやつを食べる私達。

担任の「君らは、ああいうのはやらんのか?」という質問を華麗にスルーして、来年以降は電車で行くしかない場所を目的地にしてやろうと誓い合ったのだった。
(しかし、2年生の時も3年生の時も「これならどうだ?」と考え抜いた目的地の手前の駅で降ろされて、山越えをさせられたり歩かされたりするのだった。ちぇっ。)

ちなみにムスメの遠足は毎年貸切バスである。

私立高校の優雅さがまぶしい。(私もオットもオール公立育ち。)

帰宅したムスメによると、クラス全員と先生でだるまさんがころんだをやったらしい。

まじか……。青春か?

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