完全帰国日記①
我が家がニュージーランドから帰国して、あっという間に2年半が過ぎようとしている。
悩んで下した決断が大きければ大きいほど「やり直し(新たな方向転換)が効かない」と思ってしまうけれど、必要なら何度でも人生の舵を切るしかないのだなあと決めた帰国。
これで良かったとも悪かったとも、今は答えを出せる段階ではない。
だって、人生はまだ続いているから。
とりあえず。
あの頃の心の記録をここに残しておこうと思う。
☆☆
2021年11月30日(火曜日)
NZに来ると決めた時もそうだったように、日本へ帰ると決めたのも理由はひとつではない。
でも、まあ、コロナ禍と私の実家の問題の合わせ技が大きい。(遠隔操作にも限界があるんじゃー!)
……とはいえ、風が吹けば桶屋が儲かるくらいの因果関係だけど。
このコロナ禍の最中に、自分と向き合って、大きな決断をした人はたくさんいたと思う。
外にも出られず、人にも会えない時間がたっぷりあったし。
ムスメのクラスにも、(ムスメ以外に)、親の出身国に帰る子がいる。
ルーシーはママのふるさとのスコットランドへ帰るらしい。
ムスメとルーシーはYear2の時も同じクラスだった。
そういえば、ムスメがニュージーランドで初めて招待された誕生日パーティーは、ルーシーのパーティーだった。
たしか、自宅でやるスパ・パーティーだった。
そう、ルーシーの家の庭にはスパがあったのだ。
最初に招待状を見た時、
「スパ・パーティー?スパ?スパゲッティ???」
と混乱したのは、そこに「togsを持ってきてね」という記載もあったから。
togsをトングだと思ったのだ。
まさかイギリス英語で水着のことだなんて!
そこでやっとスパはあのスパだと分かったのだった。
それでもなお「自宅にスパがあるのか!」と驚き、いやいや…この国では自宅にスパやプールがある家は珍しくないんだよと知ってまた驚き、ニュージーランドに来て最初の一年は驚くことばかりだった。
11月が終わる。帰国のフライトまであと58日。
2021年12月1日(水曜日)
今週になってから、オミクロンめーーー!…という心の叫びでいっぱいだ。(注……この頃、オミクロン株が拡散し始めていたのです。)
いくら先進国がワクチン接種率を上げても、ワクチンを確保できない地域で変異株が生まれて広がればこの有様……。
自分たちの健康と幸せは他者の健康と幸せと地続きなのだということを、また思い知った。
この2年ほど、微かな希望が生まれては、それを打ち消すような事態が発生する。その繰り返し。
人類、試されすぎでは……。
果たして私たちも無事に帰国できるのか……。
帰国のフライトまであと57日。
フライトがキャンセルになった時のことを想定して、オットが旅行保険を調べまくっている。
2021年12月2日(木曜日)
家主さんと業者さんが来た。
浴室と台所の換気扇を交換するらしい。
私たちが退去した後でやってくれた方が良いのだけど、私たちが家主さんに(不動産屋経由で)帰国することを伝えたのが今週のことなので仕方ない……。
家主さんはKiwiのおじいちゃん。(Kiwi訛りが強すぎて、話の半分くらいしか分からない……。でも、何度でも説明してくれる親切な人だ。)
日本へ帰ってからは私の親と住むこと、私の両親にとってムスメが唯一の孫であることを伝えると、「それは、良いことだ」と自分のことのように喜んでくれる。
家主さんのお孫さんはオーストラリアに住んでいて、今年は会えていないのだとか……。会いたいよね……。
昨日の日本のニュースで、政府が12月中の帰国便の新規予約を停止するように要請したらしいと知る。
しかし、今日になって取り消すと言い出したらしい。どっちやねん。
そして、オーストラリア(一応、隣の国。そこそこ距離はある。)が「(帰国後)指定隔離施設へ入らなければならない国リスト」に入ってしまった。
踏ん張れ、ニュージーランド。(……と日本)
帰国のフライトまであと56日。
その頃にどうなっているのか、全く予想がつかない。
2021年12月3日(金曜日)
今日、term4が終わった。信じられない……。学校が再開したのが2週間前だというのに。
ムスメのニュージーランドでの学生生活、その最後の1年は、結局、半分くらいしか学校へ通えなかったのではないか?と思う。
今となっては6月にコーラスの大会を経験できたのは大きかった。
あれがなかったら、もっと、もやもやした1年だったと思う。
今日は担任のミスターGuy(名字が本当にGuy。そう、ミスター「奴」なのだ。)が、Social Studyの授業中に、ムスメとルーシーのために送別会を開いてくれたらしい。
屋外で(感染症対策)、ピザを1人1枚ずつ(感染症対策)オーダーして食べたとか。
ムスメとルーシーの分はミスターGuyが払ってくれた。
ありがとう!ミスターGuy!
ムスメには「送別会でどんな話をしたの?」とか、「泣いたの?」とか、いっさい聞かなかった。
それはムスメの思い出だから。私たちは立ち入らない。
明日から約2ヶ月の夏休みが始まる。
ムスメはロックダウン中から、オンラインの通信教材を使って、日本の中学のカリキュラムを履修している。1年生の範囲は一通りやった。(とりあえず、やっただけ。定着しているかどうかは別の問題。)明日からは2年生の範囲を始める予定。
私もムスメの学習をサポートしているのだけれど、もはや「いい国作ろう鎌倉幕府」ではないことは知っていたのに(1192年は源頼朝が征夷大将軍になった年だそうです。鎌倉幕府の成立は1185年。)、私たちが大鑽井盆地と習ったオーストラリアのアレがテキストで「グレートアーテジアン盆地」となっていて、
……え?誰?
と驚いたよね……。
帰国のフライトまであと55日。
2年生の範囲、終わるかなあ。
2021年12月4日(土曜日)
そろそろ洗剤やら調味料を購入する時にいちいち「これがニュージーランドで買う最後の……」と考えるのをやめたい。キリがない。
8年前、日本からニュージーランドへ引っ越す時にも同じようなことを考えていたと想像できるのだが、さすがにもう覚えていない……。(人の記憶なんてそんなものです。だから、こうして記録しているのです。)
ニュージーランドへ来た当初のことも、今となってはずいぶん昔の出来事のようだ。
実はムスメの通っていたセカンダリースクール(高校のこと。ただし、13歳から5年間。)は、私たちがニュージーランドへ来て最初に住んだエリアにある。
私とムスメはそのセカンダリースクールの最寄りのバス停から黄色いバスに乗って、となりのエリアにある小中一貫校へ通っていた。
(10ヶ月後に小中一貫校のエリアに引っ越したので、バス通学は終了。)
セカンダリースクールに入学してからは、ムスメは当時と逆のルートでバス通学をすることになり、かつて利用していた黄色いバスとバス停を、また利用することになった。
……まあ、この数年の間に信号機とバス停が数十メートル移動になっていて、全く元通りと言うわけではないのだけど。
私たちがニュージーランドに住んでいる間にも、ずいぶんいろんなことが変わった。
7年半というのは結構長い時間なんだなあと、改めて感じている。
帰国のフライトまであと54日。
2021年12月6日(月曜日)
話が前後するのだけど、先々週、日本へ送る船便を手配した。
ニュージーランドへ来る時、日本から送った船便は45箱だったのに、帰りは24箱。ずいぶん減っている。
ムスメの本とぬいぐるみとレゴは確実に増えているのに、いったい何が減ったのか分からない。
不思議だ……。(その後、オットと考察した結果、来る時はプロの引越し業者さんに梱包して貰ったので、荷物に損害が出ないように、緩衝材などをたっぷり詰めてあったのではないか?というところに落ち着いた。ええ、私達はぎゅうぎゅうに荷物を詰めましたよ。無事に届くのだろうか。不安しかない。)
持って帰れないものはどんどん友人に譲っている。物が減ると部屋が広々として生活しやすい。しやすいぞ!
……ということに気付いてしまった。
この調子で日本へ戻っても断捨離をしたいのだが、ニュージーランドへ来る時に実家に預けた荷物がそのままあるし、今回送った荷物も実家に届くわけで……。(しかも、ぎゅうぎゅう詰め……。)
実家には両親が処分しかねている荷物もあるので(なにしろ高齢なので思うように動けないらしい)、これは……帰国後もずっと片付けをするんだろうなあ、私。(正解だよ。2年半経っても終わってないよ。)
帰国のフライトまであと52日。
2021年12月7日(火曜日)
本帰国するにあたって、ムスメがニュージーランドで通った学校2校(小中一貫校と高校)から書類を貰わなくてはならない。
小中一貫校の方は既に卒業しているので、今年度の成績が出るのを待つまでもなく発行して貰えたのだが、高校の方はそうもいかない。
12月6日(昨日)に年度末の成績表が出るので、7日(今日ですね)に学生センターまで取りに来て欲しいという話だった。
だ・っ・た。そう、過去形です。
昨日には出るはずだった成績表が間に合わなかったのだ。出るのは10日。金曜日。
しかし、受け取りの窓口である学生センターは7日(今日)で閉まってしまう。
次に開くのは来年のterm1。私たち、もうNZにいません。どうするの?
……というわけで、10日以降に郵送してくれるらしい。
ちゃんと届くのか一抹の不安はあるものの、ニュージーランド国内にいる間ならどうにかなるのではないか……と思う。(思うしかない)
実は当初の予定では12月9日の便で日本へ帰ることになっていたので、その場合は海外発送して貰うことになってしまうところだった。
ギリギリのスケジュールはまじ危険。やめとけ。
ちなみにどういう書類を依頼したかというと、どちらの学校にも在学期間を証明する書類と最終学年の成績表を頼んだ。
これで「娘は日本から離れている間もきちんと教育を受けていたよ」という証明ができる。
帰国のフライトまであと51日。
2021年12月9日(木曜日)
最初の予定では今日のフライトで日本へ戻る予定だったんだなあ……
という感慨もそこそこに荷造りと断捨離をやっている。(もう二度と引っ越しなんかしたくない……したくないぞ…)
我が家の帰国の準備とオークランドのロックダウンがほぼ同時進行だったこともあって、帰国のことを伝えるタイミングがないままの友人知人が、まあまあいる。
メールがあるでしょ?と思うかもしれないけれど、ロックダウン中にバブル(普段の生活を共にしている集団)の外の人との接触が制限されている状態で知らせても(知らされても)、お互いどうしようもないわけで……。
そんなことを考えたのは私たちだけでなく、「最近音沙汰ないなあ」と思っていた友人たちにも2021年はいろいろあったようで、先日、ものすごく大変な状況の最中の友人に「実は帰国します」と知らせてしまうことになった。
その結果、友人はもっと落ち着いてから私に連絡するつもりだったのに、大変な状況の中、気力を振り絞って返信してくれたのだった。申し訳なさすぎる……。
2021年……みんな何かしら大変な状況だと思う。
そんなわけで。
わざわざ知らせるのはもうやめようと決めた。
ロックダウンではなくなったとはいえ、人と会うことに躊躇う状況だし……。
帰国のフライトまであと49日。
2021年12月14日(火曜日)
鍋(柳宗理のミルクパン)をピカピカに磨いてしまった。
今の私には他にやるべきこと(荷物の処分とか処分とか処分とか)があるのに……。
人はなぜ試験前夜に部屋の掃除を始めてしまうようなことをやってしまうのか……。
そういえば私は中高生の頃、試験前夜に部屋の模様替えを始めてしまうほどの現実逃避ぶりだった。
そうか現実逃避か……。
この(すっかりピカピカになった)ミルクパンは、できればスーツケースにつめて持って帰りたいものだ。持って帰れるかな……。
現在、スーツケースに詰める物、段ボールに入れて追加料金を払って飛行機で持って帰る物を選んでいるところなのだけれど、なんでこんなに物が多いのか、我が家は。
しかも、今になって「なんでこれを船便に入れておかなかったの?」という物がポロポロと出てくる。
まじでなんで?
いや、理由は分かっているのだ。
ムスメだよ!
あの人、自分の荷物なのに他人事すぎる……。(パッと目についた物しか荷物に詰めない。)
しかも、普段から物の置き場が適当すぎるので、本来の置き場とは異なる場所に置いてあった物が、私やオットのチェックからも漏れて残っていたというわけだ。
それならば自業自得なので「もう持って帰らなくていいよね?(捨てるよね?)」と聞いても、「ううん、持って帰る」の一点張り。
嗚呼、荷物が減らない……(涙)
帰国のフライトまであと44日。
2021年12月15日(水曜日)
日本へ帰る準備として、毎晩、YouTubeでメイクの仕方の動画を見ている。
なにしろNZでの生活では、すっぴんでも周りはほぼ誰も気にしない。(ただし、日焼け止めはした方がいい。紫外線の量は日本の7倍という、とんでもない数値なので。)
まあ、日本人同士は気にしているかもしれないけれど、私は日本人の知り合いが少ないし、その少ない知り合いもそんな細かいことは気にしないタイプばかり。(類は友を呼ぶ。)
そんなわけで、この7年半、日焼け止めとチークと眉を描く程度だったので、すっかり化粧の仕方を忘れてしまっている。
……というか、この7年半の間に化粧の流行も変わっただろうし、何より私自身、40代から50代になったので、7年半前のメイクでは違和感がある、はず。
……ってなわけで、夜な夜な動画を見ては「うわっ、めんどくさい」とつぶやいて、隣で寝ているオットを怯えさせている。
果たして日本社会へ復帰できるのだろうか……。
まあ、でも、今は全人類マスク生活だからどうにかなるか……。
帰国のフライトまであと43日。
2021年12月16日(木曜日)
そろそろNZ国内限定のバウチャー(商品券)を使い切っておかなければ……ということで、しぶしぶショッピングモールへ出かける。
クリスマスシーズンのショッピングモールはカオスなので、なるべく朝早い時間帯を狙って出かけた。
途中でムスメに確認したいことがあったのでムスメのスマホに電話をかけたのだけど、あいつ、出やしねえ……。(おっと、言葉遣いが悪くなってしまった。)
ムスメは普段からスマホを消音にして家の中に放置していることが多い。
おそらく今日もそうなのだろうと諦めた。
ところが、買い物を終えて自宅に戻るとムスメが開口一番「何の用事だったの?」と聞くではないか!
気になるならなぜ、かけ直さないのか……。
……っていうか、君はなぜお父さんやお母さんからの着信をそんなに警戒するのか?
正確にいうと、ムスメは誰からの着信にも出ない。
まあ、それは慎重で良いのだけど、
せめておかーさんからの着信には出て。
用があるから電話してるんやで……。
帰国のフライトまであと42日。
2021年12月19日(日曜日)
友人くーちゃんへクリスマスプレゼントを贈ろう(送ろう)と思って、検索しようとしたところ、そのブランドの名前が出てこない……。
仕方がないので「ふわふわ ルームウェア」で検索した。
ジェラートピケ。そう、それそれ。
無事、解決した。
プレゼントはムスメがコーディネートしたので、なかなか「ゆめかわいい」コーデになっているのだが、ま、ルームウェアなのでいいでしょう。
ふわふわもこもこかわいいものに包まれて、気持ちよく過ごしてほしい。(落ち着かないかもしれないけど……)
帰国のフライトまであと39日。
その②へつづく。
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