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十一月の星々(140字小説コンテスト)応募作 part4

part1 part2 part3 part4(本記事) part5 結果速報

月替わりのテーマで開催する140字小説コンテスト。

【11月のテーマ】
作中に必ず『野』という文字を入れる。

11月30日までご応募受付中です!
(応募方法などは下記をご覧ください)

受賞作の速報はnoteやTwitterでお知らせするほか、星々マガジンをフォローいただくとhoshiboshiメンバーの記事とあわせて更新のお知らせが通知されます。

応募作(11月21日〜27日・投稿順)

ちる(サイトからの投稿)
「ごちそうさま」
ぼくはフォークを置いた。お皿にはにんじんのグラッセが残されている。
「お主、また野菜を残したな!」
耳もとでかわいい声がする。彼女はぼくにとりついている野菜の精霊だ。
「野菜を食べるまで帰らないからな」
彼女はいつもこう言う。だからぼくは一生野菜を食べないと決めている。
ちる(サイトからの投稿)
街の燃えないごみ置き場で、古いパソコンが野晒しになっていた。立方体のモニタと、文字の剥げかけたキーボードの上に雨が降り注いでいる。大粒の雨がキーボードを叩き、何かを書いている。その内容は雨とパソコンにしか分からないのだ。
ちる(サイトからの投稿)
三年前、ナッツのクッキーを二人で食べていた。
「木の実のクッキーって呼ぶと、絵本に出てくるリスのお店みたい」
隣に座っている彼女が言った。エプロンをかけたリスが見えた気がした。
今朝、ワイルドストロベリーのヨーグルトを、野苺のヨーグルト、と呼んでみた。もういない彼女が見えた気がした。
ちる(サイトからの投稿)
近所に野外劇場のテントが来ているので、このところ毎日、人形劇を観ている。魔女のお話に、お姫様のお話。どれも自分に起こったことみたいな気がした。今日は学生の女の子の話。観ていると、昨日のわたしの生活とまったく同じ話だ。気がつくと、わたしはたくさんの観客を前に舞台に立っていた。
黒井(サイトからの投稿)
勢いよくぶつけた自覚はあったものの、帰宅して黒いタイツを脱いで左太腿のその部分を確認したら想像以上の痣になってしまっていて流石に驚かされた。皮膚のすぐ後ろに海鼠でも飼ってるかのような内出血。愛着でも湧けば救われるのに、現状は視界に入る度に気が滅入る野蛮な傷痕。海は遠い。早く治れ。
黒井(サイトからの投稿)
十年前に住んでいた町では野生の百合をよく見かけた。国道沿いの山の斜面に咲き乱れる白い百合。摘めば両腕で抱える花束になる程の数だった。季節が巡る度に生い茂る量が増えていた気がするけれど、二年住んだ後に町を離れた今では夢か幻の様だ。夢幻ついでに百合の原野を見晴るかす夢を自分に許そう。


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