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十二月の星々(140字小説コンテスト第3期)結果発表

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月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

十二月の文字は「調」。

「月々の星々賞」として一席、二席、三席の3賞+佳作7編(計10編)を選出しました(応募総数457編)。ご応募いただきありがとうございました。

選評(評・ほしおさなえ)とあわせて受賞作は後日にhoshiboshiサイトへも掲載します。
また、優秀作(入選〜予選通過の全作品)は雑誌「星々」(年2回発行)に掲載されます。

一席、二席、三席の方には特製の賞状(ほしおさなえさんによる手書きのお名前入り)を、さらに一席の方には図書カード(1000円分)を贈呈いたします。

一月の星々(今月の文字「定」)も1月31日まで募集中ですので、引き続きのご応募をお待ちしています!
(投稿方法は以下のリンクをご覧ください)

受賞作

入選

モサク @mosaku_kansui
葉を散らした庭木にみかんの輪切りが咲いている。「自分の食事もままならないのに」言葉を飲み込んで冷蔵庫の扉を開けた。ヨーグルトや作り置きの惣菜を仕舞い、残り物を確かめる。いつもと変わらぬ流れ作業。ふと美しい調べに耳をすませる。父がみかんを啄むメジロを見ていた。懐かしい顔をしている。

うたがわきしみ @arai_chi2
雪だるまが駐雪場に現れた。体は小さめでふわふわのマシュマロに近い。きっと新雪だろう。辺りを見渡しながら管理小屋へぽぷぽぷと跳ねてくる。「僕泊まれますか?」「ああ、ここは君達専用だからね」言って台帳を調べ右角のスペースを勧める。今年はまだ泊まり客が少ない。夜、二人でぼた雪を食べた。​​

酒匂晴比古 @sakoh_haruhiko
わからないことがあったら、決してそのままにせず納得行くまで調べるのよ。そう教えてくれた担任の先生が失踪したのは、僕が小学五年生のとき。「カケオチ」の噂も流れた。でも、僕は見たんだ。先生の車が港の堤防を猛スピードで走り抜け、夜空へ消えるのを。先生、僕は30年間、謎を抱え続けています。

佳作(7編)

神崎鈴菜 @suzu_nasuzusiro
講演会に登壇した私は焦っていた。南極観測隊の仕事を紹介するはずが、モニターには南極点に立つポールを回して遊んでいる映像。何とか誤魔化さなければ。「仕事の成果は遠い所で現れるもの。これは地球の自転軸。ピサの斜塔が倒れぬよう調整しています」ダメだ、苦しい。この後自転軸引っこ抜くもん。

リリィ @lily_aoi
自分の最期が分かる人はどのくらいいるのだろうと思いながら実家に入った。ハンカチ一枚、母は残していなかった。生きることに未練はなかったのだろうかと空っぽの冷蔵庫を閉める。台所に視線を向け、立ち尽くす。様々な調味料が静かに出番を待っていた。「ごめん」換気扇を回し、うずくまって泣いた。

よつ葉 @Kleeblatt3939
何でも知っていれば愛してもらえると思ったので、多くのことを調べ、学びました。でもそんなことでは愛されませんでした。悲しくなって、思わず涙がぽろりと零れたら、涙を拭うハンカチを貸してくれた人が、私の初めての友人になってくれました。

藤和 @towa49666
エアコンの温度を調整する。うちには猫が三匹いるけれど、寒がりな子と暑がりな子がいるから、なかなかに気をつかう。とりあえず、暑がりな子に合わせて気温を低め設定して、あとはホットカーペットで妥協してもらうか。ホットカーペットの電源を入れて仕事机に向かうと、猫たちが全員肩の上に乗った。

久保田毒虫 @dokumu44
喫茶店に入る。ネットで調べた感じと少し違う。帰りにサービス券を貰う。「サービス券20枚で火星へご招待!」と書いてある。何が火星だ。俺は、いや、この世に生きとし生けるものみんな、地球で生きることで精一杯なのだ。みんな一生懸命なのだ。それぞれ何かかかえているのだ。邪魔するな。

みやふきん @38fukin
調理実習の時、班の中で誰よりも手際がいいから、料理好きなの?と訊いたら、親父しかいないからと彼は苦笑いした。変えてしまった空気を取り戻したくて、懸命に話しかけたら、まわりに勘違いが生まれた。友だちが彼のことを調べて教えてくれる。知ることで生まれたこの感情は、勘違いの派生だろうか。

旅人 。 @ryoi44
鯨の調べは天井の海から降ってくる。海にまで届く樹の天辺で少年は鈴の音を聞いた。逆さまの海にぶら下がる鈴の連なりは、荒波に揺られ、激しく鳴り響いている。彼は声を上げたが、響く唸りに掻き消された。樹上の村が震えるほどのそれは鯨の歌だった。硬直した少年は、海面から覗く巨大な目を見た。​​

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