大親友が童貞を既に卒業してた話を聞いたアラサー童貞の話

「元カノとヤってる時に眠くなったもん。」

「………んぇ?」

12月29日、すっかり年の瀬を感じまくってる夜。
私は地元に帰省し大親友Aと焼肉を食っていた。
Aとは定期的に音声通話で現状報告をしているが、実際に会うのは数年ぶりのことであった。

月一で現状報告をしているため、この夜もある程度の時間が経つと話題は枯渇した。
そんな時に議題として挙がったのが、「私は童貞を卒業できるのか」である。
普段であれば「ろくでなしだから無理」という結論に結びつけるための自虐エピソードを話して盛り上がるのだが、この日は少し異なっていた。

きっかけは私が帰省した日、兄妹の恋人が私に挨拶するため、わざわざ来てくれた時のこと。
以前から恋人がいることは聞いており、挨拶に来ると聞いた時の私の心情は「へぇ~律儀で良い人じゃ~ん」という10000%他人事だったが、いざ会ってみると感じるのである。

「あれ…?これ、家族で『ヤった』こと無いの…俺だけ?」と。

同志であれば分かってくれると願うが、童貞にとって『ヤってない』ことへの劣等感と被害妄想は凄まじい。
例え相手が童貞の同志であっても「こいつも…『ヤった』ことあるのでは?」と思った瞬間に童貞人狼が開幕する。
この童貞人狼にはゲームセットがなく、村人陣営こと童貞は永遠に疑心暗鬼に陥るのである。
ゲームバランスが考慮されることも、童貞を優しくサポートしてくれるGMも居ない。

そのため、数日前からこの夜までずっと童貞人狼に参加していた私(バチクソ童貞)は「童貞を卒業できるのか」という議題を真剣に考えていた。だって人狼陣営でゲーム参加したいし。

私は童貞の貧相な想像力で考えた、ありきたりな仮説を大親友に説明していた。
そんな中、

「やっぱフェチが合ってないと、結局長続きしなくて無理だと思うんだよねぇ…。」

という、分かりきったことをさも自分が再発見しました的な感じで言った一言に対して、Aがこう返した。

「それは確かにそう。自分もそこが合わなくて元カノとヤってる時に眠くなったもん。」






………ん?

……………んんん?????

ん?んん?????え?今、え??ん?
………ん!?今!!?なんて!???言った!?!!!???!?え!?!?

「………んぇ?」

自分のキャパシティを越えた内容は即座に理解できない。

確かにAには以前付き合っている人がいたということは聞いていた。
なんだったらA・Aの元カノ・私(邪魔者)の三人で食事したこともある。
しかし、私が困惑しているのには理由があった。

Aは性的な行為に対して嫌悪感を持っているのだ。

その背景を知っていた私は、このお付き合いに対して「プラトニックな関係に理解がある彼女さんで良かったねぇ…!」と思っていた。

















でも違ったんだって!!!!!ヤったんだってさ!!!!!!!!!!

話聞いたらさ!!彼女さんから求められてヤってたんですってさ!!!

ねぇ!!!!!!!ちょっと!!!!!!!!!!!!おい!!!おい!!!!!!!!!!おいおいおいおい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




「………ちなみに数回ヤった感じ?」

「めっちゃヤってた。」







あ"ぁ"ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(CV.にしおかすみこ)





違うじゃん!一緒に童貞同士、肩組んで結束力高めてたじゃん!
※組んでません

卒業した時はもう一方に謝罪と感謝の連絡する約束じゃん!!!
※全く約束してません

俺達、大親友じゃん!!!!!!!!!!
※Aも大親友だと言ってくれます(嬉しい)

その後、俺がAを激しく問い詰めた結果、行為の詳細をいくつか教えてくれた。
それに対して俺は、

「ハァ」

という声しか出せなかった。
自分から強引に聞いておいてこんな状態になるの、無様過ぎない?

Aと解散した後、俺は街灯もない雪道をがむしゃらに走っていた。
イヤホンから聞こえてくる曲は、ハンサムケンヤ「劣等感ビート」。

"何のため 何のため 何のために
働き眠り遊んでんだろう
誰のため 誰のため 誰のために
すり減らし涙流してんだろう"

今の自分には答えが分からない。

曲が終わる頃には息が切れ、普段から走り慣れていないせいで膝も震えていた。
この感情をどうすりゃいい、暴れたいのに身体が動かない。
負のエネルギーを吐き出すため、無性に叫びたくなった俺は天を見上げた。

そこには無数の煌めく星と、鮮明に輝くオリオン座があった。

イヤホンから、フジファブリック「星降る夜になったら」が聞こえてくる。

"星降る夜を見ている
覚めた夢の続きに期待をしてる
輝く夜空の下で
言葉の先を待っている"










めっちゃ今の景色とマッチしてんじゃーーーーーーーん!!!!!!!!!
良いもん見れたし帰ろ!!!!!!!!!!!!

クソ童貞はこれ以上傷付かないように、考えることを放棄した。

そのまま家に帰って速攻でAに連絡し、普段通りエーペックスで遊んだ。

0ダメチャンピオンとって超楽しかった!!!!!!!!!

【結論】
大親友との仲は永久不滅


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