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ただの思い出話②

今日車を運転していた時に思い出した大学生時代の思い出を書いていこうと思う。
私は長野の信州大学出身なのだが、信州大学は長野県内の教育施設が数個統廃合されてできた大学であり、長野県全域に渡って全部で5つのキャンパスを所有していた。
私が所属していた工学部は、1年の時だけ松本キャンパスで授業を受け、2年次以降は長野市にある工学部キャンパスに移動するのが決まりである。

実は松本市での部屋は、内見もせず父がネットで契約した。今思えば内見しないなんてとんでもない、と感じるが、そこは18歳で世間なんてものを知り由もない私。
記憶が正しければ合格発表から入学式まで2週間を切っており、浪人しないで済んだ安堵感に浸るまもなく(ホルンは信州大学以外私立も含めて全落ちしていた)大慌てでスーツを購入し、当時の愛車パッソに必要最低限の荷物を積み込んで長野に出発していた。

契約した松本のアパートに着いてびっくり、まず案内されたのは片側の壁が斜めになっている、とてもネットに書いてあった6畳はなさそうな築年数を感じる部屋だった。角部屋で二面採光だったのは評価のポイントだが、いかんせん角に大きな柱型があったためベッドを置くと片側のカーテンに手が届かない状況だった。

家賃は脅威の2万5千円。
親に家賃を出してもらっている手前、大声で文句は言えないが、正直初めての一人暮らしには酷な部屋だった。

ゴキブリが出る。
長野のような寒冷地は基本的にゴキブリは生息していないのだが、不運なことに私が住んでいたアパートは浅間温泉に位置しており、どうやらゴキブリでもなんとか生き残れる温熱源のある地域だったようだ。
引っ越ししてきた最初の2日は両親も一緒に部屋に泊まっていたのだが、そのタイミングではヤツは現れず、なんと私が1人になった時に初めて現れたのだ。
最悪だったのは前記の通り松本には本当に必要最低限の荷物しか持っていっていなかったため、ゴキブリと対決するための武器がないのだ。
想像してみてほしい。素手でヤツと戦わなくてはならない恐怖を。
しかし怖いからと言って放置していたら安眠できない!私は自分を奮い立たせ、部屋で唯一助けになりそうな体重計を手にした。
素早いヤツを鈍器で仕留めるなんて通常は思いつかないだろう。だが当時の私は極限まで追い詰められ、脳が活性化していた。

私がワッ!と叫ぶとヤツが動きを止めることに気がつき、私は狂人の如く叫び声を上げ続けヤツを壁際の角まで追い詰めた。後は想像の通りだ。
唯一の武器でヤツを文字通り潰したのである。

そこからの行動は速かった。殺虫成分を使わずゴキブリを冷凍することで動きを止める−85℃を購入。キッチンの下の戸棚に忍ばせた。
まともな武器を手にしたことで幾分か心強くはなったものの、ヤツの襲撃は途絶えることがなかった。一番嫌だったのは、キッチンの戸棚の中、薄暗いところに身を潜め、いざ私が何か取り出そうと扉を開けるとサササササッと動くのだ。
何度も扉を開けるタイミングで驚かされた私はついにキッチン下の排水溝が出没原因位置なのだと気がついた。
実家の水回りはしっかりしていて隙間などなかったのだが、ボロアパートのキッチン下は本当にずさんだった。備え付けのキッチンは中に給排水のホースを通すために、穴がくり抜かれており、その穴とホースの間にでっかい隙間ができていたのだ。その隙間から下水のゴキブリが湧き出していることに気がついた。
すぐに大家さんに報告し、水道業者にきてもらった。
粘土質の何かでその隙間をがっちり塞いでもらってからはゴキブリに悩まされることはなかった。
めでたしまでたし。

後から父になんであの部屋に決めたのか聞いたところ、
「あの部屋、敷金礼金0物件だったんだよね〜」とのこと。
一概に零零物件が悪いとは言わないが、内見をしないまま決めるのは絶対にやめようと決心した。

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