見出し画像

ルーカスの隠れた一面

ルーカスは、これまでホースハーモニーを体験された皆さまご存知のとおり、とても優しい馬です。
いつでも人の心をそのまま受け入れてくれて、寄り添ってくれます。
澄んだ目をした、とても優しい馬です。

ルーカスは優しく穏やかな馬ですが、その心の奥底には、とても激しいものを秘めています。
激しい内面を持ちつつ、それでいて静かに人に寄り添う、なかなかお目にかかれないような、情緒豊かな素晴らしい馬です。

今回は、ある日のルーカスのトレーニングから、その内面が伺える場面をご紹介します。

画像4

上の写真を見て下さい。
ルーカスと人の距離はたかだか3メートルくらいです。

調馬索(トレーニング用の長いリード)が緩い。
これは人がルーカスを引っ張っていないことを意味します。
つまり、ルーカスの意思が人との間隔を決めているということです。

そして、これだけ馬体が傾いているということは、
ルーカスが、半径約3メートルという小さな円周上を全力で走り、遠心力で500Kgの体が外に膨らもうとするのを、自ら体を内側に内側にと傾けて、なお全力疾走を続けようという強い「意思」を示しています。

なぜ、こんな小さな円周を、そんなにムキになって激しく走るのか。

この時、人が持っている調馬索は8メートルありますから、ルーカスが無思慮に走ると、どんどん円周が膨らんでいきます。
なによりも、ルーカスが速度を落として走れば、体をそんなに傾けなくてもラクに走れます。

見ているうちに、ふっと思い出したことがあります。
ちょっと下の写真を見てください。

タイトルなし

この2枚の写真には共通点があります。


それは「首の角度」です。

体がどんなに傾いていても、頭は地面に垂直を保とうとしています。

体が傾けば傾くほどバランス感覚は乱れ、最後は転倒します。
転倒を防ぐには、頭が地面に垂直。つまり、重力の方向だということ。
これは簡単なことですがとても重要です。

上左写真の白バイ隊員はバイクと体を思い切り左に傾けていますが、首を右に傾けて、頭を地面に垂直を保とうとしています。

上右写真のブルーインパルスのパイロットは機体を左に傾け、左急旋回で飛行中(後方の地平線が45度くらい傾いています。)ですが、同じく首を右に傾けて、頭を地面に垂直を保とうとしています。

地上でも空中でも、地球の重力方向と同じ方向に頭を維持してさえいれば、どんなに車体や機体の姿勢が急変化しても、バランス感覚を喪失することはありません。

画像4

半径約3メートルの円周上を、全力で走るルーカス。
500Kgの馬体を思い切り内側に倒していますが、頭は地面に垂直!
頭を垂直にしなければならないほど馬体を傾けてまで、横Gに耐えて全力を出しています。

やたらとムキになって、自ら小さな円周上を激しく走っているように見えますが、頭の角度はきちんと自然の摂理にそって、バランスを維持しようとしています。

そこに、激しさの中にある「静寂」を感じるのです。

「静かさ」というのは、周囲の環境が穏やかでも、緊迫していても変わりません。
激しく走っていても、ルーカスは「静か」なのです。

ルーカスはタロウさんとは性格が異なり、「フンガァー!」と言っていきなり走り出すということはしません。

いつも、はじめは自分の力を出すことを少しためらって、「いいの?僕、力を出してもいいのかな。」と聞いてきます。
そして、人が「いいよ。ありのままに走ってごらん。」というと、このように本能の赴くままに激しい一面も見せることもあります。

ホースハーモニーには「馬はこうあるべき。」という「枠」はありません。
馬がどんな個性を持っていても、まずは「馬の在るがまま」を「人」も受け入れます。

この記事をお読みの皆さまに、ルーカスのこの内面の猛々しさというか、ガッツというか… なんというか、言葉が見つかりませんが、ルーカスのこんな一面が伝わりますように。

タロウさんやルーカスの優しさや力強さに触れて、人が自分自身の本来の「優しさ」を自覚して、「あ、自分はこれでいいんだ。」という静かな自信をもって頂くことが、私たちの願いです。


画像4

※トレーニングが終わると、またいつものルーカスに戻ります。
写真の女の子を見る目が、いつものルーカスです。
おびえるワンコに対しても、優しいまなざしです。

→目次へ戻る。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?