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1.2 ウマの理性

「理性」とは、辞書によると、

物事の道理を考える能力。
道理に従って判断したり行動したりする能力。


昔、テンプル騎士団(1119年~1307年)などヨーロッパの騎士達は戦場で戦うとき、馬上で左手に盾、右手に剣を持って、手綱を離すことがよくありました。

戦場ですから、ウマも背中に主を乗せ、敵のウマとぶつかり合うわけです。
ウマも必死に踏ん張り、手綱という意思疎通なしに主と心を一つにして戦います。

日本でも、源義経の鵯越(ひよどりごえ)の逆落とし(1184年)では、義経の精兵70余騎が断崖絶壁の上から平氏の司令部の背後を突き、一ノ谷の戦いを勝利に導きます。

鵯越えの逆落とし


このときの主を背中に乗せた70数頭のウマたちは、最初は坂道を下るというよりも、落下という恐怖でいっぱいだったのではないでしょうか。

イメージしてみてください。

あなたは馬上にいます。
いつもは脚と手綱という道具や手段を使って馬と会話しています。
でも、突然、手綱が使えなくなったときや、手綱があってもそれが意味をなさないほど、短時間で過酷な環境に陥った状況を。

戦場などという極端な状況はさておき、ウマはとても臆病な生き物です。
音や臭い、周囲の鳥や獣のちょっとした動きにもビクッとします。
ウマにしてみれば一瞬頭が真っ白…
そんなウマの馬上に居るあなたも真っ白…
相互のコミュニケーションが途絶えたと感じるときの不安と緊張、恐怖…

そんな時、ウマが頼るのは… ヒトが頼るのは…

あ、このヒトがいるから大丈夫!
あ、このウマだから大丈夫!

お互いのほんの少しの理性のかけら。

理性とは、冒頭に書いたように、

物事の道理を考える能力。
道理に従って判断したり行動したりする能力。

道理を「信頼関係」に置き換えてみると、
テンプル騎士団も鵯越の逆落としも、納得。

【ウマの理性】
個々のウマの理性は、日々の生活で起こるあらゆる事象に対する、
自分が「納得できる変化」と「納得できない変化」の分別回路のようなものと考えられます。
「納得できる変化」を共感することができたウマとの間に「信頼」
が生まれ、そして共に「納得できない変化」に向き合おうとします。

不安や緊張が続くほど、「理性のかけら」が命綱となります。
理性は「群れの信頼関係」があってはじめて安定します。

コミュニケーションの手段は大切ですが、もっと大切なのは手段(ツール)に依存しない個々の理性。そしてそれを支える相互の「信頼」です。

引用:ホースハーモニー読本(©株式会社葉山ハーモニーガーデン)


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