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たった一日外出しないだけで…

或いは、皆さんにもこういう体験はないだろうか。

たった一日、外出をせずに部屋の中で過ごしただけで
どん底まで気分が落ち込み
しかも、とめどない身体的な不快感まで湧きだしてくる。
これは一体どういうことか…。

最初、私はそれを脱水症状じゃないかと疑って
多めに水を飲んでみたりしたが、改善は見られなかった。
それじゃあ栄養不足かということで、あえて間食を摂ってみたり
単に心の問題かと思ってお気に入りの本を引っ張りだしたりと
色々と試してはみたものの、どうやっても解消されないのである。

結局その不快感は、就寝によって意識が途切れる最後の瞬間まで
まるでしぶとい悪霊かのように、ジリジリと心身を削り続けた。

その翌朝といえば、心なしか普段よりも早い時間に覚醒した。
窓を開け放つと、一日の始まりである新鮮な風と
有無を言わさず世界を照らす、力強い日光が降り注いでくる。
それらを浴びることによって、まだ残っていた前日の不快感も幾分かは
和らいでくれるような心地がした。

「今日こそは出歩こう」
私は支度を済ませて、薄暗い自室を後にした。

通りといえば、早朝特有のひと気の少なさ。
そして朝露の混じる空気の匂いにも、ほのかに哀愁が漂っており心地良い。
そうして歩いている内に、ぽつぽつと人影が見えるようになってきた。
ひきこもり男には縁のない(※筆者)
しかし、たしかに馴染みある光景、通勤、通学の時間らしかった。

自室の窓から辛うじて取込み、浴びるだけの外気。
そんな"一時しのぎ"とはまるで全く
インスタントラーメンと職人手掛ける本場のラーメンくらいの差がある
雲泥の差のそれらを、全身で摂取した。
すると、まるで神聖な火に悪霊が払われるかのように
例の不快感がみるみるうちに浄化されていったのだった。
両足で刻むたかが歩行のリズムさえやけに心地良く感じられ
霧が晴れるかのように憂鬱が消えてゆく。
思考はより明瞭に、そして前向きなものへと変わっていた。

「こんなに単純なことだったのか」
と、私は驚いた。心底驚いた(笑)
例えどれだけ時代が進み、便利なテクノロジーで溢れかえる世界になったところで、私たち人間という存在の由来、根本が「自然」であることは
どうやっても逃れられない真理だということはこれまで念入りに学んできた
筈だったのだが…。
そんな単純なことであるほど、現代を生きているとついつい忘れてしまう。

ためしに一度、自分の胸に手を当ててみて欲しい。
手のひらを伝い、絶え間なく鼓動する、命のリズムが感じられると思う。
それは、私たちが生物であることの証明。
そしてそこには「社会」も「テクノロジー」も「お金」も関係のない。
たしかな重みと真実がある。

ということで、人間として大事なものを失わない為にも
今後は出不精に気を付けます(笑)

このサポートという機能を使い、所謂"投げ銭"が行えるようです。「あり得ないお金の使い方をしてみたい!」という物好きな方にオススメです(笑)