捨てられた椅子に座るシリーズ写真展
クリエイター、俳優のスミマサノリさんによる、とても面白い企画の写真展。
間もなく閉館となる「IID 世田谷ものづくり学校」で本日まで開催されており、最終日に駆け込みで観に行くことができた。
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スミさんが2017年6月1日に、酔っ払って友人に撮影してもらったのがきっかけで始まった「捨てられた椅子に座る」というシリーズ。
5年間で1,000脚、捨てられた椅子に座り続け、座った瞬間を写真に収めてきた。最近でこそ自前の三脚で自撮りするようになったそうだが、初期は、道行く人たちにiPhoneを渡し撮影をお願いしていたそう。
僕が写真展を訪ねたとき、スミさんもいらっしゃっていて。「ほとんどの椅子がまだ使えるんですよ」とおっしゃっていたことが興味深かった。(僕が15年間使っていたソファを捨てたばかりだ、という話を受けて)
繰り返しになるが、1,000脚の椅子の共通点は「捨てられた」ということだけ。そこにあえて光を当てることで、「捨てられた」ということがどういうことを示唆するから不思議だ。
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この写真展で思い出したのが、レオ・レオーニさんの絵本『アレクサンダとぜんまいねずみ』だ。
本物のねずみであるアレクサンダと、おもちゃのぜんまいねずみの交流を描く物語。アレクサンダは「やっかいなもの」として人間に追いやられるが、ぜんまいねずみは持ち主の子どもに可愛がられる。しかし持ち主が新しいオモチャを手に入れると、ぜんまいねずみは捨てられる運命に……。なんやかんやを経て、ぜんまいねずみは本物のねずみに変化し、ふたりは晴れて友達になれるという話だ。
しかしながら、現実はフィクションではない。
捨てられた椅子は、廃棄物として処理されてしまう。まだ使える(スミさんは「座れる」と言っていた)ものがあるにも関わらず。
模様替え、引っ越し、店じまい、椅子の買い替え……
捨てられる原因はたくさんあるが、写真にうつる捨てられた椅子は、「捨てられた」という運命を受け入れているように見えた。
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スミさんは、写真展の最中も、捨てられた椅子に座り続けている。
その行為が「おもしろい」と捉えられるのも、なんだか不思議な話のようにも思える。SDGsとか、倫理観とか、そういった規範意識のようなものから一線を画するようなスタンス。
嫉妬するような良い企画だと、僕は感じた。(椅子だけに)
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