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35歳にして日商簿記を勉強したら面白かった

ひょんなことから、日商簿記3級の資格取得を目指し、9月からスクールに通い始めている。(全15回、先週金曜日にようやく6回目を終えた)

「物語り」に関心があると吹聴していることもあり、簿記を学ぶ中で出てくる独特な用語の面白さに痺れている。マーケティングで3C、4Pなんてもはや常識だが、同じように企業経理の皆さんも経理界隈における共通言語が存在している。毎日あるいは毎時間、企業の数字に向き合っているから、そのことは考えてみれば当然のことだ。長い長い時間をかけて洗練されてきた簿記のルールは、社会人13年目にして初めて腹落ちすることも多く、このタイミングで簿記を学べて良かったと素直に思える。

まだ簿記を学び始めて日が浅いので、1ヶ月足らずで得た内容のアウトプットであることをご容赦いただきたいが、簿記で使われる言葉で面白かったものを三つほど挙げたい。

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その1。
貸借対照表と損益計算書について

簿記には大きく二つの内容を記録していく。ストックとフローだ。

・ストック(いまどんな状態であるか)
・フロー(どんな活動を行なったか)

であり、前者は貸借対照表で、後者は損益計算書で管理される。ここまでは僕も知っていたが、もう一つ深掘りすると、なかなか興味深い。TAC簿記検定講座 『合格テキスト 日商簿記3級 Ver.10.0 (よくわかる簿記シリーズ)』P5より引用する(太字は私です)。

企業は、財政状態を明らかにするために貸借対照表(Balance Sheet:B/S)という報告書を作成します。貸借対照表には、現金や預金の現在の残高、所有する建物などの現在の価値、借金の有無、元手などを記載します。
企業は、経営成績を明らかにするために損益計算書(Profit and Loss Statement:P/L)という報告書を作成します。損益計算書には、企業活動によって行われた収入や支出の内容などを記載します。

太字で書いたところに注目してほしいのだが、「財政」「経営成績」という言葉を僕はこれまで意識して使い分けたことがなかった。財政状態とは文字通り「財産の状態」のことで、貸借対照表に記載されている「資産」「負債」「資本」といったそれぞれの財産の多寡を可視化するもの。体重の増減に一喜一憂するのがPLだとしたら、その瞬間の健康状態を明示してくれるのがBSである。BSをイマイチ掴めていなかったけれど、これなら仲良くなれそうな気がする。

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その2。
現金とは何か

「現金はそりゃ現金だろ!」という感じですが、資産には「現金」「小口現金」「当座預金」「普通預金」「定期預金」「受取手形」「売掛金」「クレジット売掛金」「電子記録債権」など、ありとあらゆる資産(の科目)がある。講師曰く資産=後で代金を受け取る権利(逆に負債とは後で支払う義務)のことで、その権利の在り方がめちゃくちゃ存在しているというのが僕の解釈だ。

そこで「現金とは何か」に戻るのだが、簿記において現金とは、①通貨(硬貨と紙幣)、②通貨代用証券(他人振出小切手など)など、範囲が厳密に定められている。考えてみればビジネスシーンにおいて現金を直接取り扱うシチュエーションは稀だ。僕たちは会社の普通預金 / 当座預金にある現金を預け入れたり、引き出したりしている。

極端なことを言うと「あと5秒で現金がないと(現金を対面の相手に引き渡さないと)会社は潰れます」と言われたときに、預金として存在している現金は効果を為さない。資産の全てが即、現金として活用できるかと言ったらそうではないのだ。

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その3。
修繕と改良について

(これで最後です。個人的には、これがとてもヒットしたので、さらっとでも読み進んでいただきたく)

1. 修繕とは
建物などの有形固定資産は使用していくうえで、修理や保守を必要とします。有形固定資産の現状を回復する(現状を維持する)ことを修繕といい、その支出額は修繕費勘定(費用)の借方に記入します。なお、この支出を収益的支出といいます。

2. 改良とは
建物の増築や改築を行うなど、有形固定資産の価値の増加や使用可能年数が延長されるような支出をしたときは、有形固定資産の帳簿上の価額に加算します。なお、このような支出を資本的支出といいます。
TAC簿記検定講座 『合格テキスト 日商簿記3級 Ver.10.0 (よくわかる簿記シリーズ)』P112より引用

ざっくり説明すると、修繕はあくまで費用(コスト)と見なされ、改良は資産増加に寄与するという考え方だ。日商簿記3級では両者の税務上の取り扱いについては触れられないので、浅い知識に留まっていることは否めない。でも、何だか「優しい」響きを感じませんか?

年齢を重ねていくと、僕という人間の社会的価値は、思ったよりも楽観的に伸びていかないことを実感するようになる。もちろん日々の仕事を通じて経験値を積んでいくわけだが、過去疎かにしてきた抜け漏れを「修繕」していくので精一杯なときがある。でも見方を変えれば、僕がキャッチアップしているものは全て「改良」であると捉えることもできる。

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「それって言葉遊びでしょ?」と言われたら「その通りです」と答えるしかない。

だけど、単なる言葉遊びかもしれないが、言葉が、いかに機能するか / 機能しないかが成否を分けることも現実では少なくないはずだ。

簿記のように今まで身近でなかった世界には、新しく学べる物事の余白がとても多い。言葉を扱う一人の人間として、ケースバイケースで適切な言葉を選べるよう、資格取得を目標にしつつも研鑽を積んでいければと思うのだ。


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