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1日で50年歳をとる海辺に放置されたら(映画「オールド」を観て)

どんどん若手の映画監督が出現する2020年代、「シックス・センス」や「サイン」、「スプリット」などを手掛けたM・ナイト・シャマランはどんな作品を生み出すのか。

2020年代における1作目は、スリラー感が抑制された設定もの。1日で50年歳をとる海辺でいかにサバイバルするかというフィクションだ。

「オールド」
(監督:M・ナイト・シャマラン、2021年)

──

M・ナイト・シャマラン監督の作品は、どれも「怖さ」がある。目に見える怖さもあれば、怖さを間接的に感じさせるものもある。昨年上映された最新作「ノック 終末の訪問者」は、どちらかといえば目に見える怖さを散りばめた作品といえるだろう。

そういった意味で、「オールド」において直接的な怖さはあまりない。1日で50年歳をとるなら、急速に老いて死に至るわけだけど、死への切実さはあまり感じられないのだ。「こんな場所にいたくない」と一念発起して海辺から逃げ出そうとする人間たちの死は、そこまで残酷に描写されない。ともすればそれは味気ないものと映るだろう。(で、その反動で「ノック 終末の訪問者」はわりと直接的な恐怖を描いたのかもしれない)

孤立した海辺。なぜかそこは時の流れが速くて、誰もが急速に老いてしまう。(なぜ、そういう超常現象が起こるのかは描かれない……し、エンディングにおいてその海辺はどのように処理されるのかも分からない)

それでも面白さを感じるのは、「if」の要素があるからだろう。もし自分が、1日で50年歳をとる海辺に放置されたらどうするだろうか、と。

都知事選の直後にみたので、勝手に設定をメタファーのように捉えてしまうのは悪い癖だ。「どこにも逃げられない」。その裏には、陰謀論的世界が暗躍している。飛躍した解釈は僕の悪い癖だけど、M・ナイト・シャマラン監督もまた、悪い冗談を描いているように思う。

本作を見ても、どこにも飛び出すことはできない。2021年、パンデミック禍における世界の閉塞感を示しているようにも思えるが、これもまた飛躍した解釈だろう。

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