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上田慎一郎さんによる映画「シン・エヴァ」のネタバレ考察会が凄まじかった。

3月13日23時頃から、「カメラを止めるな!」の上田慎一郎さんによる、映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||(以下「シン・エヴァ」)」考察会がYouTubeでライブ配信されていた。

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考察に関するライブ配信は珍しくはない。だけど僕はカルチャー全般の情報リテラシーが低いこともあり、なかなかライブで情報を得るに至らず、毎度悔しい思いをしてきた。

今回は、配信の情報を事前に入手したこと、たまたま同日にシン・エヴァを観たことが重なり、やや遅い時間ではあったがライブで視聴することにした。(言うまでもなく、僕は映画「カメラを止めるな!」のファンでもある)

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実際どんなことが語られていたかは実際に動画を観ていただくことにして。

ホストの上田さんは、映画監督という立場で、映画監督・庵野秀明さんの制作意図などを細かく推察されていた。途中から熱が入り、ご自身の映画制作での葛藤、とりわけ「カメラを止めるな!」のスマッシュヒットからの苦悩についても赤裸々に語られており、思わず上田さんの独り語りに聴き入ってしまった。

なるほど確かに、テレビシリーズが放送された1995年から数えて、実に25年近くの歳月を経ている。四半世紀の間、これほど熱狂的なファンを抱えながら「エヴァ」を制作し続ける / 関わり続けるというのは、想像を遥かに超えるほどのプレッシャーだっただろう。

そういった「作り手」としての視点は、(恥ずかしながらというべきか)僕は持てていなかったので、エンタメを楽しむ視聴者の立場を超えて考察 / 思いを聴けるというのは非常に価値があった。

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続いては、上田さんの友人であり、映画監督も務める松本純弥さんの考察。「こんな良い話の後で何を喋れば良いのか」と謙遜していたが、登場人物の心情変化や、カット割りの演出(何を語り、何を語らないかなど)、シン・エヴァ以前の放送との絡みなど、ディテールを深く掘り下げての考察は、言葉を失うほどに力強いものだった。

なお、このライブ配信までの間(公開から6日)で、松本さんはシン・エヴァを6回も鑑賞したらしい。「なぜ⚪︎⚪︎は〜〜だったのだろう」といったテーマを持ちながら鑑賞されていたようで、コアファンとして、作り手としての熱量の半端なさが伝わってくる。

誰かがコメントで「エビデンスを積み上げながらの考察が凄すぎる」というようなことを書いていたが、まさに。松本さんのような姿勢で映画を観るのはそれはそれで大変ではあるが、作り手と受け手が濃厚なコミュニケーションを交わしながら文化というものは醸成されていくものだという、何というか、ファクトを目撃したような感覚に陥った。

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余談だが、ネタバレということを意識したのは、僕はお笑いの賞レースだったような気がする。(M-1グランプリとか)

2010年辺りのことで、何らかの事情でリアルタイムでM-1グランプリを観戦できなかった人が、Yahoo!ニュースやSNSを閲覧したことで結果が分かってしまうという悲劇が「ネタバレ」を象徴していたもののように思う。

ただ、その時代のことをよく思い出してみると、ネタバレとは自衛するものという認識だったように思う。つまりネタバレされたくない人にとって、そのコンテンツに対する熱量はものすごく高くて。なので「つい」覗いてしまう類のインターネットコンテンツは、一切観ないという自衛を施し、何とか結果を知らない状態でコンテンツに触れるというのが一般的だったような。

ただシン・エヴァに関しては、観覧した人がわりと過剰にネタバレを「気にする」ような傾向があったように思う。「どうすればネタバレにならないようにできるだろう」ということを考えていて、それは当然のことながらフォロワーをはじめ周囲への配慮ということだ。(僕は遭遇したことはないが、ネタバレを過剰に嫌う人たちもいるようで、感想をつぶやいただけで糾弾されるということもあるそうだ)

ネタバレされたくない側が自衛する。

それが時を経て、ネタバレされたくない側じゃない側が気を遣うようになった。

というのは若干論理の飛躍かもしれないが、うーん、インターネットという自由な言論空間(という建前)の中で、発信する側が躊躇を強いられるのはややもったいないような気もしている。同調圧力というほどではないのかもしれないけれど、「少なくとも公開初日に感想をツイートするなんて野暮なこと、まさかしないよね?」みたいな空気感は、ちょっとした我慢でストレスのある状態を作ってしまわないだろうか。

それがもちろん、「ネタバレしようぜ」という前提の中のコミュニティで熱いトークが繰り広げられて、結果として熱狂的な盛り上がりに繋がっているのかもしれない。

ただ僕は、もうちょっとカジュアルな盛り上がりを能動的に演じていたいと思うのだ。

僕は幸か不幸か、それなりに周囲に配慮するような「大人」になってしまった。なので、SNSで「シン・エヴァ観た!最高だった!」以外のツイートは憚られるし、同じように鑑賞した人のツイートに対しては「いいね!」するくらいのリアクションしかすることができない。

それが少々もどかしい。もっと「あのシーンどうでした?」とか「あの台詞って、どういう意図があると思いますか?」とか、そういうことをオープンな場でも絡みながら、会話を楽しんでいきたいなあと思ったのです。

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なお、庵野秀明さんは3/22(月)にNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演されるそうで。

これを過ぎたら、周囲に配慮せず、感想を自由に発信していけたらと。線引きはとても難しいが、何らか良い答え(塩梅)が見つかると良いなあと思っている。

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