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ジェンダー代名詞 / プロナウンのこと。

文章を書く上で、悩んでいることがある。代名詞に関することだ。

例えば、

「鈴木一郎さんが犬の散歩に出掛けました。散歩中、は何かを探している山田花子さんを見掛けました。『何をしているんですか?』と声を掛けると、彼女は『ピアスを落としてしまったんです』と答えました。しばらく探していると、ピアスは花壇の中に落ちていました。彼女はとても喜び、にお礼の気持ちを伝えました」

という文章があったとする。

こういうときに代名詞を使うことは一般的だ。繰り返し人名を使用すると、文章が冗長になってしまうからだ。

そして「どの代名詞を使うのか」という視点においては、「鈴木一郎さん=彼」「山田花子=彼女」と当てはめるのが当然とされている。男性は彼であり、女性は彼女である。

だが、本当にそれで良いのだろうか。

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海外では、プロフィールやメール署名欄などに、「自らの代名詞」を記載する人が増えているそうだ。内容や意図は、以下の記事に詳しくまとめられているのでぜひ読んでみてほしい。

性自認・性表現について、

・女性の場合:「she/her」
・男性の場合:「he/him」
・女性・男性という枠組みに当てはまらないノンバイナリーの場合:「they/them」

と使い分けるそうだ。theyは三人称複数形と習ったが、相手がノンバイナリーの場合や、ジェンダーが不明な場合はtheyを三人称単数形として取り扱うことがあるらしい。

昨年、宇多田ヒカルさんは、自身のジェンダーについて「女でも男でもないノンバイナリーだ」と話した。Twitterでも、ジェンダーに関する小粋な言及も見られている。

(宇多田ヒカルさんのInstagram。名前の後に「she / they」と表記されている)

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翻って、自分の表現について。

そもそも、性自認・性表現についてオープンにする必要はない。オープンにしても良いし、しなくても良い。どんなジェンダーであっても受容するのが、多様な社会の在り方でもある。

といったときに、相手の性自認・性表現を理解していない状態で、いままで通りの感覚で代名詞を使い続けても良いのだろうか。「宇多田ヒカルさんってかっこいいよね。彼女の『traveling』って初期の曲は最高だよ!」なんて会話はどこにでもあるけれど、本当に宇多田ヒカルさんのことを「彼女」としても良いのだろうか。(上記のツイートの通り、宇多田さんは『「she」でも「they」でもどちらでも良い』とツイートしているが)

はっきりいって、他人の正確な性自認・性表現について、僕はなにひとつ知らない。いつも身近にいる妻でさえ、本当に「she」として良いのか、いまいち自信を持てない。たぶん「she」だろう。でも、こんな話をいままで一度もしたことはない。

セリーヌ・シアマ監督の映画「燃ゆる女の肖像」では、主人公の女性ふたり(マリアンヌとエロイーズ)が愛し合うシーンが描かれている。やがてエロイーズは男性と見合い結婚をし、子どもを授かることになる。エロイーズが同性愛者なのかどうかは作品では描かれていない。だが、もしかしたらエロイーズは、自らのジェンダーを押し殺して結婚生活を送っているのかもしれない。……そういったことが、世の中には多々存在しているのだ。

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いまのところ、この件に関して結論は出ていない。

テキストを書く上で、どうしても「彼」「彼女」「男性」「女性」などという言葉を使うときはあるのだけど、ものすごく葛藤している。

どうすれば良いんだろう、分からない。

すぐに分かる話でもないし、分かったフリをする話でもないのだろう。ケース・バイ・ケースだというのであれば、どのケースがOKでどのケースがNGなのかを見極めたい。

その葛藤は、いずれ僕の文章に活きてくるはず。そのように、僕は信じたい。

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