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痒い所に手が届く。 そんなプロダクトが大好きだ。

これ、とっても可愛くないですか?

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Mosocoはポータブルミニ乾燥機で、30分程度で乾燥+雑菌除去ができるプロダクトだ。iPhoneサイズで、390gという軽量感。旅行や帰省などで何かと重宝しそうなアイテムだ。

「グリーン」「グレー」「コーラルオレンジ」という、カラーバリエーションのセンスも良い。サイトで使われている緑のアイキャッチ・デザインがクールで、つい購買欲をそそられる。

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プロダクトの有用性はもちろんだが、使用シーンがものすごく具体化されている点が何より素晴らしい。例えば「下着を吊り干しするのが恥ずかしい」というのは、思いつきそうで思いつかない、旅行や帰省時の「あるある」だろう。

昨今リモートワークがトレンドになる中で、「社員間のコミュニケーションが円滑になります」「リモートの業務効率が●%アップします」といった抽象度の高い宣伝文句が飛び交っている。

僕は男性かつガサツな性格ということもあり、特に自分の下着がどこで干されようと(妻の実家であろうと)気にすることは全くない。自宅でない場所に滞在する以上、文字通り「お世話になる」ことってあるよね、くらいの感覚で臨みがちだ。

だけどこれが女性だったり、やや繊細な性格の方だったりすると、事情は異なるらしい。義両親の住む実家で自らの下着を洗濯するのは、なかなか勇気が要ることらしい。(良し悪しということでなく)

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ZOOMのブームも、コロナ禍や機能性のみで捉えるのは不十分かもしれない。

良く言われることだが、カメラエフェクト提供ツール「Snap Camera」が流行に一役買っているというのは多くの人が肯ける事実だろう。

同じ空間で同僚と仕事をしていないのであれば「化粧したくない」と考える女性が、実は多かったのだ。(繰り返しだが、そのことの良し悪しを論ずるつもりはない)

僕は恥ずかしながら、Snap Cameraがこのような需要を取り組んでいるものだとは思いもしなかった(単純にネタツールだと思っていた)。

まるでマーケットが見れていなかったのだ。

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ここまで述べてきたことは、実業家・折口雅博さんが提唱したセンターピン理論と通ずる点が多少あるようにも思える。

しかしながら、僕はMosocoやZOOMの事例の捉え方と、センターピン理論は似て非なる文脈に基づいているものだと直感している。

「デリケートな洗濯物を乾かすのに困る」→「解決するソリューションはこれ!」という流れを作り社会から認知されたとしても、Mosocoの成功に直接繋がりはしないだろう。

上記は「痒い所に手が届く」的な部分だし、会社によっては、企画者や開発者が「気まぐれで考え(作)っちゃった」みたいな部分かもしれない。

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だが逆に、この部分を疎かにすると痛い目をみるだろう。痒い所に手が届かないような「惜しい」サービスやプロダクトが、世の中には多すぎる。その「惜しさ」ゆえに、その商品のことを好きになれずに終わってしまうのだ。

グラフィックデザイナー・佐藤卓さんが手掛けた商品に「クールミントガム」がある。

佐藤さんはパッケージデザインを考案した。

もともと1羽だったペンギンを5羽に増やし、クスリと笑えるストーリーをデザインに配している。

人に伝えたくなるし、商品に対して、つい愛着を持ってしまう。

また、1羽だったペンギンが5羽になって、しかも右から2番目のペンギンだけ、手を挙げています。「1羽だと少し寂しいので、面積の空き具合を見ながら大きさを調節して、最終的に行き着いたのが5羽でした」。さらに、前のパッケージには、ペンギンの背景に、小さな潮吹き鯨が描かれていました。気づいた人がこっそり喜びそうな、口元に笑みを浮かべそうな、ささやかな仕込みとも言えるもの。その精神を生かしたデザインにしようと試みたのです。
「5羽のペンギンたちが、会社組織の人たちに見えてきて、この列の中で一番大変な目に遭っているのは誰かと考えました」。答えは2番手のペンギン。先頭にいる社長からは叱られるし、後ろにいる部下からは愚痴られる。難儀をしている2番目が「社長、そんなに早く歩かれては、誰もついていけません!」と言っている――パッケージ全体が少しユーモラスに見えるのは、このストーリーが潜んでいるからかも。
(朝日新聞デジタル&w「<29>佐藤卓さん 「クールミントガム」と「デザイン」を結ぶ思考」より引用)

センターピン理論は有効だし、何がサービスのコアで成功決定要因なのかを考えるのは必須だ。だが、それだけを設定したとしても、ヒットには繋がらない。

数多くのプロダクトやサービスが氾濫する情報社会の中で「どうすれば人は動くのか」を考え抜くこと。それこそが企画と言える。

よく目を凝らせば、色々なところにアイデアが落ちている。情報感度を高めて、未来を生きるヒントをしっかりと掬い上げていきたい。


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