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天文・宇宙に関する曲紹介「ALMA(Acidman)」

2019年4月10日、おとめ座の方向にある銀河M87の巨大ブラックホールの影(ブラックホール・シャドウ)を直接撮影することに成功した、というニュースが発表された。
この影を撮影したのは、世界中の8つの電波望遠鏡を使って地球サイズの望遠鏡を擬似的に作り出す、イベント・ホライズン・テレスコープ(通称EHT)というプロジェクト。
ついにブラックホールの影が撮影されたというニュースは、当時大きな話題を呼んだ。

この国際的プロジェクトEHTに参加していたのが、日本のアルマ望遠鏡
アルマ望遠鏡は東アジア・北米・ヨーロッパ・チリなどの諸国が協力して建設された電波望遠鏡で、EHTで使われた8つの望遠鏡のうちの一つ。
世界で最も乾燥した場所の一つといわれるチリの標高5000mに建設され、惑星誕生の秘密や地球外生命体の可能性を探るなど日々活躍し、科学観測を開始してから今年でちょうど10年となる。

そんなアルマ望遠鏡、実はこの望遠鏡をテーマにして作られた楽曲があることをご存知だろうか。
今回ご紹介するのは、そんな宇宙の壮大さを感じることができるこちらの曲。


ALMA - Acidman

曲のタイトルALMA(アルマ)というのは、その名の通りアルマ望遠鏡からの引用。

この曲の作詞作曲を務めたボーカル大木氏は当初、満天の星空をイメージした曲を作っており、最初はアルマ望遠鏡とは全く関係ないものだった。
制作途中でふと、当時建設中だったアルマ望遠鏡のことを思い出し、ALMAの意味(スペイン語で「魂」「心」「愛しい人」)を調べていくうちに曲の内容とマッチしていきそのまま曲名として引用されたそう。

曲中に何度も登場する「(星に)僕らは手を伸ばす」というフレーズ。
人間の身体を構成している窒素や炭素などの元素は、星の中心部で起こる核融合反応によって作り出されたもの。
星に手を伸ばすという行為は、突き詰めていくと自分の起源に触れようとする行為と等しい。
我々はどこからきたのか、我々は何者なのか、我々はどこへ行くのか。

これを知ろうとするのは人間の本質であり、その答えは望遠鏡を向けた先にある。
それは何億年もの果てしない旅で、これを読んでいる我々が生きている間に出るような答えじゃないのかもしれないけれど、それでも手を伸ばす。
BUMP OF CHICKENは見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んだが、Acidmanは知らないことを知ろうとして望遠鏡を覗き込んでいた。


そしてこの曲のPVでは、ボーカル大木氏がアルマ望遠鏡のあるチリや、美しい星空を堪能できるボリビアを実際に訪れた映像が使われている。
アタカマ砂漠を歩き、ボリビアのウユニ塩湖でギターを触り、パラボラアンテナの前で演奏するという、他のミュージシャンでは考えられないようなスケールの大きすぎる映像。
現地で勤務していた職員らも、「ALMAという曲を出すミュージシャンがいる!」「PV撮影のために現地までやって来る!」と当時は驚いたそう。(日本から飛行機で30時間以上かかる)

さらにこの曲はシングルとして発表されたものの、その2ヶ月後に発売された8thアルバムのタイトルにも抜擢された。
これはPV撮影でアルマ望遠鏡の元を訪れた際に、望遠鏡を間近で見た感動、ALMAという言葉の美しさなどを大きく感じた上での抜擢だったそう。
アルバムの曲たちはALMAを中心に制作され、「心」や「魂」などを感じるフレーズが散りばめられている。興味がある方はアルバムを通して聴いてみるのもいいかもしれない。


最後に、Acidmanは主に作詞を手掛ける大木氏が薬剤師免許を持っていることから、化学をテーマにした楽曲が多いことで有名。
他にも星や宇宙をテーマにした曲が多数あるので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

(画像提供:国立天文台

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