杉並区長交代1年半の「変化」を振り返る
岸本聡子杉並区長の就任(2022年7月11日)から1年半を迎えました。
人口57万都市における首長選挙の当落がわずか187票差であったことに加え、本年4月の区議選においても議会の男女比が逆転する(男性の当選者が半数を下回る)など、注目が集まりました。
しかし、選挙結果など外形的な変化について注目が集まる一方で、区長公約の進捗状況や政策施策面における実質的な変化については、断片的に注目が集まったのみでした。
区が毎年実施している区民意向調査を確認しても「区の情報の伝達度」は区長に対する注目ほど上昇していない(むしろ低下している)状況がわかります。
区長公約(さとこビジョン)といっても、実際に進展しているものもあれば、思うようには進展していないもの、早々に公約が反故にされているもの(一部児童館の廃止、学童クラブの民間委託など)が出ています。これらもあまり知られていないようです。
そこで、区長公約(さとこビジョン)に関連する事項について、区長交代後どのような動きが顕在化したか、この1年半を振り返っておきましょう。
なお、今回は、この年末年始に「区長交代1年半の変化」について共有する趣旨から、区長公約に関する動きについて順に紹介するもので、今後の展望など個別の評価については原則として稿を改めることとします。
杉並区長交代1年半の「変化」を振り返る
⏰ 2022年7月
7月11日、区長就任
これまで行われていなかった区長公務日程の公表を開始(毎日事後公表)
区長、副区長及び教育長の専用車を廃止
(公務で必要な場合は共用車を使用)区長の出勤及び退勤後の移動は、原則として自転車又は公共交通機関に
(本庁舎に区長の自転車駐輪スペースが設けられる)前区長時代に作成された「杉並区まちづくり基本方針・都市計画マスタープラン(改定骨子案)」の見直しを決定
⏰ 2022年9月
区長と区民の対話集会/対話を大切にしたまちづくりを開始(聴っくオフ・ミーティング、さとことブレストなど)
区長退職手当の半減を提案(10月議会で可決/賛成38・反対7)
都市計画道路のうち前区長時代に既に事業化されている補助132号線(西荻北)・補助221号(高円寺北1丁目)については事業継続を表明
🌾区長選の際「反対意見が強くある場合は計画を凍結」と述べていたことで注目されていたもの
⏰ 2022年10月
区長就任後、初となる補正予算が成立。後述する杉並区生活応援臨時給付金その他の物価高騰対策など盛り込む(賛成39・反対7)
⏰ 2022年11月
下高井戸児童館の廃止を提案
🌾区長選では廃止が続いている児童館について「以前と同じ数に戻す」と主張していたものの、そのまま廃止を決定(12月議会で可決:賛成34・反対11)
杉並区ハラスメントゼロ宣言(ハラスメントゼロをめざす宣言)を行う
杉並区生活応援臨時給付金支給手続開始
🌾国都を通じて受ける臨時交付金を活用し、住民税非課税世帯だけでなく、住民税均等割のみ課税世帯に対しても区独自に5万円を給付
⏰ 2022年12月
パートナーシップ制度(骨子案)などを公表/パブリックコメント開始
🌾この段階では区長公約どおり事実婚を含む制度となっていました
⏰ 2023年1月
計画事業の一部休止(見直しのため一旦休止)を決定
🌾主要な行政計画(区長交代前の4月に動き出していた行政計画)を当初予算編成にあわせて一部修正
⏰ 2023年2月
令和5年度当初予算を提案
🌾区長公約に関連した新規事業・取組として、気候区民会議の検討、太陽光発電舗装システム(路面太陽光発電)の試験導入、ヤングケアラー対策(実態調査の実施)、子どもの権利条例の検討、就学援助対象者の拡大、高齢者補聴器購入費助成などの新規事業を新たに盛り込む(3月議会で可決)
区長交代後、懸案となっていた情報公開・情報公表・情報提供の改善が少しずつ始まる
⏰ 2023年3月
令和5年度予算成立(一般会計は賛成33・反対13)
手話言語条例成立(議会提案:全会一致)
パートナーシップ制度の導入を含む「性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例」成立(賛成29・反対14)
杉並区まちづくり基本方針・都市計画マスタープランを改定
🌾前区政時代に作成されていた骨子案を見直したもの(都市計画審議会可決:賛成9・反対7)補正予算(第10号)を区長が専決処分
🌾補正予算(第9号)への計上漏れに加え、予備費を安易に使い込んでいたため、支出できなくなった事実が発覚
前区長時代の2018年新規開設されたビーチコート(ビーチバレー場)の検証結果を公表
⏰ 2023年4月
パートナーシップ制度開始(事実婚は制度の対象外に)
杉並区立杉並芸術会館「芸術監督」の公募を開始
ジェンダー平等を推進中の区長が在任している中、杉並区議会議員選挙において男性の当選者が半数を下回る結果に
⏰ 2023年5月
戦前戦後を含めた杉並区議会における最長在任議長が女性になる(井口かづ子議員が議長に就任。通算5年目)
杉並区長と杉並区議会議長の双方が女性になったのも初
ゆうゆう天沼館の廃止、天沼区民集会所の廃止などを提案
🌾区長選では「ゆうゆう館の廃止をストップ」などと主張していたものの、そのまま廃止を決定(6月の議会では区民生活委員会で否決されるも本会議可決)
⏰ 2023年6月
常勤・代表監査委員が交代(議会同意:賛成45・反対2)
「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の実施延期を求める意見書」を政府に提出することを決定(議会可決:賛成25・反対22)
⏰ 2023年7月
杉並芸術会館「芸術監督」交代(公募による初の交代/74名が応募)
⏰ 2023年9月
「指定管理者制度の検証報告書」を公表
🌾指定管理者制度(公の施設の管理運営に係る民営化手法の一つ)の活用を今後も継続する方針を明確化/公園条例の改正を提案
🌾指定管理者制度を新たに導入する施設を提案(荻外荘公園・角川庭園/10月議会で可決)「区立施設再編整備計画の検証報告書」を公表
🌾計画策定プロセスの抜本的な見直しを前提としつつ、施設再編整備の必要性を明確化
区立学校における学校給食費の無償化を提案
🌾決算剰余金を活用して10月からの実施を提案(9月議会で補正予算可決:賛成28・反対17)
⏰ 2023年10月
杉並区議会における前年度決算の審査が終了
🌾一般会計の決算認定は賛成26・反対21来年度当初予算編成に向けて区民参加型予算(区民投票)をモデル実施
杉並区中小企業光熱費高騰緊急対策助成金の支給手続を開始
🌾国都を通じて受ける臨時交付金を活用し、中小事業者に対して2023年度上半期分の光熱費の一部を助成するもの。当初受付は12月が締切でしたが、申請が伸びず、その後2024年2月まで申請期間が延長されています。
⏰ 2023年11月
杉並区総合計画・実行計画等の本格改定に向けたパブリックコメント実施(当初予定より1年前倒し改定へ/現在改定作業中)
自転車用ヘルメット購入助成の開始
阿佐谷南児童館の廃止を提案(12月議会で可決)
指定管理者制度が導入されている「永福図書館・コミュニティふらっと永福」の指定更新を提案(12月議会で可決)
国の住宅セーフティネット制度に基づく家賃低廉化補助制度の導入/住宅確保要配慮者に対するセーフティネット専用住宅3戸の家賃補助を提案(12月議会で補正予算可決)
区長給与・議員報酬の引上げを提案(12月議会で否決)
⏰ 2023年12月
男女共同参画担当課長(区幹部職員/管理職)の公募を開始
省エネ家電買替促進助成事業を提案(国都を通じて受ける臨時交付金を活用したもの/12月議会で補正予算可決)
太陽光発電舗装システム/路面太陽光発電の試験導入開始(自治体庁舎での導入は初)
区長公約「さとこビジョン」に関連して具体的に動きのあったものを(時系列に沿って)ご紹介しました。
特に具体的な動きのないもの(例えば、南北バス「すぎ丸」の運賃無償化など)については言及していません。
岸本区長の任期は残り2年半。次回は、岸本区長の選挙公報に記載されていた「選挙公約の現状」についてご紹介する予定です。
本年もお世話になりました。
一身独立した無所属の議員として、2024年も誰にも媚びず日和らず職責を果たしていきます。来年もよろしくお願いいたします。
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