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女性議員数>男性議員数となった杉並区議会【杉並区議選2023年】

杉並区議会は、男女半々「パリテ」を超えて、女性議員数>男性議員数となりました。杉並区議会議員選挙(2023年4月23日投票)の開票結果です。

個々の結果は、次のページで確認していただくとして、ここでは今回の選挙結果全体を振り返りつつ、今後を展望していきたいと思います。


【1】投票率の上昇(前回比4.19ポイント増)


投票率は43.66%(前回比4.19ポイントの増)となりました。

この数値は、現職区長を破った山田宏区長の初当選1999年の区長選&区議選(42.87%)を上回る数値です。

1999年の杉並区議選といえば、新人16人(女性9人・男性7人)が初当選したほか、当時在任中の議長が落選するなど大波乱となった選挙です。

この投票率が確定した瞬間、翌日開票で数多くの「番狂わせ」が発生することが予見されました。


【2】現職議員12人落選(自民党は16人中7人が落選)


落選者は21人。このうち現職議員が12人と過半数を占めています。

これにより15人の初当選議員が誕生しました(女性12・非公表1・男性2)。

落選した現職議員12人の内訳は、自民党7人、公明党1人、共産党1人、立憲民主党1人、無所属(前回は立憲民主党公認)1人、無所属(前回はNHKから国民を守る党公認)1人です。

杉並区議選は、このところ現職議員が各回5~6人落選していましたが、ついに12人と2ケタの大台に乗りました。


【3】顕著に目立つ「前区長を支持していた現職議員の落選」


自民党公認候補は16人全員が現職議員でした。

自民党議員は議会内で4会派に分裂していましたので少々わかりにくいと思いますが、その一つである前区長支持を明確にしていた自民党系会派(6人)は、4人が落選する壊滅的な事態となっています。

また、落選した公明党1人、立憲民主党1人、無所属(前回は立憲民主党公認)1人も、過去の杉並区長選において前区長を応援されていた議員です。

引き続き前区長を支持していた議員、前区長と縁の深かった議員が相次いで落選する結果となりました。

落選した現職議員12人の内訳は、①2022年区長選で前区長を支持した議員が7人、②現区長を支持した議員が1人、③他の区長候補を支持した議員が1人、④それ以外の議員が3人となっています。

【4】自民党は依然として比較第一党


議会の男女構成比が逆転する特筆すべき選挙結果となったのは事実ですが(男性議員比率68%→47%)、それで議会の勢力図が変わったとまでは言えません。

自民党は依然として「比較第一党」です。議会内会派に無所属議員を入れることを含めて対応し「第一会派」の維持を図るでしょう。

杉並区議会議員選挙(2023年)当選者の所属政党


【5】第三極勢力の伸長/自民党の大量落選・減少分の多くは区長推薦候補の議席にはならなかった


前回の杉並区議会議員選挙(2019年)の結果と比較すると、各党議席の増減は次のようになります。

・自民党 -7
・公明党 -1
・共産党 ±0
・立憲民主党 +1
・日本維新の会 +1
・都民ファーストの会 +2
・参政党 +1
・れいわ新選組 +1
・緑の党グリーンズジャパン +1(区長推薦候補)
・無所属 +1(2022年補選時は自由を守る会推薦)

自民党が激減し、公明党もまさかの落選者を出しましたが、その減少分(7議席)の多くは区長推薦が出ていない非推薦候補の議席となっています。

いわゆる「第三極勢力の伸張」です。

投票率の上昇で増加した2万票が全て区長推薦候補に流れたかのような見方の当事者コメントが報道されていましたが、それは説得力のない話です。

【6】各党の得票数(2019年との比較)


各党の総得票数(候補者数)を比較すると、次のとおりとなります(2019年→2023年)。

・自民 50,319(19人)→42,259(16人)
・公明 20,568(7人)→18,417(7人)
・共産 20,050(7人)→20,094(7人)
・立民 22,493(5人)→26,347(7人)
・生ネ 8,167(2人)→6,134(2人)
・維新 2,735(1人)→9,793(2人)
・都革 3,275(1人)→2,632(1人)
・N国 2,719(1人)→1,160(1人)
・都フ 0(0人)→10,528(2人)
・れい 0(0人)→5,966(1人)
・参政 0(0人)→3,581(1人)
・緑グ 0(0人)→3,320(1人)
・無  44,045(20人)→49,164(18人)
(その他の党派は比較不可能であるため省略しました)


候補者一人当たり得票数を計算してみると、都民ファーストの会、日本維新の会、れいわ新選組などが突出していることがわかります。

組織力の強さで定評のあった公明党や生活者ネットワークが減少させている一方で、同じ政党でありながら仁義なき個人戦を余儀なくされる自民党候補の一人当たり得票数は、前回とほぼ同じでした。計算してみてください。

確かに自民党にあまり浮動票は入らなかった(第三極勢力などに流れた)のかもしれませんが、基礎票は全く減らしていない印象です。改めてその強さがわかる結果でもあります。

【7】岸本区長の推薦候補は、議会の3割を占めたものの過半数には届いていない


岸本聡子区長の推薦・応援を受けていた当選者は、議会の3割を占めました。

推薦を受けなかったと思われる候補者の中にも岸本区長に近い当選者がいますので、前区長を支持している議員が激減したこととも相まって岸本区長には朗報となったことでしょう。

ただし、それでも過半数には及ばない現状です。首長独裁に陥るような政治状況とはいえない結果となりました。

なお、杉並区議会は、以前から単独会派で過半数を占めることはなく、もともと自民党+公明党でも過半数に届いていない議会です。

杉並区本庁舎の柱巻きサイン


■どうなる?今後の杉並区政


(1)さらに拡大する女性活躍

杉並区議会は、男女半々「パリテ」を超えて、女性議員数>男性議員数となりました。議会の男女構成は大きく変わりました。

これは一過性のブームには終わらないでしょう。

例えば、杉並区議会議長としての在任期間が過去最も長い議員は、通算4年務めた井口かづ子議員です。杉並区には戦後これより長い在任議長はいません(女性の議長は過去3人)。

杉並区は、教育委員会委員も女性が過半数となっています(議会同意人事)。選挙管理委員会委員も男女半々です(議会の選挙で選出)。議会内の委員会の委員長に女性が就任することも特段珍しいことではありません。

いずれも杉並区長の独断で決定できない人事ばかりです。男性議員を含め、これらの人事は圧倒的多数で肯定されてきました。

「なぜ女性議員が半数以上になったのか」と聞かれることがありますが、このような積み重ねがあってのことだと私は受け止めています。

さらに活躍範囲が拡大することで、古い慣習・慣例の見直しも確実に進むことでしょう。悪習・旧弊の撤廃を期待しています。


(2)区長の独断専行が通る可能性はより低くなった

一方で、議会の勢力図が大きく変わらなかったことも事実です。

区長推薦候補は議会全体の約3割で、大阪のように過半数を占めているわけではありません。

確かに自民党は議席を激減させましたが、その空席の多くは区長推薦候補ではなく非推薦の議員が着席する結果となっています。

杉並区長(執行機関)のやりたいことを全てそのまま実現できる状態になったのかといえば、そうではないでしょう。執行機関は議会全体はもちろんのこと、各議員からもより丁寧な説明責任が要請されるようになるはずです。

区長推薦候補の中でも、なんでも区長の全てに賛成ということはなく、場合によっては区長提出議案に反対していた議員も少なくありません。

ここも大阪などとは大きく異なる点です。区長の独断専行が通る可能性は、従来より低くなったといえます。

(3)「年間持ち時間制限」を導入しようと画策した前区長派の野望も遠のいた


杉並区議会では任期満了に当たって次期議会への申し送りを取りまとめる慣例があります。議会改革の課題などを箇条書きで取りまとめておくことで、次の任期を担う議員の参考に供するためです。

ところが、これに「毒まんじゅう」が盛り込まれることがあります。

今回で言えば、前区長を支持していた会派が「一人当たりの年間持ち時間制限の導入」を求める提案をしていました(議会運営委員会の理事会)。

杉並区議会は、特に本会議において厳しい発言時間制限を設けてこなかった伝統があります。ここは国会や都議会などとは全く異なる歴史です。

杉並区議会には過去に少数会派(2人会派)を経験した議員が議長に3回就任したことなどもあり、本会議における発言制限については極めて慎重に対応されてきました。一人会派の議員であっても毎回のように登壇できるなど一定の発言権が確保されています。

ところが、都議会経験の長かった前区長は、これが大変に気に食わなかったようです。しばしばこれを問題視し、都議会と同様に「一人当たりの年間持ち時間制限」を導入する必要性を説いていたことがわかっています。

議会で厳しい指摘をする議員を疎ましく感じていた前区長らしい発想ですが、賢明な歴代議長は、これに従うことはありませんでした。

「年間持ち時間」を設定すれば、年度末に持ち時間がなくなった会派や議員は議場で全く発言することができなくなってしまいます。

もし、年度末に持ち時間を残すために、年度中の発言を自重するなどという不自然な対応が罷り通れば、自由闊達な議論もできなくなります。

議事の都合から仮に発言時間を調整する必要があるとしても、それはケース・バイ・ケースで判断すべきものであって「年間持ち時間」のような形でコントロールすべきものではないでしょう。

これも前区長を支持する会派が事実上壊滅状態になったことで、導入は遠のくはずです。

(4)前区長の復活・再起の道も閉ざされた


前区長は、次の杉並区長選に再挑戦する意向からか、相変わらず政治資金パーティーを開催しています。再起を明言しているとのことです。

これを受けて杉並区長選挙(2022年)の後も「前区長時代はよかった、岸本区政は支持できない」と前区長支持を継続していた会派もありました。

この会派の所属議員のように前区長を支持していた議員は、自民党5人、立憲民主党1人、無所属(元民主党議員・電力総連の組織内議員)1人の計7人でしたが、今回このうちの5人が落選しました。

落選した前区長の復活・再起の道は事実上閉ざされた、これも今回の選挙結果の一端といえるかもしれません。

選挙期間中こどもたちに行く手を阻まれる堀部やすし


■世界的にも珍しい男女比が逆転した議会


おかげさまで、堀部やすしも当選することができました。

議会の男女構成比が逆転した(女性議員数>男性議員数となった)大都市の議会は、世界的にみてもニューヨーク市議会など数は多くないと思います。

東アジアでは、台湾の首都・台北市議会がほぼ男女半々(男性議員31:女性議員30)となったばかりでした。

堀部やすしは、これで「少数派の男性」になるわけですが、このように多様性あふれる構成となった杉並区議会の中で引き続き仕事ができることが嬉しく、また誇りに思っています。応援ありがとうございました。


地方議会は党派対立ショーを展開する場ではありません。

杉並区議会も国政の代理戦争の場に陥らないよう制定した議会基本条例を踏まえて生まれ変わる必要があります。変化を期待しています。

引き続き堀部やすしは、党派的対立に関与することなく、あくまで実務的な課題解決を志向し、対応していきたいと思っています。

杉並区議会議員の新たな任期は、2023年5月1日スタートです。

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