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公会計化されない年間約20億円の学校給食費/全額公費にもかかわらず「私費会計」のまま実施される学校給食の無償化

9月26日、杉並区一般会計補正予算(第4号)が成立し、区立小中学校64校で学校給食の無償化が実施されることになりました。

予算計上額は10月からの半年分で9億4,449万円です。この無償化は、次のような方法により対応を進められることになります。

■2023年9月下旬
・各学校の校長と「覚書」を締結
・覚書に基づき各校の学校長が区に給食費の交付申請を行う

■2023年10月中旬
・校長名義の給食費会計口座(私費会計)に区が給食費相当分を振り込む
・保護者徴収を停止する

■2024年3月下旬
・校長との間で清算(不用額を校長から区に返還してもらう)

○私費会計のまま全額公費で無償化へ


なぜ、校長とこのような「覚書」を締結する必要があるのかといえば、私費会計の仕組みを維持したまま実施するためです。

学校給食を義務教育の一環として全額公費で実施する(無償化)と言いながら、会計処理だけは「私費会計」のままなのです。

杉並区のオフィシャルな決算書(公会計)から除外されている「私費会計」については、以前にも問題点を紹介しているとおりです。


このように学校給食費(食材費)を10月から公費で無償化するとしながら、その管理方法として「私費会計」を残し、校長の個人口座にその費用を入金する状態が今後も続くことになりました。

区はこの仕組みを学校会計(学校私費会計)と述べて正当化しているわけですが、その性質として私人としての校長の銀行口座に入金を続ける事実は依然と何も変わらないのです。

このため、実施に当たり事前に校長個人と「覚書」を締結しておく必要があるわけです。

もし、校長が「覚書」の締結を拒んだら、どう対応していたのでしょうね。

その場合、職務命令違反ということにするのでしょうが、一方的な職務命令では強制できないような脱法的な処理を行うために、このような「覚書」を締結する必要があったことを考えると、なかなかにムチャクチャな話です。功を焦って墓穴を掘っていた可能性もあったことでしょう。

○総務財政委員会に「修正案」を提出したものの賛成4:反対5で否決に


あえて公会計から除外している「私費会計」の存在については、これまで地方自治法210条(総計予算主義)及び235条の4第2項(現金の保管)に係る論点を議会で話題にし、問題視してきました。

学校給食費はその象徴でした。

公会計でなく私費会計に組み入れられた金銭は、区の名義で保管することができず(地方自治法235条の4第2項)、これが過去数々の経理事故・会計事故を発生させる大きな背景となってきたのです。

しかし「学校給食の無償化経費を次の補正予算に盛り込みます!」と区長記者会見で華々しく発表された後も、どういうわけか、この問題への対応策は全く明らかにされることがありませんでした。

私費会計としたまま実施に踏み切る事実は、9月15日金曜日に私が指摘して初めて明らかになったのです(杉並区議会本会議)。


なるほど、区長の選挙公約(学校給食の無償化)は軽いものではなく、その大義名分の前には問答無用で実施するのもリーダーシップの一つでしょう。

児童館の廃止、ゆうゆう館の廃止、新たな指定管理施設の指定(区施設の公設民営化手法の一つ)に向けた動きなど、いずれも選挙公約違反だと指摘されることが少なくない新区長にとって、一刻も早く「目に見える成果」を出したいとの焦りもあったのでしょう

しかし、ここは中小オーナー企業(いわゆる非公開会社)ではないのであって、このような事務処理を「同調圧力」によって公然と続けることを追認するわけにはいきません。

公開会社/上場企業で、このような経営判断の影響により問題が発生すれば、内外から善管注意義務違反に問われかねないでしょう。

そこで、学校給食費を「私費会計」としたまま公費対応を進める補正予算に修正案を提出し、改善を図る必要性を訴えましたが、残念ながら賛成4:反対5で否決となりました(杉並区議会総務財政委員会)。


委員会否決により本会議に回らず残念でしたが、僅差ではありました。修正案に賛成してくださった議員のみなさんに改めて深く感謝申し上げます。

○杉並区が実施する義務教育の一環として全額公費で賄うからには正しく公会計化すること


学校給食費(食材費)については、これまで就学援助の対象者(児童生徒全体の1~2割)などを除き保護者負担となっていました。

10月以降の学校給食は、全額公費で無償化されることになります。物価上昇の影響もあることから、所要経費は通年ベースで20億円近くに達します。

学校給食費(食材費)は、これまで杉並区の会計管理室(会計課)が関与しない「私費会計」で管理されてきましたが、義務教育の一環として全額公費で賄うからには正しく公会計化すべきものです。

この主張に対し、杉並区は学校給食費の公会計化について「令和8年度の試行実施を視野に検討」と今回発表しました。

ややこしい表現でわかりにくいのですが「令和8年度にまず一部の学校で試行し、令和9年度から全校で公会計化を実施することを視野に検討する」との意味だそうです(総務財政委員会9月25日の答弁)。

令和5年度現在から数えて3年半後。要するに、次の区長任期の話なのです。

今回の予算計上に対する熱意との落差が激しすぎて、率直に言って言葉を失っています。ここは一刻も早く対応してほしいところですね。

このような結果となったことは非常に残念です。現任期中に「公会計化」を実現させるため、今後これまで以上に厳しい姿勢で臨みます。

○あえて公会計から除外し「私費会計」で管理させる(学校教職員に脱法的な対応を強要する)のも立派なパワハラ


昨年11月、新区長は、就任4ヵ月目を前に「杉並区ハラスメントゼロ宣言(ハラスメントゼロをめざす宣言)」を行っていました。

過去の杉並区政の反省を踏まえたものです。パワハラに対しては人事権の行使も辞さない旨の言及もありました。


これを受け、令和4年度は「ハラスメント防止のオンライン研修(管理職・係長級職員845名受講)や動画を活用した財務事務に関する内部統制研修を実施しました」との実績が示されています(区政経営報告書)。

しかし、あえて公会計から除外し「私費会計」で管理させるようなコンプライアンス無視で学校教職員に脱法的な対応を強要するのも立派なパワハラです。


職務命令は、その命令が職務に関しコンプライアンス違反のないものでなければなりません。

自校調理方式で実施される学校給食を「義務教育の一環」として全額公費で実施すると言いながら、その一方であえて公会計から切り離し、私費会計で管理させるのは、有効な職務命令の要件を満たしているとはいえないものです。その意味で前述した「覚書」は実に巧みな同調圧力によって物事を進めていく極めて悪質なものなのです。

新区長はこれを見過ごしてしまいましたが、私はこれを見過ごしません。

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今回も最後までお読みくださりありがとうざいました。引き続き課題に取り組むことができるのは、みなさんの激励のおかげです。今後も左右の「党派対立ショー」とは一線を画して真摯に調査・審議に臨みたいと思います。

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