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杉並区「生成AIの利用禁止」は時代錯誤だ/「AIの民主化」が始まっている
Chat GPTの一般公開(2022年11月30日)からちょうど1年となりました。
「生成AI」の出現に世界中が注目し、公開から1週間でユーザー数は100万に、さらに公開2か月では1億を超えるなどサービスは急速に普及しました。現在では新たな「生成AI」が次々に誕生し、さまざまなサービスを生み出しています。
これまでAIの活用はごく一部の専門家に独占されていました。ChatGPTをはじめとする生成AIの誕生は、多くの人がAIを使えるようになる「AIの民主化」が始まったことを意味するものです。
生成AIの活用を進める自治体の増加
生成AI(Generative AI)は、その名のごとく学習したデータをもとに新たなコンテンツを生成するAI(人工知能)です。
この間、業務改善や生産性の向上に高い効果を示す調査研究結果が次々に公表されています。これを受けて国内でも活用を進める取組事例が増え、東京都をはじめ複数の自治体が取組を加速させるようになりました。
犯罪利用などに対する歯止めは当然に必要になりますが、少子高齢化が進んでいる中で(生産年齢人口が減少している中で)、このような技術革新を頭ごなしに否定し、受け入れを拒むことは非現実的です。
生成AIを積極的に利用するしないの立場にかかわらず、多くの人が「AIリテラシー」を持つことが必要な局面に入ったというべきです。
東京都は既に全局約5万人の職員を対象に生成AIを利用することのできる環境を整えました。特に文章生成AI利活用ガイドライン(東京都職員向けの利活用ガイドライン)はとてもわかりやすく、区市町村においても参考になります。
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杉並区は依然として利活用禁止中
杉並区においては、ChatGPTの公開から1年を迎えても、生成AIの利用は一律に禁止されたままとなっています。
11月8日の区長記者会見でも次のようなやりとりがありました(要旨)。
記者:生成AIにどのように取り組むのか。生成AIに対して積極的に導入していくか、慎重に取り組んでいくか。
区長:生成AIに関して、これは当然と言うか、杉並区として慎重な立場で取り組んで臨んでいくべきだと思っている。日本全体、世界全体で慎重さが求められる課題がたくさんある。新しい技術を規制するルールが国際的にも国内的にもまだできておらず、杉並区としても私としても慎重に見ている。
記者:杉並区はまだ導入という感じではないということか。
区長:はい。検討というか研究の段階だと考えている。
実は、これに先立つ10月19日、杉並区議会(総務財政委員会)は、区長部局のデジタル戦略担当部長・同課長とともに、地方自治体の中で最も早くChatGPTの活用を進めた横須賀市に調査に出向いたばかりだったのです。
先進自治体における取組を踏まえて今後を展望していただけに、トップから「冷や水」を浴びせられた印象でした。
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利用を禁止していても管理の及ばない水面下で勝手に利用されるリスクがある
生成AIの登場は、日本の戦国時代でいえば「鉄砲の伝来」、江戸時代でいえば「黒船の来航」、明治時代であれば「電球(電灯)の発明・実用化」に相当する大きな変化です。
従来の技術であれば数年がかりで進むような変化(機能強化)が、生成AIの世界では短期間に次々発生しています。
生産性の向上だけでなく、利便性も高まることから、業務利用を一律に禁止していても、水面下で利用する動きが発生することでしょう。
電球・電灯が普及し実用化されている時代に「今後もロウソクを灯して仕事をしろ!」などといわれても、おとなしく従えないものです。
いわゆるシャドーIT(従業員が独断で導入した機器やソフトを使うことでセキュリティが保たれない問題)は古くて新しい問題です。対策が必要です。
AIリテラシーの向上には適正管理のもと利用経験を積むことも必要
生成AIの発展は著しく、一律に業務利用を禁止としていても、水面下で勝手に利用されていくことは確実です。
コントロールの及ばない水面下で隠れてコソコソと業務利用されていくのであれば、適切な管理監督の下で段階的に利活用を進め、その経験を職場内で共有していくほうが大事ではないでしょうか。
好むと好まざるとにかかわらず、生成AIは普及していくのです。適正管理のもとで正しく利用経験を積み、前向きにAIリテラシーの向上させていくことが必要な局面です。
横須賀市においては、業務の入口をLoGoチャット(安全性が高い行政専用回線・LGWANで使用できる専用のビジネスチャット)に集約するなどセキュリティ面における課題を解消し、取組を進めています。
これには上地克明市長の強いリーダーシップが反映されているとのことでした。
なお、このほか横須賀市では「書かない窓口」の現場を含め現状を確認してきました。
待ち時間の短縮をめざし自治体で導入が進んでいる『書かない窓口』。①本人が事前にネットで入力、②本人持参のマイナカードを使って読み込み入力、③本人が窓口端末に直接入力、④職員が聞き取り入力…など複数の方法があります。①は最も採用数が多い一方、事前入力して来庁される方は1割未満である… pic.twitter.com/omZ3lxeyrU
— 堀部やすし 杉並区議会議員 (@HORIBE_Yasushi) October 19, 2023
杉並区デジタル化推進計画にも「AI活用の積極的な検討」は盛り込まれている
杉並区デジタル化推進計画(現在パブリックコメント実施中の改定案)には「新たなデジタル技術を活用した業務の効率化」との標題で「AI(人工知能)などの技術についても、活用に向けた検討を積極的に行い、より質の高い行政サービスの提供につなげていきます」と記載されています。
この記載を踏まえれば、今後活用に向けた検討を積極的に行っていくものとばかり受け止めていたのです。それだけに11月8日の区長記者会見で示された姿勢で取組が遅れる可能性が出てきたことには強い懸念を持つようになりました。
この点について、11月に議会で問いただしたところ「区民サービスの向上や業務効率化に大きく寄与する可能性がある一方、回答の不正確性や著作権侵害、情報漏えいなど様々な課題が指摘されており、慎重に考えていく必要がある」との前置きをおいたうえで「今後ルールの作成も含め、入力した情報が生成AIに収集されないシステムの導入を検討するなど、職員が安全に生成AIを利用できる環境整備を進めていきたい」との回答が返ってきています。
横須賀市などの先進事例を踏まえたうえで利活用を進めるオフィシャルな回答と受け止めています。あとは早期にルールを確立していく気概が必要ですね。
生成AIの普及による「AIの民主化」を前向きに受け止めて正しく活用を
生成AIの普及によって、多くの人がAIを使えるようになる「AIの民主化」が始まっています。私たちの日常生活にも着実に浸透していくことでしょう。
このようなイノベーションを個人が受け容れるも受け容れないも自由ですが、少なくとも一定の「AIリテラシー」を持つことが必要な時代に入ったことだけは間違いがありません。生成AIが嫌いでも少しずつ学んでいくことが必要です。
もちろん、生成AIは、業務効率の改善や課題解決に寄与するものの、これはあくまで人間が主体性を持って取り組むことにより初めて成果を生み出していくものです。ここは勘違いしてはいけない部分ですね。
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「AIの民主化」を前向きに受け止め、正しく利用しながら杉並区政を前に進めていきましょう。今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
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