
杉並区は「物価上昇リスク」「金利上昇リスク」を織り込んでいない行政計画を前のめりに進めるべきではない
新年度当初予算は、現区長の任期最後となる当初予算の編成となりました(杉並区長選挙は6月12日告示)。
2022年度は、現区長12年の締めの年度となるだけでなく、新たな基本構想・総合計画に基づく取組が始まる年度ともなっています。
岐路にあることを踏まえ、本会議での代表質問・一般質問を皮切りに、総務財政委、予算特別委などにおいて数多くの論戦を重ねてきました。
織り込まれていない「物価上昇リスク」「金利上昇リスク」
最大の問題は、昨年からインフレ傾向が全世界で加速しているにもかかわらず、それが区の各種方針・計画・予算にほぼ織り込まれていないことです。
物価上昇・金利上昇・スタグフレーションに陥るリスクをあまりにも軽視しているのです。
そもそも経済金融動向が安定せず、さらに東欧で発生した戦争によって先行きの不透明さが一段と増した現状を踏まえるなら、既定の方針や計画事業であったとしても、再精査が必要というべきでしょう。
現区長は、4選をめざす杉並区長選挙を前に予算に「甘いお菓子」ばかり並べることに成功したことからご満悦のようですが、そのツケを払うのは次の世代なのです。
これ以上のツケを次の世代に回すべきではありません。堀部やすしは、区長提出案件25件のうち一般会計当初予算ほか5件に反対しました。
【当初予算の課題1】全世界でインフレが加速している中、それが当初予算に織り込まれていない
昨年から企業物価が一貫して上昇しています。
昨年6月以降の企業物価指数は、前年同月比5~9%台もの上昇を毎月毎月続けています(直近3月は9.5%の上昇)。特に輸入物価の上昇は顕著です。
東欧で戦争が始まるはるか前から物価上昇が始まっているのは、それが構造要因によるものだからです。
インフレ下では歳入増もありますが、物価上昇に伴う歳出増にも留意しなければなりません。
例えば、発注予定工事でいえば、全体平均で前年度比約2%の物価上昇で積算されているに過ぎませんでした。一貫して進行している物価上昇を相当に甘く見積もっているのです。これでは話になりません。
甘い見積もりによって身の丈に合わない将来負担を背負うことを強く懸念しています。繰り返しますが、そのツケを払うのは次の世代なのです。
異次元の金融緩和を長期化させた日本の対応は容易ではありません。
基本構想に基づく総合計画、区立施設再編整備計画(第2期)なども物価上昇リスク・金利上昇リスクなど全く想定に入っておらず、持続可能性の乏しい計画であることを指摘し、強く警告を発しています。

令和3年度の杉並区議会だより(年5回発行)から

令和3年度の杉並区議会だより(年5回発行)から
杉並区が所有している区立施設/建物の延べ床面積は約85.9万m²です(2021年3月末現在)。
— 堀部やすし 杉並区議会議員 (@HORIBE_Yasushi) November 18, 2021
ちなみに、前区長時代の12年前は、約81万m²でした。
杉並区が施設再編を押し進めたのは、将来コストを抑えるためだったのですが、実際には延べ床面積をどんどん増やしています。これが田中区政11年の結果です。
【当初予算の課題2】任期満了を目前に控えている区長が新規の建設投資事業を数多く予算計上
例えば、浜田山駅南口(地下連絡通路)整備事業については、最大の受益者である京王電鉄の負担がゼロである方針が当初示されるなど進め方への疑問が尽きません。
事業は「区の単費とする」との発言もありましたが、総事業費の規模さえ示さず、さらには今後、半永久的に経常経費となる賃借料の見通しさえも示さず、これで同意を求められても判断できるものではありません。
杉並区長は6月改選(区長選)を控えながら、新規の建設投資事業を数多く歳出予算に計上しています。特に浜田山駅南口の整備事業は、京王電鉄(受益者)の負担がゼロ。その財源確保の見通しも立っていません。
— 堀部やすし 杉並区議会議員 (@HORIBE_Yasushi) February 22, 2022
平素は区民に受益者負担を求めながら、大企業に受益者負担ゼロでサービスする理由は何かな?
和田堀公園内に新設するドッグランも同様で、ここが都立公園であることを踏まえるなら、本来は都が負担すべきものです。
他区市の事例ではそうなっているところ、なぜ杉並区だけが区の負担としなければならないのか、情緒的な説明はあるものの、合理的な説明はありません。
現在、都立公園に設置されているドッグランは、すべて東京都の財政負担で設置し維持管理されています。都立公園ですからね。
— 堀部やすし 杉並区議会議員 (@HORIBE_Yasushi) March 13, 2022
ところが、和田堀公園(都立公園)内に新設予定のドッグランだけは、なぜか杉並区の財政負担になるのです。
なぜ杉並だけが例外になるのかな。なぜ?納得いかないのですよね。
区立施設の老朽化とともに、ハコモノ投資事業のオンパレードとなっている中にあるだけに、安易には考えられない課題ばかりです。
投資事業は、区長の任期を超えて区財政に中長期に影響を与えます。将来にわたる維持管理コストは無視できないのであって、今後の経済金融動向を見定めて慎重に対応しなければならないものです。
都市計画道路補助132号線(西荻)の用地取得は、土地開発公社が行っています。公社は銀行からお金を借りて買収しているわけですね。
— 堀部やすし 杉並区議会議員 (@HORIBE_Yasushi) March 18, 2022
令和3年度に取得した用地は、国の交付金を受けることが決まった後、令和5年度に杉並区が買い取る予定になっています。区の財政負担は常に数年ずれて発生するわけです。
都市計画道路補助132号線(西荻)第一期事業認可606m用地取得の進捗状況は5区画6筆。計画通りには進んでいません(13.3%)。
— 堀部やすし 杉並区議会議員 (@HORIBE_Yasushi) March 18, 2022
土地開発公社は、新年度17区画14筆(地権者180人超)を取得したいと述べました。これも今後の物価上昇・金利上昇・スタグフレーションを織り込んでいない点が気がかりです。
このほか
第3に、後年度負担となる債務負担行為の設定の中に必ずしも限度額を明確化しているとはいえないものがあること
第4に、地方債についても限度額その他の区債発行条件の設定に懸念があること
第5に、満期一括償還地方債が増加する中、金利上昇を見据えた対応を怠っていること
それぞれ大きな課題が残っていることを指摘しています。
各論では、教育長などとも議論しました。またご報告しましょう。
堀部やすしは、増税一辺倒となる前に必要な合理化・活性化を推進し、現区政に対する牽制役を果たしていきます。
いつも激励ありがとうございます!