議員の長期欠席と議員報酬
無免許運転を7回繰り返した(道路交通法違反)として在宅起訴された板橋区選出の木下富美子都議がついに辞職しました。
議員活動の長期休止状態に対する東京都議会の対応が注目された件です。メディアも連日のように報道していました。
さて、このような問題が発生した場合、杉並区議会ではどうなるでしょうか。
議員活動の長期休止に伴う報酬減額 杉並区の場合
杉並区では、議員活動の長期休止が発生した場合に備え、議員報酬の減額規定を設けています(平成29年4月1日施行)。
杉並区議会においては、東京都議会のような事件は発生していませんが、過去に選挙管理委員会委員の長期欠席が発生したことから、これを踏まえて対応したものです。
具体的には、①1年を超えてオフィシャルな会議を連続欠席した場合は2割減額、②ただし、欠席が、公務上の災害、本人の責に帰することができない事故、感染症、その他議長がやむを得ないと認める事由である場合はこの限りでない、としています。
残された3つの課題
この問題については、条例改正の当時「残された3つの課題」について共有を図る必要性を訴えています(平成29年2月17日杉並区議会本会議)。
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◆5番(堀部やすし議員) それでは、議員提出議案第1号杉並区議会議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例の一部を改正する条例について意見を申し述べます。
本提案は、正当な理由なく通算1年を超える議会活動の休止が見られた場合、それ以降復帰するまでの間の議員報酬等を2割削減するルールを定めるものです。
報酬は一定の役務の対価として与えられる反対給付であることからも、議会活動を長期にわたって休止している場合の減額規定自体は必要であり、この新規定の創設には賛成しますが、幾つかの課題が残っているため、提案者には名を連ねず、ここに意見を申し述べるものです。
以下、残された課題3点を指摘します。
第1の課題は、議会活動の休止が長期に及んだ場合です。
本提案は、通算1年を超える欠勤、議会活動の休止が見られた場合の削減ルールですので、欠勤が2年、3年、4年となったとしても、報酬の8割は保障されるということになります。これをどう考えるかであります。
そもそも提案では、本人の責めに帰することができない事故などによる欠勤の場合は減額の対象とならないことが明確にされている中、仮に3年、4年と自己都合で議会活動が休止された場合であっても、議員報酬の8割が保障されるとするルールを果たして区民に説明できるのかということです。
第2の課題は、本人の犯罪行為などを原因とする議会活動の休止期間が1年以内におさまった場合です。
本提案は、本人が有責で通算1年を超える欠勤がある場合に議員報酬を減額するというものですから、いかなる理由であれ、欠勤期間が1年未満である場合、満額の議員報酬が支払われることになります。これをどう考えるかです。
例えば、4年の任期のうち最後の2年間、例えばがんなどで闘病生活に入った場合は減額対象になると考えられますが、その一方で、本人の犯罪行為を原因とした逮捕、勾留などで数カ月の欠勤があったとしても、本案では議員報酬を減額することはできません。
期間のみに注目し、その性質を考慮しないルールを果たして区民に説明できるのかという問題があります。
第3の課題は、減額するかしないか、議長の裁量の幅が非常に大きいことをどのように考えるかです。
本案の提案手続は議会内のみで完結しており、特別職報酬等審議会に諮られたわけではなく、区民等の意見提出手続などを経たわけでもありません。
地方自治法に定めのないルールを新たに条例として定め、かつそれがみずからの報酬についてのルールであることを踏まえますと、本来は第三者の意見聴取が必要というべきですが、今回はこれを欠くこととなりました。
実際の運用も議長判断によるところが大きく、議長がやむを得ないと認める事由があれば減額されないとされているため、安定性に欠く運用が行われないとも限りません。その都度特別職報酬等審議会などに諮問するといった手続を定めることなく判断することには、お手盛りとの批判が起こる可能性も考えられるところです。
以上、今後に残された課題を申し述べました。関係各位にこの課題が共有されることを期待いたしまして、意見といたします。
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東京都議会で発生した木下富美子議員の事件を通して注目されるようになったテーマですが、実は古くて新しい問題です。
当時私が提起した課題(第2の課題)も、まさに今回の木下富美子元都議のケースに該当するものです。
これを契機に57万区民にとどまらず広く課題が共有され、検討が深まることを期待しています。
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