見出し画像

『呪怨』の「呪い」との格闘『ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷』ネタバレ考察・感想・レビュー

ホラー映画でお馴染みなリンシェイお婆ちゃんがインパクトと存在感で幽霊たちを圧倒するリンシェイ映画。もうタイトル『呪怨』じゃなくて『リン・シェイ』とかでも良いんじゃないかな。リンシェイお婆ちゃんに「私を養ってよ!」とか言われながら迫られる衝撃!!怖いよ😱

あと『サーチ』のジョンチョーも出てた!この人も顔面圧凄いよね!

ジェニファー&ヨーコのハリウッド版第一作の世界軸を持ち出すところから始まり、連れて帰るという『呪怨パンデミック』、そして中川や佐伯家という日本オリジナルへの目配せをしつつも、ハリウッド三部作で打ち出された死の集合体としての伽倻子を受け皿に、「救い」への可能性を引き合いに出して「生」を見つめ直す意欲作。

個人的に推してる『The Eyes of My Mother』『ピアッシング』のニコラスペッシェ監督の最新作だけど、評価が壊滅的に悪いからどうかと思ってたやつ。そもそも『呪怨』シリーズに面白さを感じない私からしたら過去作中No. 1クラスに面白かった。今までで一番好きなの『白い老女』だし。

本作の描くキャラクターたちは「死」を抱えて生きている。過去の喪失だけでなく、今後来るべき喪失、そして「生」の中にも「死」を見てる。だからこそ「死」が時間も空間も超越し集合する場所が救いになり得る。伽倻子は控えめに、俊雄は出さず、そういった死の集合体という要素をもって『呪怨』とする着眼点が斬新で、更には時系列も主体もシャッフルした群像劇的に見せつつも、脳死ぶつ切りではなく連鎖するように時間を飛び越えていく手堅さのもと仕上げている。

恐怖なり違和感なりを募らせていく「死」を連想させる恐怖演出の周辺で、一般的にあまり見られないオレンジという暖色を基調とした色彩を意識的に選択しているのも印象的で、「死による救い」を少なからず意識した本作にカチッとハマっている。ただ、温かさを感じさせつつも、正しさとは切り離しているあたりが誠実。それはあくまでも主観的なものでしかなく、「生」の絶対的な正しさを真っ当なものとして描くギリギリのバランスを攻めているのが面白い。

だから「死による救い」を本作は完全に否定しているようにも見えるのだけど、私は選択肢として心の中に残すことを許すかのような、ある意味での優しさも備えているように感じた。その選択肢を提示しつつも「生」を選択する重みにドラマが乗っかり、「生」の決意が無慈悲な「死」を際立たせる。逃げ出したくなるほどの地獄である「死を内包した生」を生きることの覚悟と正しさ訴えかけている。

ただ、『呪怨』シリーズがもともと備えている意図を感じないジャンプスケアや特有の「らしさ」の拘束が本作にも働いてしまっていたのは残念。首の皮一枚で『呪怨』と繋がっていた本作が、最も『呪怨』に近づく時に一気に興醒めとなってしまうのは、ほんと『呪怨』の呪いだし足枷だと思う。突出した出来の作品だとは全く思わないけれど、マイナス要素しか生み出さない『呪怨』の強すぎる呪いを薄めつつ『呪怨』であることに成功した数少ない作品(もう一作は『呪怨:呪いの家』)として評価できるものだと私は思った。最初から負け戦だもんね。

ペッシェ監督はサイコホラーが得意な監督という認識だけど、『呪怨』のレールに乗らないオリジナルなオカルト・心霊ホラーも撮って欲しいなって思った。どんな恐怖演出になるのか凄く気になる!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?