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高田公太さんに「それ、ルッキズムだよ」とたしなめられて気づいたこと。

先日、弘前市内の独立系書店「まわりみち文庫」さんで僕の2冊目の単著でシリーズ2作目になる「図書館ウォーカー2 旅のついでに図書館へ」(日外アソシエーツ)の刊行記念トークイベントに出演してきました。

まわりみち文庫さんについてはこちら↓ 最近弘前駅前に支店を開店!

図書館ウォーカー2については、こちらの紹介記事↓をどうぞ。ちなみに1は増刷され現在2刷です。また、2の「弘前市立弘前図書館」のデータ部分の「近くのおすすめスポット」にまわりみち文庫も載せています。

図書館ウォーカーはもともと弘前市に本社がある地方紙「陸奥新報」の連載で、このイベントは言わばホーム開催にあたります。というわけで今回は、前半に僕一人での図書館ウォーカーに関するトーク、後半は弘前在住の実話怪談作家、高田公太さんに参加していただき、対談することになりました。

高田公太さんのnote↓

なぜ高田さんをお呼びしたのかと言うと、単に数少ない県内在住物書きのダチ同士というだけでなく、彼が「図書館ウォーカー」誕生に大きな役割を果たした人だからです。

実は高田さん、数年前は陸奥新報の記者として作家と兼業状態で働いていらっしゃいまして。その記者時代に僕に「図書館についての連載やらない?」と仕事を持ってきてくれたのが彼なのです。

対談では彼の面白トークが炸裂し、かなり圧倒されました。連載開始に至るまでの流れとか、図書館ウォーカーの魅力について、僕をほめ倒しながらたっぷりと語ってくれました。彼は今トーク系イベントにガンガン出演していているので、トーク芸が磨かれており、トークもやる物書きとして個人的に学ぶところも多かったです。高田さんのイベント出演についてはXのほう↓に詳しいです。

https://twitter.com/kotatakada

さてイベントの最初に、ちょっとアイスブレイキングのつもりで、お客様に向かってイベントチラシのこんな画像↓を見せて、僕はあることを言ったのです。

まわりみち文庫イベントチラシ

僕が言ったのは、「イケメンの高田さんとブサメンの僕が際立つポスターですが」みたいなことでした。
(実際、プロのフォトグラファーが撮っている高田さんのアー写はばっちり決まっています。ちなみに僕のは旅の途中に彼女が撮ってくれたものです。これはこれで、今の僕にぴったりなものだと思っています)

すると横に座っていた高田さんがすぐに「オラシオさん、それはルッキズムだよ」と言ったのです。口調だけでなく、表情にもたしなめるようなところがありました。こういう感じの高田さんはちょっと珍しい。

対談のあとのほうで高田さんも言ってくれたように、僕はどちらかと言うと「フェミニスト」にあたる人間だし、自分もマイノリティー側に入ることが多いからか、差別的な言動にはかなり敏感なほうだと自認しています。

あと、ウォーカー1の「燕市立分水図書館」や2の「鹿児島市桜島公民館図書室」の回でも書いているように、僕は異性のルックスに対する意識がかなり壊れていて、女性を見て「美人だな」「かわいいな」とか感じたことがないんですよ。同様に「ブス」とかもわかりません。

この感覚を人に説明する・理解してもらうのはいつも難しいのですが、とにかくそうなんです。ただ、男性だとなんとなくイケメンかどうかはわかるんですね。蛇足ですが、ここで「男性/女性」と分けて書いているのはあくまで説明のためで、個人的にはそのような「性別」ははっきりとはしないものだと考えています。

そんな感じで生きてきたんで、ルッキズム的な感覚から自分はかなりかけ離れたところにいる、という自覚があったんです。実際、ルッキズムに惑わされないことで楽に人生を送ってきた、という気持ちもあります。同時に、自分はきっと人として大事な何かが壊れてしまっている人間なんだろうなという感覚も持っています。

なので高田さんに「それ、ルッキズムだよ」と指摘され、一瞬ものすごくショックを受けたんですね。その後10分間くらいは、そのショックを引きずったまま心ここにあらずでトークしていたかもしれません。実際、トークのルーティンとして最初にお客様に「お願い」することも言うのを忘れていましたし。

でもイベントが終わってから、ふと思い出したのです。その昔テレビかウェブ記事か何かで、お笑いタレントの光浦靖子さんが「ブス」をめぐるあれこれについて「ルックスをネタにしたかんたんな笑いがとれなくなった」みたいなことを発言しているのを目にしたことがあるのです。

ハゲ、ブス、デブなど人のルックスを貶めるやり方で笑いをとるのはもうやめよう、という時代になってきたということを受けての発言でした。正直、それを読んだ時に「当たり前だよ、そんな笑いはなくていいし、取ろうとしなきゃいいじゃん。僕はそんなんじゃ笑わないし」と感じたんですよね。

ところがどうでしょう。僕も今回、まったく同じことをしてしまったのです。確かに僕は人を貶めたわけではありません。でも、自分と高田さんの見た目をダシにして、非常にしょうもない笑いをとろうとしたのです。高田さんにたしなめられたことを恥ずかしく感じつつも、気づいたのでした。

光浦さんの言っていたことはこういうことだったのかと。彼女はたぶん、自分がいわゆる「ブス」側にいる人間だという自覚から発言されていたのですが「他人ではなく自分をブス、不細工などと貶める形であったとしても、もうその笑いのやり方は通用しない」ということをおっしゃっていたのです。

僕はそれを「笑いの方法の一つがダメになってやりにくくなった」的に誤解していたので、見た当時は反感を持ってしまったんですよね。そのことに遅まきながら気づくことができました。

他人を貶めるのであれ自虐に走るのであれ、または逆にほめるのであれ、人間のルックスをネタにすることで笑いなり何なりを喚起してきた社会が「ルッキズム」を底支えしてきたのであり、僕の発言はまさにそれを助長するようなものでした。

今後二度と、どんなやり方であってもルックスをネタにしたジョークを言うべきではないし、その前にそうした発言が「笑いにつながる」などという発想をしてはいけないな、と深く反省したのでした。

と同時に、これから楽しいことが起こるはずのあのイベントの場でちゃんと「それ、ルッキズムだよ」と指摘できる高田さんを改めてすごい人だな、とも思いました。たぶん僕だったら、その時はスルーして、あとで本人に言うか、内心で「こういうことを言うのか、ちょっとがっかりだな」と思っているだけだった気がするからです。

彼のたしなめのような「NO」が、社会を変えてきたのですよね。トークの技術とともに、学ぶことが多い夜でした。高田さん、ありがとう。

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