勘違いという幸せへのスイッチ。『1000%の建築 僕は勘違いしながら生きてきた』谷尻誠
なんとなしに雰囲気には敏感な子どもだった。いわゆる「間」を読むということ。空間における人とモノの配置、それに伴う空気感の変化。もともとお笑いが好きだったことも影響していたのかもしれません。
大学に入り、雰囲気への興味は、場作りへの関心に変わっていきました。加えて、もともとミーハーであり本好きだった僕は、さまざまなジャンルの「かっこいい人」に惹かれていったのです。
場作り、そしてかっこいい人とのセッション。この2つを具現化したイベントをしている方を知ります。それは「suppose design office」代表、建築家の谷尻誠さんでした。
広島の事務所で行われる月1度の場作り「THINK」。紛れもなく、僕が大学時代に立ち上げた対話ユニット「Stop and Think」のインスピレーションになっています。始めた当初はフライヤーのデザインも参考にするほど、憧れたものです。
もともとは住居として使われていたスペースから壁や扉を取り除いた「名前のない空間」として使用していたそう。「空間をつくることなく空間をつくる」というコンセプトから様々な分野で活躍するゲストを招き、イベントをするたびに空間に名前をつけていく。それが「THINK」。
アート作品が展示されれば「ギャラリー」、アーティストが歌を歌えば「ライブハウス」、シェフが料理を振舞えば「レストラン」に。ゲストの言葉をみんなで共有し、異なって表れ出る価値観を楽しむ場。それが「THINK」なんです。
今作で、キーワードとなる言葉。それは副題にも表記される「勘違い」。谷尻さんのこれまで、そしてこれからが「勘違い」を軸として語られています。26歳で独立し、試行錯誤を重ねながら、現在まで活動を行い、本の出版まで行った谷尻さん。
あとがきの言葉が、また好きなのです。
はじまりは勘違いだったかもしれません。でも、それが自分の背中を押し、今こうやって本を出版するまでに至りました。コンプレックスに悩んだり、他人と自分を比べては自信を失ったりしていたぼくが、なにかができるという自信や覚悟みたいなものを、少しずつもてるようになってきたんです。
幼い頃のひとりよがりで思い込みの塊のような「残念な勘違い」が、さまざまな経験を経て、今は本当に「魅力ある勘違い」ができるように進化してきたと思っています。そして夢見ることを忘れないためには、これからも「勘違い」が必要だと思います。
魅力ある勘違い。手探りのなかで、もがき、ひとつひとつ掴み取っていくことで、変わっていくのかもしれません。少なくとも、僕はその言葉を反芻するなかで、これまでの経験が魅力あるものに自分のなかで消化されていきました。
そんな素敵なきっかけをくれる谷尻誠さんの「1000%の建築 僕は勘違いしながら生きてきた」、とってもおすすめです。ぜひ1度手に取ってみてくださいね。
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