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また次の春へ(重松清・扶桑社)を読んで

短編集。震災ネタの話がほとんど。

・トン汁
父と子供3人を残して母が亡くなった。父が一念発起して作った男料理のトン汁は、ひどい味付けだ。しかし、子供たちは母を偲んで食べ、家族の料理となった。父子みんながとても仲が良い、いい家庭だと思った。子供たちが大きくなって家庭を持つようになってもトン汁は思い出とともに家庭料理として引き継がれている。味付けを整えて、震災で被災した人たちに炊き出しをして振る舞って、ほのぼのとしたいい話だった。

・おまじない
子供の頃にいた地域が津波に飲み込まれた。いてもたってもいられなくて、そこへ車に乗って出掛けるが、何も出来ない無力さに打つひしがれる。子供の頃、いろんなおまじないを創作して友達に披露していたが、そのうちの一つが今も、この地域に残っていた事を知って、ちょっぴり嬉しくなる。そして、あの頃の同級生に会うおまじないをして話を綺麗に結んでいる。

重松清作品には、震災を扱った話が多い。震災で得た教訓は、津波が来る前に逃げる、そして、本書では、津波に逃げきれなかった人の話が出ている。

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