見出し画像

エジンバラからロンドンの旅(その7)〜私のお気に入りナショナル・ギャラリー

(承前)

久方ぶりのロンドン、是非行きたいと思っていた場所の一つがトラファルガー広場に位置するナショナル・ギャラリー。私のお気に入りの美術館です。正面玄関前で振り返ると、目の前にトラファルガー広場、「遂にロンドンに来た!」28年前に赴任し時のことを思い出します。

欧州にはルーブル始め、各地に素晴らしい美術館がありますが、ナショナル・ギャラリーほど、適度にコンパクトで、ルネッサンス期から印象派までの西洋美術史を概観できる施設はないと思います。しかも、今でも無料!

通常の開館時間は10時ー18時ですが、金曜日は21時まで開いているので、ロンドン勤務時はしばしば会社帰りに寄って、1回1部屋みたいな贅沢な楽しみ方をしていました。

今年で開館200周年を迎えるのですが、新館にあたるセインズベリー・ウイングが改装中。予約が推奨されているので時間指定の枠をゲットして訪問しましたが、特段チェックはありませんでした。

スペースが狭くなっているので、展示品が若干減少しているのですが、どうせ一日で全部観ることは不可能なので、都合が良いとも言えます。

それでは超独断的な、ご案内です。

時間のない方は、入口を入って中央ホールに進み、右側の印象派コーナーに行きがちなのですが、現状(4月11日現在)のフロアプランの場合、まずはインフォメーション脇の階段を降りて、Level 0からスタートすることをお勧めします。(部屋をクリックすると、展示作品を観ることができます)

ギャラリーFは1250ー1460年のイタリア美術。ルネッサンス期の手前の教会の祭壇画から、初期ルネッサンスのフラ・アンジェリコなどの作品を観ることができます。

部屋を進んでいくと、フィリッポ・リッピ(1406ー1469)の絵が登場し、いよいよルネッサンス絵画の開花が感じられます。リッピは“ビーナスの誕生“や“春“(どちらもフィレンツェのウフィッツィ美術館所蔵)で有名なボッティチェリの師匠ですが、彼の作品も展示されています。

ヴェロッキオ(c1435ー1488)の作品(含む彼の工房)を観ておいて欲しいと思います。レオナルド・ダ・ヴィンチは彼の工房で勉強しました。この後、レオナルドの作品を観ることができますが、リッピ〜ヴェロッキオ〜レオナルドという、当時のフィレンツェで刺激しあった関係を感じて下さい。

階段を上がりLevel 2に戻ると、Room12に出ますが、まずは奥まで進みRm9を観ることをお勧めします。ここには、ナショナル・ギャラリーで最も重要な作品(と私が勝手に言っている)、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452−1519)の“岩窟の聖母“が展示されています。何度観ても素晴らしいと思います。

2011年にナショナル・ギャラリーでレオナルド・ダ・ヴィンチ展が開催されました。この展覧会では、ルーブルにある別ヴァージョンの“岩窟の聖母“と、ナショナル・ギャラリー所蔵のものが並べて展示されるという画期的なことがありました。その当時は香港で勤務していたのですが、ロンドン出張の機会がありましたが、チケット(特別展は有料)は完売。生まれて初めて、美術館でダフ屋からチケットを購入したことを思い出しました。

こうしてレオナルドに至る、フィレンツェ派の流れを踏まえて、改めてRm9の作品を観ると、今度はヴェネツィア派の画家の作品が登場します。ヴェロネーゼ(1528ー1588)に代表されるように大画面の作品が出現、そしてレオナルドを継いだスーパースター、ティツィアーノ(1490ー1576、英語名Titian)を観ましょう。なお、超名作“バッカスとアリアドネ“はRm29にあります。

ルネッサンスを一通り終え、Rm9の先のRm16に入ると、オランダ絵画などが並び、絵の題材が大きく変化していることが分かります。フェルメール(1632ー1675)の“ヴァージナルの前に座る女“はここにあります。ナショナル・ギャラリーはもう1枚、“ヴァージナルの前に立つ女“を所蔵していますが、今は展示されていません。

見逃してはならないのは、Rm16に隣接する小部屋Rm17a。照明が落とされた室内にあるのは、レオナルドのドローイング“The Burlington House Cartoon(聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ)“も必見です。

奥に進むと時代はバロックです。Rm22でレンブラント(1606ー1669)を楽しみましょう、絵は神話や宗教から市民の姿へと変化します。「いや、そんなことはないぞ!」と、Rm18で先輩のルーベンス(1577ー1640)が主張し、レンブラントだって負けずにRm24で、旧約聖書を題材とする“ベルシャザルの饗宴“を披露しています。

「王様だっているんだぞ!」と、オランダからイギリスに渡り宮廷画家となった、アンソニー・ヴァン・ダイク(1599ー1641)が英国王“チャールズ1世騎馬像“を提示します。ティツィアーノ〜ルーベンス〜ヴァン・ダイクというラインを感じましょう。絵は時代と場所を超えてつながっています。

疲れて来たので、先を急ぎましょう。と言ってもRm28のヤン・ファン・エイク(c1395-1441)の不思議な絵“アルノルフィーニ夫妻像“はお見逃しなく。

こうして、Level 2のギャラリーに入って左側を観ると、絵画の進化がよく分かります。そして、「この後の画家は何を描けばいいの?」と思いながら、右側のエリアに移ってください。なるほど、この手があったかと感じることでしょう。そして、その先にあるのが印象派ということです。最後に、Rm41から始まる作品を楽しみましょう。

いやぁ、改めてナショナル・ギャラリーは凄いところだと感心しました。

さて、ロンドンに来て劇場に行かない手はありません。明日はそのことを。

続く


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集