見出し画像

放送法が求める「政治的公平」とは(再訪)〜TBS「報道特集」とデーブ・スペクター

高市元総務相の「捏造」発言に関して、問題の本質は違うところにあると書いた。その後も、各所の報道をそれなりにフォローしているが、3月25日放送のTBS「報道特集」が興味深かった。

今回問題になっているのは、2014ー2015年の動きだが、それに先立つ1993年のいわゆる“椿発言“を取り上げていた。93年は自民党が初めて下野した年、選挙後に行われた民放連の会合で、テレビ朝日の椿報道局長が、「自民党を敗北させないといけないと局内で話し合った」と発言したという問題だ。

椿氏は国会の証人喚問を受け、「暴言であり不適切であった」と謝罪した上で、特定の政党等を当選させる目的での報道は断じてないと発言した。

これに対して、田原総一郎、筑紫哲也、鳥越俊太郎といったキャスターが、この証人喚問が前例になると大変なことになると声を上げた。

そして、当時無所属の高市氏も「マスコミの表現の自由にも大いに係わる」と批判的な発言をしている。ごく当たり前のことである。

人間20年も経つと、そして政界でもまれると当たり前のことさえ分からなくなってしまうのかと思った。私は自分が還暦を越えたこともあり、若ければ良いとか“老害“といった姿勢について、頭では理解しても、完全には納得していない世代になった。しかし、高市氏の姿を見ると、やはり若い世代に交代させないといけないと、残念ながら思わざるを得なかった。

誤解なきよう、高市氏を個人的に攻撃しているわけではなく、彼女ですらこうなのだから、本物の“老害“は沢山存在するだろう。

放送では日本の対極にあるアメリカの状況も伝えた。アメリカではレーガン政権時に、放送局に対する公平原則を撤廃、完全に自由となった。そのために、一部のメディアは特定の政治団体に露骨に肩入れする報道を行い、その典型がFOX Newsである。放送はこれがトランプに繋がったとする。

一方で、G7の中で日本以外は政府がメディアを規制する仕組みにはなっておらず、第三者機関に委ねられている。政府がコントロールしている例は、ロシア・北朝鮮・中国であるとも。

毎日新聞に掲載された、デーブ・スペクターのコメントも興味深かった。上記のアメリカの状況について、FOXは共和党、MSNBCは民主党寄りの放送を行なっており、「アメリカは今、メディアリテラシーが低いんです」、対する日本は「十分すぎるくらいバランスが取れている」と言う。

その中で、「サンデーモーニング」は異色で、「『偏っている』ことがウリなんですよ。誰でも分かりきったことであり、視聴者はそれを知っていて見ているのです」、「(政治家は)目くじら立てる必要はないんです」と話している。まさしく、国民はバカじゃないという前提に立ってくれている。

そして、2014ー2015年の問題については、安倍政権だからこそ起こったとし、「政権批判を萎縮させようとしたのだと思います」としている。そして、「政治的に不公平だと決めつけて一つの番組をターゲットにするなんて、独裁国家がやること」と話している。

さらに、デーブさんは、「言論や報道の自由を守るため」、放送局側の自律性の重要さを説いている。

まさしくその通りであり、自律性を維持する責任は、我々受け取る側にもある。“知る権利“を守るためには、バカになってはいけない。そのことを実感する報道だった


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?