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前田陽一監督、小林信彦脚本作品〜「進め!ジャガーズ 敵前上陸」

「スチャラカ社員」、「神様のくれた赤ん坊」と前田陽一監督作品をチェックしたが、重要な作品を観ていないことに気がついた。1968年の「進め!ジャガーズ 敵前上陸」である。

この作品は、小林信彦が中原弓彦名義で脚本に参画しており、その著書でも触れられている。こういう映画も配信で観ることができる。よい時代になったものだ。なお、小林さんについては、これまでも何度か記事で触れている。彼の邦画・洋画ベストも完走していないのだった。

ザ・ジャガーズは、1967年にレコード・デビューしたグループ・サウンズの一つ。‘🎵若さゆえ 苦しみ 若さゆえ 悩み'の歌い出しで始まる“君に会いたい“が最大のヒット。

映画は、ボーカルの岡本信を主役として作られている。ビートルズが、1964年に「ハード・デイズ・ナイト」、1965年に「HELP!四人はアイドル」とコメディ・タッチの映画を制作、これに刺激を受けてグループ・サウンズを主役とした映画がいくつか作られた。「進め!ジャガーズ〜」もその一つである。

いたるところに、小林信彦のパロディ精神。それを映画に仕上げる前田陽一の技術が見える。

ザ・ジャガーズは本人役で登場するのだが、ひょんなことから国際的犯罪に巻き込まれる。犯罪団に追われるジャガーズ、そのドタバタを彼らの演奏シーンもはさみながら展開する。

犯罪団の首領が内田朝雄。後に、「仁義なき戦い」の長老役を演じる、いかにも悪そうな彼だが、この映画では007シリーズの「ゴールドフィンガー」そのものである。彼の下には、後の戦隊シリーズにつながったのではないかと思えるような、女性部隊も登場する。

前述の「HELP!」の雪山や、「夕陽のガンマン」を彷彿させる場面も登場し、この手の“たくらみ“が好きな人にはたまらない。

犯罪団の手下がてんぷくトリオの三波伸介と戸塚睦男。伊東四朗は、ジャガーズを助ける役で、登場する。当時、伊東は30歳前後だが、すでに上手い。小林信彦は、喜劇人としての伊東四朗を讃えるが、そのルーツの一つがこの映画にあるのではと思う。

ヒロイン役に、中村晃子。1967年に“虹色の湖“がヒット、私が6歳になる年だが、この曲はよく覚えている。そして、劇中でもこの曲を披露する。

怪演という感じなのは、五代目三遊亭圓楽。“星の王子さま“と言うニックネームを、まんま活用している。

パロディ精神に極みは、後半の内田朝雄の登場シーン。なんと、ゴダールの「気狂いピエロ」である。

最後のカーテン・コールまで、楽しませて頂きました。

前田陽一/小林信彦が組んだ、最初で最後の作品である




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