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高校生が出会った“樹村みのりの世界“(その3)〜「ふたりが出会えば」

(承前)

前2回で紹介した作品を発表した頃、樹村みのりは青年誌にも進出しています。「ふたりが出会えば」(電子書籍版)は、増刊を含む「ビッグコミック・オリジナル(以下、オリジナル)」に掲載された作品を中心に編まれています。底本は、秋田書店Bonita Eveコミックスと思われます。

最初の作品「わたしの宇宙人」はこちらの樹村みのり作品リストによると、1977年5月の「オリジナル」増刊に掲載されています。また、前回に紹介した「カッコーの娘たち」にも収録されています。樹村みのりの単行本は様々な出版社から発行されていますので、こうした重複が多数あります。

「わたしの宇宙人」は、友人の結婚披露パーティーに仲良し4人組で参加したリツコさん。ついつい、飲みすぎてしまう体質で、二日酔いの朝、起きてみると。。。

女性誌に掲載されていてもおかしくない作品ですが、男性読者も意識してか、男性”宇宙人”の目線をしっかり入れています。

この作品に続いて、本書所収の「結婚したい女」(1978年)、「ふたりが出会えば」(1979年)、「直美さんが行く」(1979年)が時間を掛けながら連作として発表されます。リツコさんを皮切りに、仲良し4人組が一人づつ結婚を果たしてゆきます。

”菜の花”シリーズともオーバーラップして書かれたわけですが、あの4人の女子大生の未来の話にも見えます。男性目線で一連の作品を読むと、樹村みのりさんから、「男ども、女性のことをもっと理解しなさいよ」と言われているような気もします。

「前略 同居人サマ」は、上記の連作に挟まれて、「オリジナル」本誌の1977年6月発表されています。父と娘の話ですが、戦争を経験した父親がいなくなりつつある中、長く読まれるべき佳品です。

「クリームソーダ物語」は、「ヤングジャンプ」に1982年3月に発表された、男女の出会いを描いた小品です。

改めて考えると、青年誌に女性の視点が持ち込まれた初期段階だったのかもしれません。子供の読み物から、大人のエンタメへと”男性マンガ誌”の世界が広がる中、さらにそのフロンティアが拡大していった時代の先駆者、そんな役割を樹村みのりは果たしていたように見えます。

なお、本作品集には、”菜の花畑”シリーズの後半、「奈の花畑のむこうとこちら」からの三作が収録されています。

女子大生4人組が住む菜の花畑の家のむこうがわに、男子学生が引っ越してからのエピソード。本作品集の全体感からすると、調和の取れたセレクションと言えます。

ただ、重複して保有することになるのですが。。。。


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