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巨匠の魅力を余すことなく見せてくれる〜マーク・カズンズ監督「ヒッチコックの映画術」

監督別にその作品を観た回数トップを問われたとしたら、おそらくアルフレッド・ヒッチコックということになるだろう。作品数もさることながら、定期的に見返したくなるので、複数回観ているタイトルも多い。

基本的に面白い映画が多い。さらに、細かいところにこだわりがあり、観るたびに発見がある。随分昔に購入したのだが、「定本 映画術」(晶文社)という、フランソワ・トリュフォーがヒッチコックの各作品についてインタビューした本がある。観終わった後、この本をチェックするのも楽しい。

そんな映画監督を取り上げた「ヒッチコックの映画術」という映画が公開されている。ちょっと出遅れたかと思ったが、好評のようで新宿武蔵野館などでは来週まで上映されており、観ることができた。

映画は、ヒッチコック“自身“が、様々な自作の場面を見せながら、自分のスタイル・志向を語るという形式で進む。私にとってお馴染みの作品もあれば、サイレント時代のものなど未見のものも含まれる。

ヒッチコックは映画を通じて観客と遊んでいると言い、観客も遊びたいと考えていると話す。そのために、様々な仕掛けを映画の中に施しており、自分がなぜ何度もヒッチコック作品を見るのかを解き明かしてくれる。

彼は見るものの予測を裏切り続けようとする。それが故に、私は新鮮な驚きを常に感じることになる。さらに、イギリス人的なユーモアもふんだんに取り入れられており、これもまた私の大好物である。

ヒッチコック映画の魅力を一つ書き漏らしていた。それは、女優の美しさである。グレース・ケリーイングリッド・バーグマンキム・ノヴァクなどなど、彼女たちの姿を大きなスクリーンで久方ぶりに見たが、もう吸い込まれそうである。そして監督は彼女たちに魅力を存分に映してくれる。“魅力“はヒッチコック独特の色気・セクシュアリティーを含む。

さらに、女優のみならず、男優も名優揃いである。ジェームズ・スチュアートケーリー・グラントグレゴリー・ペック、脇役もピーター・ローレクロード・レインズ、いくらでも続く。こうした俳優陣が、ヒッチコックが精緻に作り上げる映画を支えるのだから良い作品になるのは必然である。

監督はマーク・カズンズ。映画監督でもあり、「The Story of Film」という膨大な数の映画を網羅した本も上梓しており、同書をベースにしたTVシリーズ、その続編と言える「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」(2021)という映画も発表している。

そんな彼が、ヒッチコック愛を全開にし、作り上げた映画ファン必見の労作である。

面白かったのですが、危険です。また、ヒッチコック映画を観たくなりました。宿題が増えます。。。



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