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旅の記憶38〜ロンドン赴任直後の出張先はバルセロナ

土曜日朝のバラエティ番組「サタプラ」を見ていたら、バルセロナが特集されていた。私は、ふとかつてのバルセロナ訪問を思い出した。

1996年9月、私は念願の海外赴任となり、ロンドンに降り立った。勤務地は、ロンドンの証券現地法人、日本で従事していた社債の引受関連業務を、その本場で行うことになった。

一つの役割は、欧州の発行体(債券発行で資金調達する会社や諸団体)を訪問し、市場や投資家の動向を説明しながら、我々の能力をアピールし、上手くいけば起債(債券発行)を取りまとめる主幹事を獲得することである。

ロンドンのオフィスに初出勤すると、上司が「来週月曜日、なにも予定ないよな。ちょっとバルセロナに出張して。マドリッドの事務所から、顧客訪問のリクエストが来てるんだけど、皆忙しくて行けないから」と。

こうして、赴任早々、出張させられる羽目になった。しかも一人である。なお、私はこの時に、初めてロンドンの地に足を踏み入れた。欧州大陸は行ったことがなかった。

正確に言うと、一人ではない。上司からの指示は、「バルセロナのXXXにあるYYYというカフェにZZ時に行けば、マドリッド事務所のアルフォンソっていう担当者と落ち合えるから。一緒に顧客訪問して」というものだった。

もちろん、このアルフォンソという人には会ったことも話したこともない。どうやって見分けろと言うのだ。当時は携帯電話が普及し始めた頃で、誰もが持っているわけではなかった。私はもちろん携帯していない。今の生活からは想像もつかない。

結論から言うと、私は無事アルフォンソと出会うことができ(考えてみれば、日本人がほかにいる確率は低いので、彼の方が私を見つけるはずだった)、カタルニア州政府とバルセロナ市などを訪問して、無事ロンドンに戻ることができた。

それにしても乱暴な話である。

この時、どんな話を顧客としたのか、まったく覚えていない。しかし、前夜のディナーだけは記憶に残っている。

日曜日の夕方ホテルにチェックインし、ホテルの人に一人で食事できる適当なレストランはないかと聞いた。ホテルの人が、メモに手書きしてくれたののは「Los Calacoles」である。そのメモのイメージも、頭の中に残っている。

バルセロナのメインストリート、ランブラス通りから少し入ったところにレストランはあった。カジュアルだけれど、歴史を感じる店内は、バルセロナで最初に食べる場所としては最高だと感じた。

1835年創業らしき老舗、“Calacoles“とはスペイン語で“カタツムリ“。メニューにも、名物として載っている。フランス料理のエスカルゴは大好きなので、当然に注文した。

パセリとガーリックバターでの味付けが一般的なエスカルゴと違い、トマト風味のあるソースと調理されていて、ツノも見えるカタツムリ感満点の姿だった。

そしてこれが美味い!

その後、数えきれないほど行くことになる出張の最初は、とても幸運な巡り合いからスタートしたのだった。

1〜2年後、家族でのスペイン観光計画で、最初に選んだ場所はバルセロナ。このレストランに行き、やはりカタツムリを食べた。

老舗は今でも健在のようだ。ザグラダ・ファミリアの建設もずいぶん進んだ様子。再訪したいなぁ!


*旅の記憶37はこちら


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