トンデモ精神科医・伊良部が帰ってきた!!〜奥田英朗著「コメンテーター」
奥田英朗という作家は、多彩な作風を持つ。昨年の「リバー」のような、シリアスなミステリータッチの作品もあれば、青春小説、家族小説シリーズなども書いている。
そんな彼が直木賞を取ったのは、2004年の「空中ブランコ」。読みながら、つい吹き出してしまう、精神科医・伊良部シリーズの第2作だった。
「イン・ザ・プール」(映画化もされ、義弟が編集を担当した)、「空中ブランコ」、 2006年の「町長選挙」と、私は楽しんでいたが、以来、伊良部は鳴りを潜めた。
そして17年の時を経て、ついに医学博士・伊良部一郎が、新作「コメンテーター」で復活した!
一流総合病院の息子で精神科医、診察室はなぜか病院の地下フロアにあり、患者に注射することで、気分を高揚させる。彼の診察・助言は常人の感覚を逸脱しているー 今回の患者はワイドショー担当のテレビマン、コンサート・ピアニスト、デイ・トレーダーなどなど。
奥田先生! 最高です!
行きつけの有楽町三省堂書店、5月25日の新刊棚においては、村上春樹を押しのけ、堂々の売り上げ1位になっていた。いかに多くのファンが、伊良部復活を待ち望んでいたかである。
細かく内容を紹介する必要はない。とにかく、読んでみて下さい。電車の中で読むと、笑ってしまうので危険かもしれません。前3作から読む必要も全くありません。
伊良部は本書で、現代において人々を蝕む様々な問題を治療しています。それもとんでもない方法で。あなたの悩みも、伊良部医師が解決してくれます。
様々な箇所で、私も納得したのだが、その一つはアンガーマネージメントのくだり。
煽り運転を受けたり、傍若無人な若者に腹を立てていたら、過呼吸やパニック障害に陥ってしまう。そんな営業職の男にドクター伊良部は、アンガーマネージメントができていないことが原因だと喝破する。
<「すぐに怒るのも問題だけど、ちゃんと怒らないのも問題なの」と付け加えた。「他人のルール違反や道徳に外れた行いを見かけても、対立を避けて口をつぐんじゃう。それで怒りを溜め込んで、自身の中で爆発しちゃうわけ」>
この“爆発“が、過呼吸やパニック障害につながると、伊良部は説くのだった。私は合点がいった。私の妻は、私の様々な行いに対して怒る。“足を引きずって歩くな“、“食卓で居眠りをするな“、“朝はできるだけ静かに支度をしろ“などなど。彼女は私の行いが不愉快な場合は、怒りを溜め込まず、常に発出している。こうして、過呼吸やパニック障害など心身の問題が起こらないよう、アンガーマネージメントを実施ていていたのだ。
妻がパニック障害になるよりは、怒られた方がマシである。そう考えることにしよう。ドクター伊良部、ありがとう!!
ん、私自身は妻の行いに対して、ちゃんと怒っているだろうか。もしかしたら、怒りを溜め込んでいるのでは。
いやいや、口をつぐんでいた方が良い。怒ったとたん、過呼吸やパニック障害などとは比べ物にならないくらいの、悲劇が私を襲うに違いない。
アンガーマネージメントは重要である
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