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真の「聞く力」とは〜旧統一教会を“魔女狩り“にしないために

「聞く」という言葉を広辞苑で引くと、まず最初に<言語・声・音などに対し、聴覚器官が反応し活動する>とある。その意味の下に、もう一段細かい意義が列挙されているが、その一つは<よく聞いて処理する>である。

精選版日本国語大辞典では、5番目に<是非を判断する。判断して処置する>とある。つまり、「聞く力」というのは、単に人の意見を聞くだけではなく、それを咀嚼してアクションに転換する力であり、岸田首相が強調したのは、まさしくそのことだろう。その力は、本当にあるのだろうか。

2日続けて、新聞の報道に驚いた。10月19日の朝日新聞の見出しでは<解散命令請求の要件 首相「民法の不法行為入らず」>とある。宗教法人法には解散命令の要件として、<法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたとき>と書かれている。

この“法令“に民法は含まれないと、国会の答弁で首相が発言したのである。私はこれに驚いた。日本は法治国家であり、情緒に流された“魔女狩り“のようなことはあってはならない。したがって、この法律の解釈は極めて重要である。刑法の違反に限定すると、ハードルはかなり高くなり、この発言は、“解散命令“はないと宣言してようなものだと私は思った。

これまで、宗教法人が解散命令を受けたのは、刑法に違反したケースのみである。解散命令は、行政等の申請を受けて裁判所が判断する。オウム真理教に対する解散命令の際、裁判所は「刑法」に違反したと言及した。 これを踏まえ、官僚等が首相に進言し上記の答弁になったと思われる。

政府は同時に消費者契約法の改正も目指しており、乱暴な“解散命令“は“魔女狩り“となるので、解散命令は実質的にはあきらめ、被害者保護は消費者契約の方で対応することかとも考えた。「聞く力」を発揮し、“判断し処置“したのだろう。それはそれで、一つの見識ではある。私は、ちょっと納得できなかったが。

今朝は、さらに驚いた。一夜明けると、朝日新聞の見出しは<首相「民法の不法行為も」>とある。“等“には民法も含まれるということだ。これほど重要な法律の解釈を、一日で変更するとは、一体何をやっているのだろう。(もっとも、民法の不法行為を含めても、“解散命令“へのハードルは高いと思うが)

明らかに、世の中の反応を予想して、朝令暮改したとしか思えない行為であり、国会を馬鹿にするにも程がある。しかも、十二分に予想された展開であるにも関わらず、あわてふためいた対応である。

行政の長として、法律の解釈は極めて重要なものであり、そのことは国葬問題で十分学んだはずである。法律に則りながら、肝を据えて解釈する局面では重い決断し、ぶれない。一方で、丁寧な説明で理解を求める。それが首相の役割である。それなのに、この迷走ぶりである。

どうも「聞く力」はなさそうだ


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