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再び「水車小屋のネネ」に導かれて〜「ハングオーバー!」、副題は“消えた花ムコと史上最悪の二日酔い“

先日、津村記久子の小説「水車小屋のネネ」と、同作の中で重要な位置を占めると考えた映画「グロリア」の感想を書いた。この小説には、「グロリア」以外にも、「ブルース・ブラザース」「レイジング・ブル」といった有名映画のタイトルが登場する。

その中で気になったのが、蕎麦屋の浪子さんのこのセリフである。<「今度映画観に行こうって話してたのよ。《ハングオーバー!》の続編が来るからって>。浪子さんの主人、守さんが一作目を<めちゃくちゃ気に入ってて>と。

続編があるということは、第一作が相応にヒットしたということだろうが、私の視界には全く入っていない。調べてみると、2009年公開(日本は10年)のトッド・フィリップス監督「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」のことだった。当時は、ロンドン在住だったので、情報に偏りがあったのだろう。

Hangoverとは二日酔いのこと。訳語が入った副題を見ても、かなりバカバカしいコメディ映画のようなので、フライト中に気軽に観るには良いと思いダウンロード、「白い巨塔」の後に見始めた。(UーNEXT、Netflixなどで配信あり)

2日後に結婚を控えたダグ、友人フィル(ブラッドリー・クーパー)ら4人組でラスベガスに旅行する。いわゆる“バチェラー・パーティー“で独身最後のバカ騒ぎが目的である。この映画の上手いところは、一夜の間に何があったかは示されず、翌朝“二日酔い“状態の彼らの前に展開されている状況までジャンプするところである。

お酒を飲む方は、多少の経験があるだろう。翌朝目覚めた時の状況が思いもかけないものであり、前夜の記憶を手繰り寄せながら、どうしてこんなことになったかを反芻したことが。

彼らの最大の問題は、結婚を控えたダグがいないこと。彼を見つけ出さないことには、大変なことになる。こうして、ダグを除く3人が行動を開始する。ある意味、ミステリー仕立てになっており、そこに繰り出される数々の出来事は、“ひょっとしたらアメリカ人だとやりかねない“と私に思わせる、絶妙の水準にある。

3人組の造形も、コントラストが見事についていて、役者陣も達者。えっと思うような人物が本人役で登場するのも楽しい。

これを映画館に観に行くかと訊かれたら、私はちょっと躊躇すると思うが、吹き出しながら、そしてお酒を飲みながら、難しいことを考えずに観るには、最高のコメディ映画である。

前述の通り、本作は2011年に続編「ハングオーバー! 史上最悪の二日酔い、国境を越える」、さらに2013年「ハングオーバー!!! 最後の反省会」が制作された。全て監督はトッド・フィリップすで、彼は2019年にまったく毛色の違う映画「ジョーカー」を監督・共同脚本する。さらに、ブラッドリー・クーパーとの共同プロデュース、自身の監督・共同脚本による続編「Joker: Folie a Deux」の公開が予定されている。

「ハングオーバー!」、「水車小屋のネネ」とはまったく通じ合わない世界(もしかしたら、そうでもないかも)、日常を忘れるには最適の作品だ


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