見出し画像

野生力を尊敬した:遊園都市の進化-スクワット作戦会議in渋谷

走った。
走った、走った。
橋を越え、富士山が見える場所まで。
走った、走った。


途中で、鳩が嘴をくわえあっていた。
愛だ。・・・愛なのか?


走った後は心も体も軽くて爽快になる。
シャワーを思い切り浴びる。

体を拭いて、すぐにメイクにとりかかる。
わたしオリジナルのWORK OUT用の音楽のプレイリストをそのままかけ続けて、走っているときの高揚感を保つの。その勢いで、メイクとかしちゃうと、そりゃまあ、気分がいいものよ。

目元はボルドーをベースにキラキラにする。アイラインは漆黒で、くっきりひく。顔が殺風景だって言われるから、メイクのほどこしがいがある。と思うことにしている。今では、眼鏡キャラがすっかり定着しているけど、もともとは眼鏡をかけるのは好きじゃなかった。

これから、神泉に向かうの。吉祥寺に住んでいた頃は、神泉は毎日通っていた。通り過ぎていた。あんまり降りたことがない駅。円山町とか行くときは渋谷から歩いたもんなあ。神泉駅を利用するのは、松濤美術館に行くときくらいかなあ。

駅に降りると、陽がうっすらと落ちはじめていた。
道端には「静かできれいな神泉の街づくりにご協力を」というような文言が、水色っぽい、いかにも清潔そうな色で書かれた看板が電信柱にたてかけられていた。その看板のとおり、静かで、整っている。


それにしても、神の泉って、神々しい地名だよね。キレイなジャイアンが出てきそう。

どうやら、この地にあった泉からくんだ水で仙人が不老長寿の薬を作ったとされる伝説があったからだそうな。神を感じるほどの泉があったのですね。

そこから徒歩数分。本日の目的の「遊園都市の進化-スクワット作戦会議in渋谷」の会場、「RELABEL Shinsen(第一ミドリマンション)」に到着!入るや否やエアロゾルスプレーから噴射された粉、色、においがこびりついている。そしてなぜか、豚汁の匂い。道中の看板が思い描く「静かできれいな神泉の街」とは、ちょっと違った。いや、だいぶ違った?看板、残念。あなたの想い描く理想の世界はこの建物の中にはないみたい。

「遊園都市の進化」は、取り壊し直前の6階建てのビルを使って、急遽企画された1日限りのアートプログラム。たぶん1週間くらいしか準備期間がなかったはず。もっと短かったかな?が、しかし!そんな短期間にもかかわらず、50名ものアーティストが集まって実現したという、アーティストのみなさま、そして企画者である西田編集長の底力を感じずにはいられない企画だったのですよ〜。西田編集長曰はく、アーティストたちの野生の力がハンパないと。

画像3

その野生力は、すぐにわたしを襲ってきた。
あ~~~1人で乗り込むんじゃなかったと、一瞬後悔したけど、わたしも野生の客人として受けてたとうと思い、意を決して、1階、2階、3階・・・と階段をコツコツとのぼっていった。

階段、リビングも、風呂場も、トイレも、キッチンも、ベランダもすべてが彼らの強烈なパンチをくらっていた。破壊と創造が隣り合わせで、シヴァ神がひとあばれでもしたのかのよう。

画像5

豚汁のにおいが濃くなってきた。4階。9名の映像作家の作品を豚汁をいただきながら、鑑賞できる「内見フロア」。相変わらず、高田冬彦さんが好き。いろいろなテーマの作品があるんだけど、どれもどこかにエロスを感じられる一方、子どもごころをくすぐられてしまうんですよね。いや、エロティックだからこそ、子どもごころがくすぐられるのかしら。いずれにせよ、良い悪夢が見れそうな作品で好きなのです。
もはや、1人で豚汁食べながら壊れかけのビルで映像作品を見ていると、最初のビビりな気持ちは吹っ飛んでいた。「わたし、豚汁たべながら、1人でなにしてるんだろう?」だんだん、おもしろくなってくる。

画像5


正装をして一心不乱に「アーーーー」って発声し続けている人
鏡にルージュで書かれた伝言
屋上にたむろする野生

画像4


混沌?無秩序?いや、アーティストや企画者のまじめさを感じたアートプログラムだった。野生力ってただ、やんちゃなだけじゃないんだと思う。
短期間でこれだけのエネルギーを放出できるのは、常に考え、創作意欲に満ちながら生きているからではないかしら。『野生の思考』力 かな。
だから、アーティストたちと企画者をただただ尊敬した。



すっかり暗くなった帰り道。
帰り道だから、あの看板はわたしに背を向けてる。
ふり返ってみたけれど、もう暗いから、あの言葉は目視できなかった。

神泉の駅に戻ってきた。
神の泉かあ・・・ん、
もしかして・・・神泉の神はシヴァ?


《関連情報》
遊園都市の進化-スクワット作戦会議in渋谷
期間:2020年2月23日(ONLY ONE DAY & done)
最寄駅:神泉
http://clt981295.bmeurl.co/9DA342F
togetter:  https://togetter.com/li/1473775

画像1


【プロフィール】
中村翔子(なかむら・しょうこ)
本屋しゃん/フリーランス企画家
1987年新潟生まれ。本とアートを軸にトークイベントやワークショップを企画。青山ブックセンター・青山ブックスクールでのイベント企画担当、銀座 蔦屋書店 アートコンシェルジュを経て、2019年春にフリーランス「本屋しゃん」宣言。同時に下北沢のBOOK SHOP TRAVELLERを間借りし、「本屋しゃんの本屋さん」の運営をはじめる。本好きとアート好きの架け橋になりたい。 バナナ好き。本屋しゃんの似顔絵とロゴはアーティスト牛木匡憲さんに描いていただきました。https://honyashan.com/


【こちらもよろしくです】
わたしたちの南方熊楠―敷島書房と本屋しゃんの往復書簡
敷島書房の一條宣好と本屋しゃんの中村翔子は、それぞれにひょんなことから南方熊楠に出会った。そんな2人が、1冊の本を『街灯りとしての本屋。』をきっかけにお互いを知った。この誌面は、南方熊楠と一冊の本の縁によって出会った2人の本屋の往復書簡である。
https://note.com/kumagusutegami15

いつも読んでいただきありがとうございます。この出会いに心から感謝です!サポートをはげみに、みなさまに楽しい時間と言葉をお届けできるようがんばります。