わたしたちの南方熊楠ー敷島書房と本屋しゃんの往復書簡

敷島書房の一條宣好と本屋しゃんの中村翔子は、それぞれにひょんなことから南方熊楠に出会っ…

わたしたちの南方熊楠ー敷島書房と本屋しゃんの往復書簡

敷島書房の一條宣好と本屋しゃんの中村翔子は、それぞれにひょんなことから南方熊楠に出会った。そんな2人が、1冊の本を『街灯りとしての本屋。』をきっかけにお互いを知った。この誌面は、南方熊楠と一冊の本の縁によって出会った2人の本屋の往復書簡である。写真:南方熊楠顕彰館(田辺市)所蔵

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往復書簡はじめます。       「わたしたちの南方熊楠-敷島書房と本屋しゃんの往復書簡」

       画像:南方熊楠顕彰館(田辺)所蔵 南方熊楠(みなかた・くまぐす 1867年5月18日 ー1941年12月29日)。 明治時代に活躍をした生物学者で民俗学者。 熊楠の好奇心と研究領域は、変形菌、きのこ、密教、超常現象、妖怪、神社合祀反対運動、セクソロジー・・・と広大だ。無限大。 敷島書房の一條宣好と本屋しゃんの中村翔子は、それぞれの人生の然るべきそれぞれのタイミングで、ひょんなことから南方熊楠に出会った。 最初は、2人とも「南方熊楠」を読むこともまま

    • 手紙18:中村翔子さま「人文科学と自然科学の横断」一條宣好より(2022年6月19日)

      中村翔子さま 2022年6月19日(日)晴れ時々曇り 私が住んでいる山梨県甲斐市は、県庁所在地である甲府市のすぐ隣に位置 しています。「住みごこち」について意見は様々あると思いますが、私と しては都会的な要素と自然豊かな側面がバランスよく共存していて、なか なか魅力的な場所ではないかと感じます。 ちょうど今は田植えがほぼ終わった季節。配達でまわっているエリアや店 の周辺には、現在でも田んぼが結構見られます。そして田んぼや民家を飛 び回っているツバメ。今回のお便りは可愛らし

      • 手紙17:一條宣好さま「街灯りについて考える」中村翔子より(2021年12月1日)

        一條宣好さま 2021年12月1日(水)豪雨からの快晴 昨晩遅くから激しい雨が降り、なかなか寝付けませんでした。いや、普段からあまり寝付けないわたしです。雨にうなされながら目を覚ますと、12月になっていました。2021年も残すところあとひと月。 ことあるごとに、頭の中には南方さんと一條さんのお顔が浮かぶ日々。 それにもかかわらず、前回、一條さんにお手紙をいただいたのが5月なので、お返事を書くのに半年もかかってしまいました。スピーディーな令和の世を生きているとは思えない、

        • 手紙16:中村翔子さま「南方熊楠をめぐって、まわりのあれこれが結びついていく幸福感」一條宣好より(2021年5月16日)

          中村翔子さま 2021年5月16日(日) 中村さんから前回いただいたお手紙、これまで以上にたくさんの素敵な いろいろでいっぱいで…何度も何度も読み返しました。 東京都庭園美術館で開催された「生命の庭―8人の現代作家が見つけた 小宇宙」展のこと。山口啓介さんの「カセットプラント」。山口さんの 「震災後ノート」について、中村さんが南方熊楠の行っていた「抜書を すること、手書きをすることの意味や可能性」と結びつけていたこと 岡山「蟲文庫」の田中美穂さんがお書きになった『わたし

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        往復書簡はじめます。       「わたしたちの南方熊楠-敷島書房と本屋しゃんの往復書簡」

          手紙15:一條宣好さま「南方さんをそばに感じる日々」中村翔子より(2021年1月3日)

          一條宣好さま 


あけましておめでとうございます。 
昨年はとってもお世話になりました。 
2021年もどうぞよろしくお願いいたします。 


昨年2020年は一條さんとの文通がはじまり、常に「南方熊楠」がそばにいてくれた、
そんな1年だったなあと感じています。一條さんからお返事をいただくたびに、一條さんの思慮深さと、
熊楠への愛のデカさ、そしてこの世界への温かい眼差しに、わたしの心はいつもポカポカです。


 こんな思いを巡らせながら、お返事が大変に遅くなってしまっ

          手紙15:一條宣好さま「南方さんをそばに感じる日々」中村翔子より(2021年1月3日)

          手紙14:中村翔子さま「戦争が奪うもの」 一條宣好より(2020年9月7日)

          中村翔子さま 2020年9月7日(月) 大変・たいへん・taihenご無沙汰してしまいました。 中村さん、noteをご覧くださっているみなさまに心よりお詫び申し上げます。  きょうは目まぐるしくお天気が変わる一日でした。強い雨もカッと照 りつける日差しもセットとなっていて。うちの本屋は道路に面してお り、小中学生の通学路となっています。登校の際には傘を差していた生 徒たちも、下校時には傘なしで歩いていきました。  中村さんは「雨」にちなんで思い出す本を、心の本棚に持っ

          手紙14:中村翔子さま「戦争が奪うもの」 一條宣好より(2020年9月7日)

          手紙13:一條宣好さま「生の幸福」中村翔子より(2020年6月2日)

          一條宣好さま 2020年6月2日(火)じめっとしております。 そろりそろりと、こんにちは! 一條さんに「なにィ!?4月も半ばをすぎた?!」と、お手紙をいただいてですね、今、こうしてわたしが筆をとっているのが、6月2日です。「なにィ!? 6月がはじまったって?!」というわけです。外出自粛! STAY HOME! で、たっぷり時間ができると思いきや、やはり24時間は変わらずですね(汗) そんなSTAY HOMEの期間中、敷島書房さんの毎朝の配達&たんぽぽツイートに癒されてい

          手紙13:一條宣好さま「生の幸福」中村翔子より(2020年6月2日)

          手紙12:中村翔子さま「南方熊楠、タゴール、そしてボブ・ディラン。」一條宣好より(2020年4月16日)

          中村翔子さま 2020年4月16日(木) お便りありがとうございました。 中村さんが出会った、佐々木美佳監督の映画「タゴール・ソングス」。タ ゴールはインドの詩人であり、アジア初のノーベル文学賞に輝いた人物で 代表作に『ギーターンジャリ』がある…という程度の、事典項目的なこと しか恥ずかしながら知りませんでした。意識しませんでしたが南方熊楠と 同時代を生きた方だったのですね。 実は、熊楠とタゴールには面白い「縁」があります。熊楠の知人だった哲 学者の平沢哲雄は、タゴー

          手紙12:中村翔子さま「南方熊楠、タゴール、そしてボブ・ディラン。」一條宣好より(2020年4月16日)

          手紙11:中村翔子さま「ボブ・ディランに乗せて、熊楠works」一條宣好より(2020年4月1日)

          中村翔子さま いつもお世話になっています! 南方熊楠顕彰会「熊楠WORKS」に中村さんも参加した標本見学会のレポートが掲載されているので1部さしあげます。 新年度が始まりますね、変わらずお元気でご活躍ください♪ 2020年4月1日 一條宣好 ※ポストカード:BOB DYLAN1969 photograph by (C)ELLIOTT LANDY 南方熊楠顕彰会の機関誌「熊楠works」2020年4月1日号 中村も参加した「第43回 南方を訪ねて in つくば」の

          手紙11:中村翔子さま「ボブ・ディランに乗せて、熊楠works」一條宣好より(2020年4月1日)

          手紙10:一條宣好さま「美しい普通の日々」中村翔子より(2020年3月30日)

          一條宣好さま 3月30日(月)昨日は雪!!でしたね!!季節外れだけど、雪国出身者として、雪ってちょっと嬉しかったりもします。 拝復。嗚呼、返信ができていないメールがたまっているわ・・・と、そっと受信トレイを見て見ぬふり(しちゃいけません!)・・・早く返事を書かなくちゃ、そんなプレッシャーが日々のしかかってきます。しかし、手紙はどうでしょうか。今日「が」、お返事を書く日だなという感覚が自然とやってきて、ペンをとります。ゆっくりと言葉を選び、ああでもない、こうでもない・・・と

          手紙10:一條宣好さま「美しい普通の日々」中村翔子より(2020年3月30日)

          手紙9:中村翔子さまへ「困難な状況の中、南方熊楠の最期を想う。」一條宣好より(2020年3月18日)

          中村翔子さま 3月18日(火) しばらくご無沙汰してしまいました。年度末でいろいろ雑用が重なって…、いや、言い訳はやめにしましょう。特に締め切りを設けていない往復書簡ということでお許しください。もっとも、我らが南方熊楠先生はすぐに返事が来ないと機嫌が悪くなるタイプだったようですが(笑)。 さて、ここ一か月ほど、世の中が新型ウイルスの話題で持ちきりでしたね。未だ終息の時期も確定されず、「ここ一~二週間が正念場」という言い回しが自動延長され続け、身近なところでは5月中旬のイ

          手紙9:中村翔子さまへ「困難な状況の中、南方熊楠の最期を想う。」一條宣好より(2020年3月18日)

          手紙8:一條宣好さま「わたしが生まれ育った土地を描いた絵葉書にびっくり!」中村翔子より(2020年3月17日)

          ※この手紙は、一條さんから2月19日にいただいたお手紙「敷島書房、50周年の記念です」へのお返事です。 一條宣好さま 嗚呼・・・すっかりお返事が遅くなってしまいました。 いつの間にやら3月も半ば。気づくと桜が咲きはじめています。 春、なんてわくわくする季節でしょうか。 そして、お店の50周年!!おめでとうございます祝!! という気持ちとともになんだか嬉→ →(って、なんで右側から書きはじめたんだ^^;) 手ぬぐい!!ありがとうございます。熊楠が描いたねこ柄とは!か、

          手紙8:一條宣好さま「わたしが生まれ育った土地を描いた絵葉書にびっくり!」中村翔子より(2020年3月17日)

          手紙7:一條宣好さま「『本屋風情』は一條さんとの出会いを思い出す日記になりました」中村翔子より(2020年2月22日)

          ※この手紙は、一條さんから2月16日にいただいたお手紙「本屋の息子、『本屋風情』をきっかけにして南方熊楠と出会う、の巻」へのお返事です。 一條宣好さま 2月22日(土)今日はいいお天気だなあと、いつもより背筋を伸ばして歩いていたら、梅の花が咲いているのをみつけました。上を向いて歩くのって大事ですね。春を見逃すところだった。 一條さんは、お手紙が苦手だったのですか!一條さんの字は整っていてすてきだし、お手紙を書くことが身近にある方なのかな~と思っていました。 わたしは、母

          手紙7:一條宣好さま「『本屋風情』は一條さんとの出会いを思い出す日記になりました」中村翔子より(2020年2月22日)

          手紙6:中村翔子さまへ「敷島書房、50周年の記念です」一條宣好より(2020年2月19日)

          中村翔子さま 先日はありがとうございました! たくさんたくさん嬉しかったです♪ 店の50周年記念でお客様へお渡ししている手ぬぐいをお送りします。 熊楠グッズは「お見舞い」です(笑) 引き続きよろしくお願いします! 2020.2.19 一條宣好 ※ポストカード:向井潤吉《北国街道白雨(新潟県西蒲原郡巻町稲島)》 1975年、カンヴァス、油彩、50.3×60.8㎝ 敷島書房 50周年のごあいさつ 毎度お引き立ていただきまして誠にありがとうございます。 2020年、

          手紙6:中村翔子さまへ「敷島書房、50周年の記念です」一條宣好より(2020年2月19日)

          手紙5:中村翔子さまへ「本屋の息子、『本屋風情』をきっかけにして南方熊楠と出会う、の巻」一條宣好より(2020年2月16日)

          中村翔子さま 2月16日(日)きょうの山梨は冷たい雨です。ここ数日は季節はずれの暖か さだったので、寒さが身にしみます。けれど暦の上では立春を過ぎ、梅の花 も咲き始めました。きっともう少しの辛抱ですね。 先日は「荒木優太×田村義也 南方熊楠に学ぶ、勝手にはじめる研究活。」開催と司会、お疲れさまでした。前回のお便りにお加減がすぐれないとあり、当日もつらそうにお見受けしました。しかし、私がお返事を書くのにモタモタしているうちにお元気になられたことと思います。今年は数日おきに寒さ

          手紙5:中村翔子さまへ「本屋の息子、『本屋風情』をきっかけにして南方熊楠と出会う、の巻」一條宣好より(2020年2月16日)

          手紙4:一條宣好さま「おっと、お忘れ物ですよ〜」中村翔子より(2020年2月9日)

          一條宣好さま こんにちは!いやはや、チューリップって、とても元気ですね。先日、近所のお花やさんで購入した3本のピンク色のチューリップが、すでに1週間以上立つというのに、のびのびと咲いて、春を伝えてくれています。植物が感じる季節は良いですね。パワーをもらえます。 本題!!先日は、荒木優太さんと田村義也さんのトークイベントにご参加いただき本当にありがとうございました。とってもとっても嬉しかったです。 山梨と下北沢という物理的にとーーーーい関係性、それをひょいと乗り越えてき

          手紙4:一條宣好さま「おっと、お忘れ物ですよ〜」中村翔子より(2020年2月9日)