見出し画像

冬の朝、あたたかい部屋。

「新潟は雪で真っ白よ」
と母からメッセージ。


翌朝。
「今日の東京の最高気温は9度です」
ラジオから男性の良い声が、そう伝えた。
「寒い日になりそうです。どうぞ暖かく」
そんな一言が、付け加えられた。

2階の寝室から、リビングに降りる。
徹夜仕事をしたteshは、まだ夢の中だ。
確かに、部屋がひんやりとしている。
すぐに暖房のスイッチを入れた。

そういえば、新潟はもう雪が降っているんだったな。
東京にいると、いくら寒さを感じても、新潟にいた頃の、雪とともにある日常がうまく思い出せなくなっているし、雪が積もらない冬に、未だに冬を感じることができないでいる。


出番のないごついブーツ
出番のない分厚いコート


朝のコーヒーをいれる。
クリスマスソングをかける。
母ゆずりでしょう、わたしはクリスマスソングが大好きで、冬になると毎日のように流すんだ。

WHAM! の Last Christmasがかかる。
小さい頃、たぶん1番たくさん聴いた曲だ。歌詞の意味はもちろんわかってなかったけど、好きだった。耳触りが良かったのかな。


ふと、小さい頃の冬を思い出した。


夜中に雪がしんしんと降って、朝になると真っ白。
小さい頃は、そんな景色が常だった。
スキーウエアを着て登校したこともあったっけ。

誰も踏みしめていない雪の上をきゅっきゅと歩くのが楽しかった。
こっそり雪が深そうなところに尻餅ついてみたりした。

楽しい冬。
だけど、寒さはこたえる。
寝間は、重たい重たい綿の布団に、さらに羽毛布団。毛布も忘れずに。
寒すぎる夜は、電気毛布も入れたな。

もちろん、朝も寒い。
だけど、わたしが起きる頃には、家中があたたかかった。

誰よりも母が早起きして、暖房を入れてあたためてくれていたんだ。
部屋だけじゃないの。着替えの下着や洋服を暖房の前においてあたためておいてくれた。

窓は結露する。
そこに雪だるま、トナカイ、サンタクロース、そんな絵を描いて遊んだな。

遊ぶわたしの後ろで、母は朝ごはんの支度をしている。
手作りのごはんはもちろん嬉しかったし、前の日に母とパン屋さんで選んだパンを食べるのも楽しみで仕方なかった。

冬の朝。
学校は好きではなかったけれど、学校に行く前の、この時間は好きだった。
1日の中で一番寒く、一番あたたかい時間だった。



ひとり、まだ、あたたまりきっていないリビングで、そんな小さい頃を思い出しながら、母を想う。
今年のお正月は帰れないだろう。

きっと、今日も実家は、朝から暖かいんだろうな。
暖かいって幸せだな。

濃いめにいれたコーヒーを一口すする。

「今年はがんばっておせちを作ろうと思うよ」
と、母にメッセージを送った。

黒豆は……母に甘えようかしら。








いつも読んでいただきありがとうございます。この出会いに心から感謝です!サポートをはげみに、みなさまに楽しい時間と言葉をお届けできるようがんばります。