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いまのところの、DeepL翻訳の限界

最近、とうとう職場でDeepLの使用が許可されました。
幸い、今のところは脅威と感じていません。
今日は、私がそう思う理由について3つ、書いてみようと思います。


1. 訳抜け

DeepLの一番の弱点は、なんといっても、これではないでしょうか。

あたかもそれらしい訳文を返してくるのですが、1文ずつ見ていくと、訳出されていない文章がある。

この現象、繰り返し発生しているので、現時点では何らかの理由で修正に限界があるのだと思います。

DeepLの訳抜けについては、こちらの日経記事でも指摘されていました。

このため、私がDeepLを使用する際には、極端な長文は入力しないようにしています。

2. 原文が正しいかどうかの判断はできない

DeepLをはじめとする機械翻訳にはファクトチェック(事実確認)の機能はありません。なので、原文に書かれている内容が、事実に反するかどうかを判断することはできないんです。

例えば、DeepL翻訳で「〇年〇月は、主要中央銀行が軒並み利上げに踏み切った」という訳文が出力されたとしましょう。

日本語としては違和感のない文ですよね?

でも詳しく調べてみると、この月は米国中銀(FRB)だけが利上げを見送っていることが分かりました。

ということは、利上げを行なわなかった主要中銀もあったわけで、「軒並み利上げに踏み切った」という記述は誤りです。

機械翻訳は、与えられた文章をそのまま訳しているだけなので、原文の記述に誤りがあるかどうかまでは、判断できません。

人間の翻訳者であれば、このような原文の誤りに気づいて、指摘することができます。

特に産業翻訳の分野においては、私はこの「原文の間違いに気付ける能力」に優れた翻訳者のニーズが高まると見込んでいます。

3. 常識という概念がない

先日DeepL翻訳を使ったときに、訳文の中に「南フロリダ州」という語が入っていました。「South Florida」という語を、「南フロリダ州」と置き換えているのです。

私はこれを見て、かなりショックを受けました。DeepLは「南フロリダ州」なんていう存在しない州名を、平気で返してくるのか!と。

あまりに平然と返してきたので、もしや自分が間違っているのではないかと不安になり、「南フロリダ州」でGoogle検索をかけてしまいました。

その時に思い出したのが、こちらの本に書かれていたこの一文でした。

私たちにとっては、「中学生が身につけている程度の常識」であっても、それは膨大な量の常識であり、それをAIやロボットに教えることは、とてつもなく難しいことなのです。

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」

AIには「南フロリダ州という場所は存在しない」という「常識」がないんですね。

この、「常識から判断して正解を出す能力」についても、まだ人間のほうが優れているなと感じた瞬間でした。

まとめ

テクノロジーは日進月歩ですので、しばらくたてば上記のような弱点も修正され、どんどん進化していくでしょう。

今私にできることは、

人間の翻訳者にしかできないことを見極め、そのスキルを磨く

これに尽きると思っています。


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