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読書会雑感

先日伊東潤さんの読書会に参加した。

いつもは一読者として参加するが、今回は執筆側としてである。と言っても、ひとりではなくアンソロジー「幕末暗殺!」の書き手7人のうちの1人であり、メンバーも知己が多いこともあり、完全なアウエー感は無かった。

色々と甘辛混ぜてご意見をいただき、とても参考になったが、個人的に一番驚いたのは、自分が当然ここは色々と指摘されるだろう、あるいは討論になるだろうと思った箇所よりも、ほとんど意識していなかった部分が、多くの方の口に上ったことである。

ネタバレと言うほどでもないので書くが、拙作「天が遣わせし男」の主人公、桂早之助が、とある高名な剣豪と試合で手合わせするシーンである。この場面に関心を持たれた方がとても多く、それも、歴史的事実か否やのことではなく、この小説に必要か否かの意見が飛び交ったようである(実は自分も知らぬところでもあったらしい)。

読書会の時も、懇親会の席でも、様々な方から直接お話をいただいたのだが、それも真っ二つで、「すごく良かった」「あれがないといけない」というのと、「不要ではないか」「有名だから出せばいいというものではない」という両方があった。

どちらの意見にも戸惑ったというのが正直なところである。もちろん誉められる方が嬉しいし、批判されるとへこむが、とにかくその前にそこが来るとは当人全く思っていないのだから……何とも反応のしようが無かった。今、考えると、失礼な話であり、何とも申し訳なく思っている。

しかし想定外とか、意表を突かれるとは、まさにこのことであった。一作家としては、どこが読者の方のフックに引っかかるかは分からないことを学んだし、もしかしたら、優れた作家はそれが分かるので、上手く読者の満足をより引き出しているのかも知れない。残念ながら、わたしには無かったわけだが。

他にも、懇親会の席上、何人かのお方に誉められたのは、剣劇シーンであった。剣道をなさっている方々であり、その方たちに「非常にリアルだった」と言っていただけた。もちろん時代物作家であり、剣劇は外せない要素だから、本当に嬉しい御言葉であったが、これまた正直己の強みとは思っていなかったので少し戸惑ってしまった。

己の長所、短所を見極めよと良く言われる。しかし、それは己ひとりでは、なかなか難しく、ひとりよがりの頓珍漢なものになっているのかもしれない。心していきたい。

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