【第五十五夜】『花咲く乙女たちのかげに』夜話 – プルーストの処方箋
私はジルベルトに一通の手紙を書き、そのなかで——
今夜もハナは話をはじめた。◆
「出ましたね、お手紙作戦!」
「ふふっ、確かにね! 前のは便箋16枚だったけ?」
「そうそう。でも、ジルベルトからの手紙が来ないかなって、朝の配達、夕方の配達、次の日の朝の配達って待ってる感じ。いまと変わんないよね。スマホで返信を待ってるのとおんなじね」
「まあそうなんだけどね。でもここの部分とか、どちらかに決めるっていう単純さを避けようとしていて、分かり易さが重宝されるいまとは違う感じがするんだよね」
私は、いずれ劣らず真相をゆがめるこうした二通りの見方のあいだで、事物の正確なヴィジョンを与えてくれる見方を発見しようと努力していた。そのために私がしなければならなかった計算は、いくぶん苦しみを紛らわせれくれた。
「まあ、わかるんだけど、そのあとが長いというか、やっぱりいまだとどっちつかずで、ぐずぐずしている感じになっちゃうんじゃない?」
◆——そうしてハナはゆっくりとまぶたが閉じていくのを感じながら、眠りに落ちていく。
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