『アルジャーノンに花束を』 – 日めくり文庫本【4月】
【4月5日】
めえろげーむわよくわからないので紙を何まいも使てしまった。それからバートわそうだいいものを見してあげるからじけん室に行こうそうしたらわかるかもしれないといった。五階の別のへやにあがっていてそこにわたくさんのおりがあってさるとかねずみが入れてある。くさったごみみたいな変なにおいがした。白いうわばりをきた人が動ぶつとあそんでいるのでここわぺっとを売る店かとおもったけれどもお客さんがいなかた。バートわ白いねずみをおりから出して見してくれた。これわアルジャーノンといってこのめえろげーむをとてもじょおずにやるそうです。じゃあどういうふうにやるか見してくださいといった。
そうするとだなバートわアルジャーノンをねじれたりまがったりいろんな形のかべみたいなものが立っていてあの紙みたいにはじめ[#「はじめ」に傍点]とおわり[#「おわり」に傍点]がついている大きなてえぶるみたいな箱のなかへ入れた。ただてえぶるの上にわあみがかぶせてある。それからバートわとけえをだしておとし戸をあげてアルジャーノンさあいけというとねずみわ23回くんくんかぎまわてから走りだした。はじめわ長い列のところを走ったけれどもそれが行きどまりになっているのに気がつくとはじめところにもどてきてそこでもちょっと立ちどまってひげ[#「ひげ」に傍点]をひくひくさせた。それからべつの方がくにむいてまた走りだした。
これわバートがほくに紙の上の線でやらせたようなことをアルジャーノンわやっているのです。ぼくわわらた。ねずみにわむつかすぎるとおもたからです。でもアルジャーノンわどんどん走て正しい道をとーってとうとうおわり[#「おわり」に傍点]のところまでたどりついてそこできーっと泣いた。これわちゃんと出てきたのでうれしくて泣いているのだとバートがいった。
「けえかほおこく4」より
——ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を〔新版〕』(ハヤカワ文庫 NV,2015年)26 – 27ページ
ねずみのアルジャーノンという名は、イングランドの詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン(1837年 – 1909年)にちなんでいるそうです。
スウィンバーンは「ラファエル前派兄弟団(P.R.B.)」周辺にいた詩人でもあり、英国留学中の夏目漱石もシェイクスピア研究家のウィリアム・クレイグ先生と彼の作品について語っていたり(『永日小品』)、『草枕』にも彼の詩を思い出している一節があります。
/三郎左
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