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『蕪村俳句集』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月22日】

857 客僧の狸寝たぬきねいりやくすり喰(安永元)

  春泥舎しゅんでいしゃに遊びて
858 霊運れいうんもこよひはゆるせとしわすれ(安永三・一二)

859 にしき立聞たちぎきもなき雑魚寝ざこね哉(安永元)

860 おとろひや小枝こえだも捨ぬとし木樵ぎこり(明和五・一二・一四)

861 うぐひすのくや師走しはすの羅生門(安永七・一二)

862 御経おんぎょうに似てゆかしさよ古暦ふるごよみ(安永三・一二)

863 としひとつつもるや雪の小町寺こまちでら(安永二・一二)

864 ゆく年の瀬田せたを廻るや金飛脚かねびきゃく

865 とし守夜もるよおいはた(ふ)とく見られたり(安永四前)

  題くつ
866 石公せきこうへ五百目もどすとしのくれ(明和年間)

867 としもる乾鮭からざけ太刀鱈たちたらの棒(明和七・一二)

  かさ着てわらぢはきながら
868 芭蕉さりてその(の)ちいまだ年くれず(安永五前)

  蕪村句集下巻終

夜半翁やはんをう常にいへらく、発句集はなくてもありなんかし、世に名だゝる人の、その句集いで日来ひごろの声誉を滅ずるもの多し、いはんや汎〻はんばんやからをやと。しかるに門派に一人の書肆しょしありて、あながちに句集をにちりばめむことをもとむ。おきなもとよりゆるさず。翁滅後めつごにいたりて、二三子がかきとめおけるとあつめて、是を前後の二編に撰分えらびわヶて、小祥せうしやう大祥二忌の|追福ついふくのためとすと也。そのまた浅からずといふべし。されば句集を世にひろうすることは、あなかしこ翁の本意にはあらず、全くこれをもてこの翁を議すべからずといふ事を田幅でんぷくしるす。

「蕪村句集」巻之下 より

——『蕪村俳句集』(岩波文庫,1975年)161 – 164ページ


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