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#21 アートディレクター・成田 久(資生堂)「ラブ💖&チャリ~ン💲」(2020.7.24&31)

コロナ禍の晴れ間を縫って、東京からいらっしゃったのが資生堂のアートディレクター・成田久さんことキューちゃん。キュウリみたいに呼んでますけど、実はスゴイ人なんです。まず第一印象がスゴイ。

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3人でイェーイ! で、これが最初にいただいた名刺。本人顔仕様どーん!

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まずプロフィールを簡単に。

なりた・ひさし/1970年生まれ。資生堂クリエイティブ本部所属のアートディレクター。資生堂の様々なブランドのアートディレクションを担当。NHK大河ドラマ「八重の桜」のポスタービジュアル、「ただいま、東北♥」キャンペーン企画も。個人としてアーティスト活動も展開中で、東京御徒町の「キュキュキュカンパニー」では作品を販売中。現在雑誌『装苑』にて「舞台 JAM PLAY」を連載中。

まずはキューちゃんの若かりし頃の話を聞いたのですが、これが「なるべくして今に至ってる」ってことが非常によくわかる内容で。やっぱり世の中にはナチュラルボーン・アーティストっているんですよ。

もともとは多摩美のテキスタイルに行ってたんですけど、僕は舞台がめっちゃ好きで。舞台衣装に興味があって、学校では布(ファブリック)のデザインを勉強してたんです。それと同時に絵も描いてて、それはそれで賞とかもらってたんです
あと、昔から『ザ・ベストテン』が好きで、(松田)聖子ちゃんとか(中森)明菜ちゃんが大好きで、なおかつ(裏方である)糸井重里さんとか秋元康さんも超好きで。作品を作る一方で、人と話して「こういうことやったら面白くない?」というのが好きな自分もいたんです。だからアーティストである自分と、何かをプロデュースしたい自分の両方がいて、それをどう両立させればいいか悩んでたんです

キューちゃんの原動力である「好き」の乱立。衣装作るのも好き、絵を描くのも好き、華やかな歌謡曲の世界が好き、アイドルをプロデュースする裏方稼業も好き……そのたくさんの「好き」が奇跡的に一ヶ所で実現できる場所として発見したのが、資生堂という会社でした。

ちょうど資生堂で広告のADの募集があって。資生堂ってシンデレラストーリーを作る会社だと思ってたんです。資生堂はCMに出る人が注目されて、CM曲を歌う人がビッグになるっていう風潮があって。そういうの、学生時代からやってましたからね。学校にいる目立つ子を見つけて、自分で作ったコスチューム着てもらって、当時同級生だった蜷川実花ちゃんに写真撮ってもらって作品にして。それがそのまま今の仕事になった感じなんです

これぞまさに天職。そこからキューちゃんが担当したブランドは数知れず。マキアージュ、インテグレート、マジョリカマジョルカ、HAKU、ツバキ、マシェリ、UNO……その中で代表作はやっぱりコレ。モデル・エビちゃん(蛯原友里)&音楽・BONNIE PINK「A Perfect Sky」を組み合わせた2006年の最強「アネッサ」。

キューちゃん、モデル&音楽の選定はもちろん、青&黄の水着のデザインまで手掛けたとか。「そこまでやるの!?」というか全部やるのがキューちゃん流。そして今、担当して3年目なのがコレ。

CM制作の過程では、気を付けている流儀があるとか。

僕はなるべくその人のよさ、その商品のよさが活きるものを作りたくて。たとえば僕がピンクの人だとして、青い製品に僕のピンクを足したら紫になって気持ち悪いじゃない? それより僕がやりたいのは、青いものをより青く見せること。だからCMに出てくれる人を決めるキャスティングの作業が大好き! 趣味キャスティング(笑)。お願いするスタッフにしても「今はこの人!」っていう旬の人にオファーすること多いですね

CM制作の現場においては、自分が前に出るのではなく、商品やタレントの魅力を引き出す黒子に徹する。私情を捨て、チーム全体がうまく進むためのディレクター業をまっとうする――しかしクリエイティブモンスター・キューちゃんの才能をそこだけに収めるのは、やはりムリがあるわけで。

「自分が好きなものって、みんなが好きじゃないんだ」ってことがわかっちゃったの(笑)。プロダクトとか日常のモノに対して、自分がほしいものとみんながほしいものは違うから

ということで、資生堂では出せない「アーティスト・成田久」のアウトプットとして「キュキュキュカンパニー」が立ち上がることなるのですよ!

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きっかけは先のアネッサで使用したBONNIE PINKのシングル盤のジャケットデザインを依頼されたことでした。

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「成田さん、外のお仕事引き受けられるんですか?」って聞かれて。あとちょうどそのとき「ビルの一室が空いたから何かやらない?」って言われて。そのタイミングで会社に副業申請出して、屋号もつけて、公に外の仕事を受けることにしたんです。やりたいことをやるんです! そのかわり資生堂の仕事も絶対穴を開けない! 

そんなキューちゃんのイラストレーション作品。ポップ&キュート!!

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ではそんなキューちゃんに教えてもらいましょう。「こうやったら感度よくなるよ!」っていうオススメなにかありません?

意外と人のこと気にしない方がいいんじゃない?(笑) あ、お花は飾った方がいい! 僕、いま趣味はガーデニングだから。もともと花を生けたりするのは好きで、今は庭をめっちゃきれいにしてて。この前、桜の木とか買っちゃった(笑)。植物って思い通りにならないから、それが面白くなっちゃったの。お花は家にいつも生けてますよ
あと、もっと男性は女性を褒めていいと思う。人間、褒められた方が成長するもん! 僕、会社の男子女子関係なく「今日の髪型かわいい!」とか「今日のシャツいかしてる~」とか、すぐ言っちゃう

資生堂でのAD活動と、キュキュキュカンパニーでのアート活動という2足のわらじ、いまのスタイルの根幹には「楽しいことは全部やりたい!」という欲張りパワーがあると言います。

若い頃は「二兎を追うもの一兎も得ず」って思ってたの。でもリスペクトしてる上司が会社にいて、当時2つのコンペがあって、僕が1つのコンペに集中してたら「なんでキューちゃんは2つやらないの?」って言われたんです。「こっちに集中して仕事取れたらいいなと思ってるんです」って言ったら「2つ取れると思って考えた方がいいんじゃない?」って言われて。そこから「2つ取るためにどうするか?」って考えるようになり、それが進んで「じゃあ、10個動かすには……」みたいな考え方に変わっていきましたね

やりたいことは、あきらめない。好きなことは、やり尽くす。そんなキューちゃん哲学のイチバン潔い部分って、こういうとこじゃないでしょうか?

昔、大学の先生で「アーティスト=売れなくていい」みたいなことを言う人がいて。でも僕は絶対イヤだと思ってたわけ。プロは売れてナンボだと思ってたし。だから会社入ったとき「売れる=ラブ💖」っていう図式を作ったんです。だって「愛されるもの=ラブ💖」じゃない? 「買ってくれないもの=愛されるものじゃない」って図式で考えると、売れることは非じゃないんです。理想は、ハート、ハート、チャリーン!――みたいな(笑)

胸に響くなぁ、「ラブ💖&チャリーン💲」の美学!

ちなみにキューちゃん、後日番組リスナーに似顔絵を描いてくれるというプレゼントを敢行。めっちゃ豪勢。これもまたラブ💖 で、ラブ💖あるところにチャリーン💲あり。キューちゃんホントにありがとう~~~!

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2020.7.3@HFM

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